眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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広辻眼科マンスリー 第m216

投稿日 2024年2月8日

復興を願って

院長 廣辻徳彦

衝撃的な地震が幕開けとなった今年ですが、早くも2月になりました。私たちが経験した阪神大震災も、発生から29年が経過しました。年末に行われていた「ルミナリエ」は今年から1月開催となり、これまでよりも幾分かは商業的、観光的色合いが少なくなったように思います。阪神大震災では64万棟の建物の被害のうち、全壊、半壊が25万棟近くあり、6千人を超えた死者の85%が建物や家具の崩壊による圧迫死であったとされています。ビルの倒壊や阪神高速が横倒しになった光景は忘れられるものではありません。しかしながら、被災地の多くが都市部であったため、救援のための人員や大型重機のアクセスがよく、地震の2日後には阪神高速道路の解体が急ピッチで行われていました。当時私が暮らしていた神戸市中央区の3階建てのマンションは一部損壊で隣の一戸建ては半壊していましたが、停電はその日のうちに解消し、水道も10日ほど、ガスも1ヶ月足らずで復旧したことを覚えています。
おそらく今回の能登半島地震の方が、規模も範囲も広かったのでしょう。当時の阪神、神戸地区には全国の電力会社、ガス事業者、N TT関連の事業者やJ Rの職員が集中し、今から考えても質も量も十分な復旧作業が行われたと思います。ところが、能登半島では陥没、隆起、崖崩れで1本しかない道路が通行できず、いまだに山間部や海岸線沿いで手が届きにくい地域があるようです。高齢化の進む地域では、小さな集落が再建できなくなる可能性すらあると聞きます。まずは道路や鉄道の整備、続く復興には金銭的な支援も必要なので、私たちにできること、旅行支援や現地の生産物の購入や、ふるさと納税などで継続した支援を考えたいところです(現時点でふるさとチョイス+さとふるの2サイトで約29億円の支援が集まっています)。
阪神大震災の頃は携帯電話が普及しておらず、公衆電話(無料)で連絡していたことも思い出されます。今は、避難所のなかでもあらゆる情報収集にスマホが必要です。ただ、便利な代わりに得られた情報が真実かウソかの判断も必要になりますし、匿名で無責任なことを言い放つ人もたくさんいます。先日日本テレビのドラマ関連で、SNSが原因かどうかもわかりませんが、結果的に原作者の漫画家さんが自死されるという悲しいニュースもありました。大事なスマホではありますが、LINEグループでのいじめ問題や強盗事件でのスマホ利用など、悪意のある(自覚がないこともある)人間は存在するので気をつけたいものです。

健康とは!(エコノミークラス症候群)

震災での避難所のニュースで、「エコノミークラス症候群」という言葉を聞くことがあります。今では一般的に知られた言葉になっていますが、航空医学研究センターのHPを参考にさせていただくと、最初の報告は第二次世界大戦時のロンドンで、防空壕に避難していた住民の中に肺血栓症が多数発生したという報告に始まるそうです。航空機の利用による報告は1954年に下肢の深部静脈血栓症の第一報があり、1977年にSimingtonという先生が飛行機利用の3例、自動車利用の3例、船舶、列車利用の各1例の血栓症の報告の際、エコノミークラス症候群という名称を初めて使用されたそうです。
エコノミークラス症候群は、飛行機の中だけでなく狭いところで動けずに長時間座っていると起こりやすいと言われています。もともと血液は心臓のポンプ作用で全身を巡っていますが、重力の関係で足(下半身)からの還流は上半身より悪くなりがちです。立ち仕事をしている人で足がむくみやすくなるのもそのせいです。しかも、座っている姿勢が続くと腰のところで足が曲がっているので腹部で圧迫され、余計に足への血液の流れが悪くなります。通常血管の中で血液が固まることはありませんが、このような状態で長時間血行が阻害されると血液が固まりやすくなってしまいます。その結果血栓という血の固まりができてしまうのが「深部静脈血栓症」という病気で、これだけで足のむくみや痛みが出ることがあります。その上で、歩くようになると血栓が血管から剥がれて、心臓を通って肺の小さい動脈に詰まってしまい「肺動脈血栓症(肺血栓症)」が引き起こされ、呼吸が苦しくなる、胸が痛くなる、失神が起こるという経過をとります。最悪、死亡することもあるのがエコノミークラス症候群です。
1.血液が固まりやすくなる妊娠中、出産後や経口避妊薬の服用中や癌がある場合、2.血液の流れが停滞しやすい長時間の座位や寝たきりが続く場合やもともと下肢静脈瘤がある場合、3.高血圧や糖尿病、肥満など動脈硬化になりやすい状態や手術後、骨折後などの場合は起こりやすいとされています。飛行機の中は長時間狭い座席の中で動きづらく、低気圧、低酸素の環境下なのでよりリスクが高いと言えます。最近では飛行機に乗る際、足首の運動やストレッチを促すお知らせもあるようです。水分を摂取して、アルコールを控えるなども予防に役に立ちます。飛行機の中はもちろんですが、慣れない体育館や車内で避難生活をしている方は、活動しにくいことが多いので注意していただきたいと思います。