藤の花
院長 廣辻徳彦
昨年左膝を痛めて以来、車での通勤が多くなっています。車の中はエアコンのおかげで快適な温度で過ごせているのですが、仕事中露天に止めていると昼に気温が高くなることが多いので、夕刻に帰る際でも車内の温度が暑く感じられるほどになっています。これからさらに気温が上がって梅雨を過ぎればまた暑い夏がくるので、車内の温度上昇に何らかの対策が必要になりそうです。
歩かないわけにはいかないので、休みの日にはできるだけ散歩をしています。この季節、新神戸駅の北側の山間に藤の紫色の花が目立つようになってきました。麓のところだけでなく中腹のところにも綺麗な色が見えています。通勤の運転中でも、阪神高速7号線から中国道に入るあたりの山にも紫色の花をみることができます。「藤棚」などで観光名所となっているところもありますが、藤棚で人が栽培している藤は「ノダフジ」、山間に見られる藤は「ヤマフジ」といって同じフジ属ではあるものの別種だそうです。ノダフジは大阪の福島区野田の地名に由来し、「吉野の桜、高尾(高雄)のもみじ、野田の藤」と言われるくらい有名だったそうです。ノダフジは花穂(かすい:花が咲いて枝垂れている部分、総状花序)が長く(20センチから1メートルくらい)、根本から先端にかけて順番に花が咲きます。それに対して、ヤマフジは花穂が短く花はほぼ同時に開花するそうです。また、藤は木に絡みついて伸びていきますが、ノダフジは右巻きに、ヤマフジは左巻きに巻いていきます。万葉集などでも藤の花が詠まれていて古くから日本にある花なのですが、ヤマフジは京都や奈良、滋賀などに見られないことから、これらはほとんどがノダフジのことだそうです。このように調べてみれば、近所の山間に見られている藤も、花の長さが2-30センチ以上あればヤマフジではなくノダフジなのかと思われます。
藤は「不治の病」や下に向かって咲くことから縁起が悪いという捉え方もあるとようですが、「不死」に通じたり繁殖力が強いことから子孫繁栄に通じたりという理由で縁起がいいものとされています。藤原氏の家紋である「藤紋」は、十大家紋にも数えられていてそのバリエーションも多く、今でもよく見かける紋です。藤の花が波打つ様子は「藤波(藤浪)」と言われて用いられているので、昔からマイナスのイメージは少なかったのではと思われます。5月の良い季節、近くの藤棚などを訪れてみてはいかがでしょうか。
健康とは!(メンタルヘルス不調に対して)
昨年5月のマンスリーで「5月病」について書きました。新入学や新入社で環境が変わったあと、5月の連休でストレスや疲れが表面化して気力が萎えたり眠りにくくなったりする状態のことをいいます。多くはその環境に慣れていくことでやり過ごせるようになるのですが、うつ的な変化の表れともいえます。ストレスなしで生きていくことはできないので、「ストレスケア」は重要な事柄です。
ストレスには、「ストレス要因(ストレッサー)」、「ストレス反応」、そして「ストレス耐性」の3つが含まれます。「ストレス要因」とは、ストレスを生じさせる外界からの刺激のことで、仕事、職業生活、家庭、地域等に存在しています。ストレス要因に対して、身体面、心理面、行動面に生じるいろいろな反応を「ストレス反応」と呼びます。そのストレスにどれだけ抵抗し適応できるか、または乗り越えることができるかを表す能力やストレスへの抵抗力を「ストレス耐性」といいます。ストレス反応が出てもその要因が何であるかについてはなかなか気づきにくいものですが、それが続くと健康障害につながります。ストレス反応の出方は、仕事外の要因、個人要因、緩衝要因によっても影響を受けます。緩衝要因は、職場では上司・同僚からの、学校では先生・同級生からのサポートなどがあります。
ストレスと上手につき合うために自分自身へのリラクセーションという心身の緊張を緩め方法を取り入れることも大事です。呼吸(腹式呼吸)を整えたりストレッチを行ったりするのも心身のリラックスに効果的です。好きな運動を楽しむ、友人や知人と話をすることで、不安やイライラした気持ちが整理されることもあります。日常生活に笑いをとりいれ、自分の好きなことができる時間を大切にしましょう。仕事から解放されているという実感が、仕事への意欲も高めます。趣味などを介した仕事とは関係のない人々との交流は、新たな人間関係を生み生活の幅を広げます。
ただ、自分の努力ではどうにもできないこともあります。一人で悩まず、相談の窓口、例えば職場や学校の専門家(産業医、保健師、養護教諭など)、会社や健康保険組合が契約している相談機関、地域の医療機関や保健所などを活用して欲しいと思います。メンタルヘルス不調は誰にでも起こりうるものです。誰にも相談できず悩んだ結果、最悪「自死」という結果につながってしまう恐れもあります。誰かの不調に気づいた周りから手を差し伸べることも大事なことと考えます。