神戸須磨シーワールド
院長 廣辻徳彦
若い頃は歳をとるということをあまり考えることがなかったのですが、還暦を過ぎて孫に「じい」と呼ばれるようになると、そんな年齢になったのかと実感します。先日、4歳と2歳になる孫を休日の1日預かる機会がありました。息子は病院の当直、息子の妻は1日研修があるとのことで、朝から晩までとお願いされました。30年前はそれなりに子育てをしていたはずなのに、身体も頭も急にその頃には戻りません。最近ではスマホ育児という言葉もあるそうですが、YouTubeで「メルちゃん」とか「アンパンマン」を見せて放置しておくわけにもいきません。そこで、妻と相談して、昨年リニューアルオープンした神戸須磨シーワールド(旧須磨水族園)に行ってきました。それこそ私自身が子供の頃にも行ったところです。
須磨水族園と言えば広いだけでなく魚の種類も多く勉強もできるような、「いわゆる水族館」というイメージで、それにプラスしてイルカショーも楽しめるようなところでした。新しい施設は千葉県の鴨川シーワールドの姉妹館という位置付けで、事業主体は神戸市ですが運営事業者は民間に委ねられています。西日本で唯一「オルカ(シャチ)ショー」を楽しむことができるようになり、オルカショーのスタジアムとは別にイルカショーのスタジアムもあり、別棟になっているアクアリウムの建物まで入れると、かつての水族園の1.5倍の面積になり、さらに敷地内にホテルも建設されました。孫たちはオルカショー、イルカショーをはしごして楽しんだ結果疲れてしまい、あまりアクアリウムでは魚を見たとは言えない状態でした。それでも帰りにイルカのぬいぐるみを買ってあげると嬉しそうに抱えて満足していたので、孫孝行は成功したのかと思っています。昔の「スマスイ」と比べると展示も綺麗で見栄えがしていましたが、魚の種類は少なくなったようで、水族館としての内容はかなり寂しくなったように思われました。ただ、あれだけの施設を運営するためにはエンターテインメントに軸足を移す必要もあるのでしょう。この10月に3人目の孫が生まれる予定なので、少し大きくなったらまた連れて行く機会があるかもしれません。
昨年10月のマンスリーでも自民党の総裁選について書いています。1年でまた総裁選挙になるとは思いませんでしたが、誰になっても日本の舵取りが大きく変わるわけではありません。一国民としては、それを見極めて次回の選挙で投票する理由を考えようと思います。
健康とは!(子供の問題)
上に書いたように孫を連れて神戸須磨シーワールドに行ってきたわけですが、30年ぶりに世の中のお父さんお母さんの苦労を体験すると、若いということが子育てにも大事な要素であることがわかります。まだまだ動けない乳幼児のうちは移動させるのもベビーカーや抱っこ紐が必要ですし、動けるようになると目を離さず見ておかなければいけません。その次は自己主張を始めてますます目が離せなくなってきます。子供は走り回るくせに、すぐに電池が切れるので寝た子の世話も大変です。園内にはたくさんの子供たちがいてその数だけ親御さんがいたはずなので、子育てを頑張って欲しいと思った次第です。
とはいうものの、日本では生まれてくる子供の数が減少する一方です。1人の女性が一生の間に産む子どもの数の平均を示す指標である合計特殊出生率(合計出生率)は、2024年のデータでは1.15と過去最低を記録し、出生数は70万人を下回りました。主な原因は若い世代の減少、未婚や晩婚化、晩産化などが考えられていますが、出生率の低下とそれが引き起こす人口減少は、労働力の減少や経済規模の縮小、若い世代の社会保障費の負担増、地方の衰退という深刻な問題につながっています。フランス(1.8)、アメリカ(1.7)、イギリス(1.6)、などと比較してもとても低い水準です。
子供を産むのは女性にしかできず、昔より女性の社会進出が進んでいるので、結婚や出産のタイミングが遅くなることは仕方がないことです。寿命も伸びて医学も進歩し、以前では高齢といわれた年齢になっても出産は可能ですが、生物学的に妊娠・出産に適切な年齢(20歳代から35歳ごろまで)がどうしても存在します。それを過ぎると徐々に自然妊娠の確率は低下し、妊娠の維持が難しくなり、出産時の母子のリスクが増加します。若いうちに卵子を凍結保存していたとしても、いつまでも妊娠・出産が可能であるというわけではありません。若年層が減っているのでどうしようもないとも言えますが、結婚の有無に関わらず子供を産み、育てられるように社会が取り組まなければなりません。私にはそれをいう資格がないのですが、妻の仕事復帰のために夫が育休を取ることなどが受け入れられる社会の認識も必要かと思います。増えていく高齢者に気を配らなければ選挙に勝てないのかもしれませんが、政治家や行政府にはこれからの世代により手厚い政策を考えて欲しいと思います。