旅行の「8月のリスク」
院長 廣辻徳彦
コロナウイルス感染症のため3年もの間旅行などの自粛を余儀なくされてきましたが、この8月は制限がなくなった久しぶりの夏休みです。私は毎日新幹線の新神戸駅構内を通り、神戸市営地下鉄を利用して阪急電車で通勤しているのですが、7月ごろから週末にトランクやキャリーバックを引いて旅行に向かうグループを見掛けるようになりました。夏休みが始まった7月下旬からは、平日でも何組もの家族連れが楽しそうに旅に向かう風景を見かけます。仕事に向かいながらその光景を見ていると、気持ちが明るくなるような気がします。午前7時台に新神戸駅を出れば、お昼までには東京周辺から鹿児島まで行くことができます。どこへの旅行か帰省かは分かりませんが、楽しい旅になって欲しいものだと毎朝思っています。
新幹線に東京発鹿児島行きはありませんが、そのレールは東京から鹿児島まで繋がっています。在来線の東海道線と山陽線も複々線として同じレールで繋がっています。乗り換えなしで利用できるメリットが大きい反面、いわゆる「お客様との接触」などが通勤時間に起こってしまうと、京都や大津で起きた事象の影響が姫路にまで及んでしまう一大事となります。事故は年中起こる可能性がありますが、最近は気候による交通への影響が、昔に比べて多くなっているように思います。大雨での土砂崩れ、川の増水など自然現象による公共交通への影響は、仕事や旅行への大きな妨げとなります。JRは路線が長かったり地方では山間部を走る線路があったりで、以前から雨による影響が多かった印象ですが、最近では阪急電車や阪神電車も大雨や台風の風の影響で電車の運行を見合わせる判断が増えてきています。線状降水帯という厄介な現象もしばしば起きるので、安全を考えると仕方がないことですが、仕事を休むわけにいかない私たちにとっては大変厳しい判断になることがままあります。もちろん楽しみにしていた旅行にぶつかっても大変です。在来線が止まっていても新幹線だけは運行していることがたまにありますが、結局お天気には敵いません。飛行機も台風など風が強い時には運休してしまいます。8月、9月は台風の影響が多いシーズンです。夏休みやお盆休みで休暇を取っている時期にぶつかると諦めきれません。しかし、荷物を持って旅先で立ち往生する、電車の中や空港で一夜を過ごすということを避けるため、中止や変更の判断をすることも大切かと思います。楽しい旅行を邪魔する「8月のリスク」、できるだけ少なくなってもらいたいものです。
健康とは!(リハビリテーション)
普段、何気なく歩く、しゃべる、ご飯を食べるという行動をとっている私たちですが、 脳梗塞などの病気、いろいろなケガ、手術などで、できていたことができにくくなることがいつ起こるかわかりません。そういった場合に、「リハビリをする」ということはよく知られていることと思います。リハビリは正しくは「リハビリテーション:rehabilitation」と言い、語源はラテン語の「re habilis」です。「再び」を表す「re」と「適する」を表す「habilis」が合わさった言葉で、「再び適合する(状態になる、する)」ということを意味します。例えば脳梗塞で麻痺が起こる、しゃべりにくくなる、認知機能が低下する、といった場合の機能回復訓練や、骨折して手術した後の筋力回復や歩行訓練、手術で生じた機能低下の改善訓練などが当てはまります。医師や看護師だけでなく、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、義肢装具士、医療ソーシャルワーカー(医療相談部)などの各専門職がチームを組んで取り組みます。ただ、リハビリテーションは「機能回復訓練」のみを意味しているわけではありません。病気やケガは訓練で全て元通りになるよりも、むしろそうではない場合も多くあります。そういった場合に、機能回復と合わせて、職業的や自身の活動的な自立、社会的活動への参加などを実現することを目標にして、技能評価や就業訓練を行う支援も含んでいます。さらに、障害に配慮した生活の仕方や健康の管理、外出や交通機関の利用などの生活力を高めるための支援までを含む概念なのです。
字数の関係からいわゆる医学的リハビリテーションとされる機能訓練を少しだけ取り上げます。大昔は、骨折の手術後は骨がくっつくまで安静にしていたようですが、寝たきりによる認知機能の低下、筋力の低下、関節の拘縮(こうしゅく:固まって動きにくくなること)による弊害が起こることがわかっています。大腿骨の骨折術後では翌日に足を動かすことから始まり、ベッド上で座る訓練やストレッチ、筋力補強訓練などのリハビリテーションが行われます。次第に平行棒や歩行器、杖などを使用した歩行訓練で、自立して退院できるような訓練が続き、退院後も筋力増強やストレッチなどが行われます。ケガや手術の後などは痛くて動きにくいとはいうものの、歩くだけでもバランスを取るために全身の筋肉が使われます。もしもこういうことが必要になった際は、リハビリテーションの計画に基づき無理のないように機能回復に努めていくようにしたいものです。