眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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眼の病気 No.e114

投稿日 2017年11月1日

流涙症(涙が出る感じの症状)-その1

院長 廣辻徳彦

10月には台風21号と22号がやってきました。特に21号は近畿でも多くの被害を出し、JR、阪急、阪神の神戸線であまり記憶にない、「運転見合わせ」が起こってしまいました。21号の通り過ぎた後に、私が住んでいる新神戸駅の周辺で夜中の1時頃から停電が起こりました。月曜日の朝も電気がつかず、電気のない不便さを阪神大震災以来に体験しました。台風の雨とは関係ないのですが、今月は涙があふれる「流涙症」についての話です。
「流涙症」とは文字どおり涙があふれる、もしくはそのように感じる症状のことですが、実際には涙が多くなくても「涙っぽい」と感じてしまうこともあります。よく耳にする「ドライアイ」は、涙の分泌が少ないせいで、もしくは涙の量は十分でもそれが乾きやすい性質なせいで、眼の表面が乾きやすくなる病気です。ドライアイでは「乾燥、充血、(乾くせいで)眼の痛み」という症状が有名ですが、乾くのと反対の症状である「流涙感」を自覚する割合も多いようです。今回は、感覚だけではなく実際に涙が多くなる病気について書いていきます。
涙があふれる時は、「涙が出すぎる」か「眼から流れていかなくなるか」のどちらかの状態になっています。自然現象で涙が出るのは、悲しかったり感動したりして涙が「涙腺」から分泌される場合です。涙腺が働きすぎるという病気はあまりなく(下記の注も参照)、「眼に異物が入る」、「逆まつげが当たる」、「顔面神経麻痺などでまぶたが動きにくくなり眼を閉じにくい」など、何かしらの原因があってそのせいで涙が出るということがほとんどです。
(注:顔面神経という神経は、唾液腺や涙腺に働いて唾液や涙液の分泌を支配しています。顔面神経麻痺などの後、損傷された神経が回復する過程で、本来唾液腺に働く神経線維が涙腺に伸びて、食事の際に涙が出てしまう「ワニの目現象」という流涙が起こることがあります。この場合は涙腺が働きすぎると言えるかもしれません。)
ヒトの眼での涙の流れを考えてみます。下図1に右眼の涙の流れの模式図(向かって右が鼻側)を示します。涙腺は眼の外側(耳側)上方に存在し、台所の流しで言えば水道の蛇口に相当します。涙はまぶたの内側の上下にある「涙点(①)」という排水口から、上下の「涙小菅(②)」という管に流れます。その二つが合わさる「涙嚢(③)」という管から、最後には鼻腔へ流れて行きます。涙小菅から涙嚢までを「涙道」と言いますが、これは流しの下の排水管に部分に相当すると部分です(鼻腔は屋外の排水溝といったところです)。台所でも、蛇口がひねられ続けている、排水口が何かで詰まっている、排水管の流れが悪い、屋外の排水溝の流れが悪いというときに流しに水がたまります。涙があふれる場合は、それぞれの場所で何か異常が生じていると考えると分かりやすいと思います。
もう一つ、やはり加齢も涙に関係します。眼の表面から乾く以外の涙は、涙点から涙道を経由して鼻腔へ流れます。涙が涙道へ流れていくには「まばたき」の力が働いています。加齢とともに眼の周りの皮膚や筋肉の「張り」は少なくなり、涙は涙道に流れにくくなります。また、まぶたの張りがなくなると、特に下まぶたが下がり気味になり、涙がたまりやすくなる傾向になります(図2、3)。涙の分泌量は加齢とともに減る傾向で、質も悪くなるので、自然にある程度のバランス(出にくくなり流れにくくなる)が取れるようになっているとも言えます。

涙点(排水口)の手前に問題があって涙がたまるという病気には、「結膜弛緩症」と「涙点閉塞」などがあります。結膜弛緩症は、白目の表面にある結膜という膜に「しわ」がよって、涙の流れをせき止めたり、涙点においかぶさったり、しわの間に涙を取り込んだりして涙っぽくなる病気です(図4、5)。皮膚のしわと同じように、年齢とともに増えるものなので、結膜弛緩症も壮年期以降に生じるやすいものです。涙点閉塞は、まぶた縁のところでの慢性のアレルギーや結膜炎の炎症が強かった後などに生じ、涙点自体が閉鎖して(もしくは穴が小さくなって)しまい、涙が流れなくなってしまう状態です。
思いの外長くなりそうなので、治療や涙道の閉塞については次回に書くことにします。