海賊と呼ばれた男と八重の桜
理事長 廣辻逸郎
巷間評判になっている百田尚樹氏の『海賊と呼ばれた男』を求めた。石油界の出光佐三氏をモデルにした書き下ろしと聞いていたが、読むほどに興味深々でもう一頁もう一頁と上下巻を数日で読了してしまった。
日本では原油の産出は微量で外国から輸入しなければならないこと、その石油も殆ど米国資本の支配下にある位の知識しかなかったが、出光氏が孤軍奮闘、しかも国内同業者を敵に回してそれも自分の金儲けのためでなく国家のためと戦前戦後の石油獲得に粉骨砕身生涯を捧げられた状況は昭和の初めに生を受け、ABCDラインで石油を抑えられて戦争に突入し、国土も焦土化して敗戦を迎え苦労を強いられた私達世代は氏の行動信条に共感しきりである。戦後会社が危機に瀕しても、社員の首は切るな、家族を大事にせよ 愚痴るな、そして大日本国民の誇りをもてと訓示して突き進んだ。昭和五十六年九十五歳で亡くなった時昭和天皇が「くにのためひとよつらぬき尽くしたる きみまたさりぬさびしく思ふ」と歌を賜った。作者の筆で美談化された部分があるかもしれないが是非一読をお勧めしたい。
視聴率は今一つ低いが私は『八重の桜』を視ている。明治維新前の激動期に会津の人達が會津のため藩主のために武士だけでなく女子ども達まで『ならぬことはならぬ』ときびしい生活をする姿に共感を持つ。もう三十年ほど前に飯盛山の白虎隊の墓前に立ったことがあるが,丁度梅雨時分で雨に濡れたどの墓前にも花が活けられ香煙がなびいていた。十六歳ばかりの少年が藩のために命を捧げたと思うと涙を禁じえなかった。TVでは会津の南二本松でも少年達が政府軍と戦って亡くなっている。
戦後の教育を受け戦争を知らずに育った世代の人には理解できないことかも知らないが、損得抜きで一途に自分の命を捧げたその人たちに頭を垂れるばかりである。
健康とは! 旬(しゅん)のもの
食べ物は美味しいのは言うまでもなく旬のものと思います。しかし最近はハウス栽培や品種の改良でたとえばイチゴやキュウリやナスも年中口にすることが出来ます。昔はああイチゴが出てきた。ああ蛸のキュウリもみかと食卓に旬のものが出て喜んだものです。花も季節感が薄れて来ました。でも梅雨時に雨に打たれた紫陽花は目を楽しませてくれます。紫陽花も随分新種が出て来ました。この写真の紫陽花はダンスパーティーと名付けられ、昔ながらの蝸牛(かたつむり)も踊りに飛び入りしています。我が家の狭い庭に梅・ゆすら梅・枇杷の木があります。剪定をしないので森のように茂っています。今年は何が良かったのか、ゆすらと枇杷がよくなりました。何処から迷い込んだのか蛇が出て妻は飛び上がっていました。もう何十年も見なかったのに私も蛇は怖くて逃げる方ですが家に蛇がいるのはよいこととなだめました。ゆすらは果実酒にもしますが今年はジャムを作って楽しみ、びわも小さいながら結構甘みもあって堪能しました。
関西地方は夏は鱧(はも)です。17日の祇園さん25日の天神さん始め各家庭で鱧が食卓に上ります。6月末に淡路島の民宿での鱧料理を誘われました。淡路の玉ねぎと鱧の鍋料理に舌鼓を打ちました。
現在のようにクール便も冷蔵庫のような保存設備もなくて生ものをどのように処理するか。美味しく食べる工夫を先人は必死に考えて伝えてくれました。梅雨時夏季は特に食中毒に注意が肝要です。冷蔵庫を過信することなく、手洗いも十分に、ウナギでなくても、蛋白質も摂って夏負けしないで頑張りましょう。