眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療社団法人 広辻眼科

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眼の病気 No.e115

投稿日 2017年12月1日

流涙症(涙が出る感じの症状)-その2

院長 廣辻徳彦

涙は目の耳側上方にある涙腺で産生され、下図1のように眼の表面を潤してから、鼻側の涙点(①)、涙小菅(②)、涙嚢(③)、鼻涙管(④)を通って鼻腔へ流れていきます。①から④の経路を涙道といいますが、前回は鼻涙管④を図に記載していませんでしたので改めて載せました。この図は右眼の涙道ですが、図の中で涙嚢と鼻涙管の内側で鼻腔との境となっている骨を灰色の線で示しています(鼻涙管の開口部より突き出ているのは鼻腔内の下鼻甲介というところです)。先月のマンスリーで紹介した涙点閉塞という状態は、涙道の入り口の異常なので、厳密には涙点の手前の病気ではなく涙道の病気に含めるべきでした。また、結膜弛緩症という病気を紹介しましたが、この病気は結膜の余分なしわを手術的に切り取ることで治療することができます(下図2、3参照:ただしすべての方の自覚症状が改善するわけではありません)。
 涙道のどこかで閉塞や狭窄が生じると、涙が鼻腔へ流れにくくなって流涙症が生じます。結膜炎や涙小菅炎、涙嚢炎や鼻炎などでは結膜や涙道内の粘膜の炎症が生じるので、粘膜が腫れて涙の通り道が狭くなり、涙があふれやすくなります。風邪をひいたり結膜炎になったりした時に、涙っぽくなるのはご存知でしょう。炎症が繰り返されると粘膜が肥厚したり組織の弾力性がなくなったりして、恒常的に涙道の内腔が狭くなり(狭窄)、時に閉塞が生じてしまいます。一度狭窄や閉塞が生じてしまうと、なかなか自然には治りません。
 涙道の狭窄や閉塞を調べるには、上下の各涙点から先を丸く加工した注射針(図4下:先が丸いので刺さりません)を涙小菅に向かって挿入し、生理食塩水などを注入する「通水検査」を行います。注入された液が鼻腔に流れなければ閉塞していると分かります。流れるにしても抵抗があれば狭窄していると判断できます。点眼麻酔だけでほとんど痛みもなく行えるので、どこのクリニックでも行なえる検査です。専門的なクリニックや病院では涙道内視鏡という先端が非常に細いファイバースコープを用いて、直接どこが詰まっているかを検査し、観察しながら治療できるようになっています。
 涙道閉塞の治療は、従来「ブジー」といって、金属製の先の丸い棒を涙道内に挿入し、閉塞しているとこを突いて癒着などを解除していました。突くだけでは傷が再癒着してしまう(ピアスの穴と同じです)ので、シリコン製のチューブ(図4上)をその後に挿入し、2週間から1ヶ月ぐらいしてからチューブを抜きます。ただ、ブジーは指先だけの感覚で行うために、時に思いがけないところに先端が迷入することもありました。「涙道内視鏡」では涙道内を直接観察できるので、従来の盲目的な治療よりはるかに優れています。癒着の程度が強い場合などでは、涙嚢と鼻腔を隔てている骨を削り、直接涙嚢から鼻腔へとつながるバイパスを作る「涙嚢鼻腔吻合術(図5」」という手術を行います。目頭と鼻の間を切開して外から骨を削る「鼻外法」と、皮膚を切開せずに鼻内視鏡を用いて行う「鼻内法」があります。ただ、鼻内法は鼻中隔弯曲症などの鼻疾患があると行えないこともあります。涙道がうまく再開通すると、結膜弛緩症の図2、3と同じように涙のたまりがなくなります。

左から、図1:涙の流れ、図2:結膜弛緩症、図3:その術後、図4:チューブと検査用針、図5:涙嚢鼻腔吻合術
 ほかにも、新生児で涙と目ヤニが多くなる「先天性鼻涙管閉塞」という病気があります。鼻涙管の開口部に薄い膜が残ってしまうことが原因で、生まれてすぐから涙っぽい、時に目ヤニが多くなる、目頭を押すとどろっとした膿のようなものがでるような症状があります。昔は積極的に「ブジー」を行なうこともありましたが、1歳までに9割以上が自然に治るので、涙嚢部のマッサージを行いつつ、目ヤニの時の抗菌薬で経過を見て、1回だけはブジーを行うとしても、それで治らない場合は時間をおいてから再治療することが多くなっています。
 すぐに視力に影響するわけではありませんが、「涙目」も気になりだせばうっとうしい症状です。当院にはさすがに内視鏡の設備はありませんが、気になる場合はご相談ください。