眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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広辻眼科マンスリー 第m195

投稿日 2022年5月2日

ロシア以外の話題を

院長 廣辻徳彦

この2年間コロナウイルス感染症のせいで自粛を強いられていたゴールデンウィーク、今年は緊急事態宣言もまん延防止等重点措置も発令されていません。毎日の感染者数が昨年は5-6千人、一昨年は2-3百人で大騒ぎしていたところ、最近は約3-4万人前後という桁違いの数なのにと考えると不思議です。現状を受け入れるようになってきたのか麻痺してきたのかわかりませんが、コロナウイルスに対する感覚は確実に変化しているようです。連休前にハワイ旅行へのハードルが低くなったとのニュースがあり、空港でハワイに向けて出発する人へのインタビューの映像も流れていました。欧米ではマスクの義務化もなくなりつつあるようです。フランスでは毎日平均7-8万人の新規感染者がいるにも関わらず、大統領選挙の際には大勢の人がマスクなしに集まっていました。感染対策が大事であることは間違いないのですが、人々の意識が変わってきたこれからは、いわゆる「ウィズコロナ」という感覚での生活が必要になってくるのでしょう。季節性インフルエンザのように罹患すれば一定期間休業や出席停止は仕方がないとして、希望者が随時ワクチン接種を自費で受けるような形になっていくではないかと思っています。
5月は皐月と言いますが、サツキという花をご存知かと思います。サツキの花を思い浮かべていただいたところで、連休前から咲き出しているツツジという花とサツキとの違いがお分かりでしょうか。よく似ている花なので調べてみたところ、サツキはツツジ科ツツジ属に分類される植物で、関東以西の山などに自生しています。5-6月ごろ、すなわち旧暦の5月(皐月)に花を咲かせるのでサツキと呼ばれるのだそうです。ツツジはツツジ科の植物で、ツツジ属に属する植物を総称してツツジと呼んでいます。4-5月に花が咲き、サツキに比べると花がやや大型で6cmくらい(サツキは4cm程度)、雄しべの数が6本以上ある(サツキは5本)、葉っぱがツツジの方が大きい、というところで見分けるのだそうです。植物学的にはサツキもツツジの仲間であり厳密に分けるべきものではないのですが、俳句の世界ではツツジは春、サツキは夏の季語とされています。4-5月に咲くシャクナゲも園芸の世界ではツツジやサツキとは別に語られていますが、植物学的にはツツジ属に分類されているものです。今の時期、街中で見かけるのはツツジが多いはずですが、もう少し季節が進んで山道を散歩すればサツキの花に出会えるかと思います。

健康とは!(水難事故に注意)

観光シーズンが始まろうとしているその矢先、知床半島で遊覧船の海難事故が起きました。4月末の時点で沈没した船体は見つかっていますが、まだ行方が分からない犠牲者もいらっしゃいます。楽しいはずのレジャーでこのような事故が起こると、それを聞いているだけでも悲しい気持ちになります。もともと人間は空気がないところで生きていけないのですが、水辺や海で活動するときには気をつけないといけません。特に日本は周りを全て海で囲まれていて、山が多いために河川や湖沼も多く、大雨の際の用水路での事故も後を絶たないのが現状です。
「溺れる」とはどういう状況で起こるのでしょう。遊泳力が乏しい場合は足がつかなくなるだけで危険な状況になりますし、海で離岸流に乗ってしまうとかなりの達人でも抗えないといいます。岩場で波に飲まれると自力で立ち上がれないこともありますし、河川では見た目にわからない流れや、深くなっている淵の渦に巻かれて岩にぶつかったり、縦回転のために川底から抜けられなくなったりします。このような物理的に水に抵抗できなくなる以外にも、水中で起こりやすくなる身体の反応が溺れる原因となります。例えば、水温の変化があるところで急に冷たい水にさらされて徐脈や不整脈が起こったり、息継ぎや息止めが繰り返されて過換気や低酸素の状態になって意識がなくなったりする現象が言われています。また、息継ぎを失敗してしまってむせ込んだときに、鼻と耳(中耳)をつないでいる耳管という細い管に水が入ることがあるそうです。飛行機に乗った時やエレベーターの中で耳が痛くなる際に唾を飲み込むと痛いのが治りますが、そのときは耳管を開いて鼓膜の内外の圧を開放しているのです。耳管に水が入った状態で無理に呼吸をしようとしたり水を飲み込む嚥下運動をしたり、外耳からの水圧の変化が加わることで、鼓膜のある鼓室というところの圧が急変します。その結果、平衡感覚を担っている三半規管などが入っている「錐体」という部分に出血が起こり、平衡感覚が失われて溺れてしまうという機序があるそうです。トライアスロン選手でもこういった状況で溺れることが報告されています。
今回の水難事故では、海水温が低かったための低体温も被害の原因であったかもしれません。これから暖かくなって水辺で楽しむことが多くなる時期、疲れた状態やお酒を飲んだあとでは水に入らないなど注意をしたいものです。末尾になりますが、犠牲者の方のご冥福をお祈りいたします。