眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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広辻眼科マンスリー 第m218

投稿日 2024年4月1日

ギャンブルには気をつけて

院長 廣辻徳彦

3月も終盤になって冷え込んだり雨が降ったりし、春分の日には霰(あられ)や小さい雹(ひょう)が北風に乗ってやってきました。例年より早いと予想されていた桜の開花も平年より遅くなったので、入学式の頃にも花が残っていることでしょう。とはいえ、地球の温暖化は少しずつ進んでいるようで、スキー場には積雪が少なくなっている傾向ですし、梅雨の前でも雨が降ればスコールのような大雨になることもあります。今年の夏も35度を超える気温が続き、台風で通勤や旅行に大きな影響が出ないかと心配しているところです。毎年の変化は小さくても、10年、100年の単位では大きな影響が出ているかもしれません。自分が生きている間だけでなく、子供や孫が暮らすのに快適な環境を守っておきたいものだと思います。
最近テレビの話題となっているのが、大リーグの大谷翔平選手の通訳が違法賭博に手を出していたという問題です。新天地となるドジャースで、史上最高金額で契約を更新し結婚の報告をしたばかりの大谷選手にとって、選手生命に関わる問題になるかもしれません。私たちには真相がわからないのでどういう形で解明されるのかも不明ですが、あれだけ大谷選手に寄り添っていた通訳の方が、そのようなことをしでかしたというようには考えたくないところです。ただ、ギャンブルというものには本当に中毒性があります。パチンコや競馬、競艇で、家族や生活のために必要なお金まで注ぎ込んで身を持ち崩す人が実際にいます。ギャンブルは確率の問題とも考えられ、期待値で勝ち負けの計算ができます。競馬であれば期待値は「0.75」、宝くじでは約「0.5」らしいです。すなわち、長い目で見れば競馬を続けた場合に、100円出して帰ってくるのは75円ということです。一等の配当がどれだけ良くても、トータルでは必ず胴元が儲かるようにできています。個人単位で考えれば短い期間で大勝ちする場合もあるでしょうし、中には技術や予想が人並み外れて優れていてトータルで勝つ人もわずかながらいるでしょう。ですが、お金を儲ける手段としては初めからトータルで負ける確率が高いと分かっているので、生活資金を使うのではなく今なくても大丈夫な程度のお金でほどほどに楽しむのがいいところです。もちろんそれが簡単にできないから「中毒」という状態にはまってしまうことがあるわけで、その一線は超えないようにしたいものです。
今年は4月28日(日)から5月6日(月)まで休診します。ご迷惑をおかけしますがご了承ください。

健康とは!(健康食品被害)

大谷選手の話題からニュースの一面を奪い去ったのが「紅麹」問題です。K製薬の「紅麹コレステヘルプ」という商品を摂取した人に腎臓障害が発生し、この原稿を書いている時点で5名が死亡、100名以上の入院患者が出る健康被害が生じているということです(現時点ではっきりした因果関係の証明はないようです)。紅麹は米に紅麹菌を混ぜて発酵させたもので、深紅色を呈しています。日本酒や醤油、味噌を作る際の米麹と同じ「麹」という字が使われていますが、(米)麹菌はアズペルギルス属、紅麹菌はモナスカス属に分類され、違う種類の菌類です。紅麹は沖縄で作られる「豆腐よう」という食品に使われていますし、台湾でも食品やお酒の発酵に古くから使われています。1970年代になって、コレステロールを低下させる薬の開発のため微生物の研究が行われた際、紅麹の中に「モナコリンK」という物質が発見され、そこから「スタチン系」といわれる現在もよく使われている薬が開発されたという経緯がありました。そこで、紅麹を利用してコレステロール低下の表示をつけて販売しているのがこのサプリメントなのです。紅麹菌の中には身体に役立つ物質を含むだけではなく、「シトリニン」という腎毒性物質を産生する種類もあるそうですが、K製薬はシトリニンを産生しない菌を使用しているので今回これは関係ないようです。
現在は、2023年に製造されたロットの中に想定していない物質が含まれているものがあったといわれていて、それが青カビ由来の「プベルル酸」という物質ではないかというところまで判明しているようです。発酵食品(製品)を扱う際には他の微生物の混入を一番注意するところですが、それ以外のロットに問題がなかったかなどこれからもっとわかっていくことでしょう。ただ、このプベルル酸が今回の腎障害の原因物質かどうかの確定もしていない様子です。
紅麹は昔から食品に使われています。紅麹そのものや紅麹由来のサプリメントすべてが危険なものではありません。異物質が混入していないロットの紅麹コレステヘルプを飲んでいても、健康被害が生じる可能性は低いものかと考えられます。何百億という費用を投じて開発される医薬品と違い、特定保険用食品(トクホ:国による個別許可)、機能性表示食品(コレステヘルプ:事業者責任の届出制)は「薬」のような効果や成分の保証がないことを理解した上で摂取するようにましょう。