眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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広辻眼科マンスリー 第m196

投稿日 2022年6月6日

6月は和菓子の月

院長 廣辻徳彦

この原稿を書いているのは5月末なのですが、先月記事にした「サツキ」がクリニックの前で咲いています。すでに少しばかり盛りを過ぎてきていますが、連休ごろではなく5月末に咲く、花が比較的小さい(約4cm程度)、雄しべが5本という特徴が「サツキ」に一致しています。今まであまり気にしていなかったのですが、新しい発見があったと思っています。花や木の名前に限らず、なんでも知識があれば気持ちも豊かになるような気がします。現在は重たい辞書を持ち歩かなくても、スマホやタブレットで物事を簡単に調べることができます。スマホ中毒にならない程度に上手に活用して、知識を深めていきたいものです。
さて、6月は水無月と言います。私はよくスーパーで買い物をするのですが、最近になって「水無月」という和菓子が売られているのを見かけます。白い三角形のういろう生地に粒あんを乗せている和菓子です。旧月の名前のついている菓子は他にもあるかもしれませんが、「水無月」は比較的有名なものではないでしょうか。京都では1年のほぼ真ん中に当たる6月30日に、これまでの罪や穢れを祓い、残りの半年の無病息災を願う「夏越祓(なごしのはらえ)」という神事が行われ、その際にこのお菓子を食べるそうです。これから暑くなる時期、白いういろうの三角形で氷の涼しさを表し、小豆には邪気、悪鬼を祓う意味があるお菓子であると聞くと、それを作った菓子職人のアイデアに感心します。
お菓子といえば、6月16日は昭和54年に全国和菓子協会が制定した「和菓子の日」だそうです。もともとは平安時代(西暦848年)に仁明天皇が疫病退散を祈念して年号を承和から嘉祥と改め、嘉祥元年6月16日に16個の菓子や餅を神前に供えたということに由来します。その後も通貨16枚で菓子を買う、16個の菓子や餅を求める、16歳で袖止め(振り袖から詰め袖に変える)をする、など厄を逃れ健康招福をする「嘉祥の祝」という行事が明治時代まで行われていて、それを現在に復活させたのが和菓子の日なのだそうです。ちなみに、お菓子の中でもお饅頭については別の日にお祭りがあります。奈良県にある漢國(かんごう)神社内の林(りん)神社で、日本で初めて饅頭を作った林淨因(りんじょういん)の命日にちなんだ「饅頭まつり」が毎年4月19日に行われていて、全国の菓子屋さんからたくさんのお饅頭が奉納されています。
6月16日には美味しい和菓子を、30日には水無月をいただいて無病息災を祈りたいと思います。

健康とは!(紫外線の強くなる季節)

先日、「コンタクトレンズでUVカットのタイプを使っていないと、眼底に紫外線が届いてその刺激で皮膚の日焼けが進行するのですか」、という質問を受けました。その際には、「世の中には眼鏡もコンタクトレンズもせずに生活している人がたくさんいる中、日焼け防止のために特別にUVカットレンズを使用する必要はあまりないのでは」、とお答えしました。その後、気になったので調べてみたところ、2003年に大阪市大の先生がマウスを用いた実験で、紫外線(UVB)を目に照射することで皮膚のメラニン細胞が活性化されたという報告をされていました。目に入った紫外線の刺激が脳の視床下部や下垂体に伝わり、全身のメラニン形成が増強することがわかったとの報告もあります。ヒトにおいては仮説の域を出ないところですが、実際にそういう報告があることは事実でした。
それでは実際のところ、目から入る紫外線をカットすべきかどうかという点においてどうかというと、日焼けについて考えるのであればあまり意味はないと考えます。目に入る紫外線の量は面積比から考えてもとても少ないので、その光量が脳の細胞を刺激するとしても、それによって作られるメラニン色素量は、直接皮膚に照射される紫外線による日焼けに比べ微々たるものだと考えるからです。もし目からの紫外線で問題となる日焼けが起こるなら、ハワイや沖縄でUVブロックの日焼け止めを塗っても日焼けが起こることになってしまいます。もちろん、強い紫外線を浴びればまぶたの皮膚に日焼けが生じますし、結膜(いわゆる白目のところ)にも充血が起こることがあります。角膜に炎症が起こって見えにくくなることもありますし(スキー場で起こる雪目)、翼状片という病気や白内障を引き起こす一因であるとも言われています。眼底そのものについても黄斑変性症の発症原因の一つと考えられているなど、紫外線による眼の病気にはリスクがないわけではない、というよりあると言えます。それらを防止する意味でサングラスやUVブロックの眼鏡をかけることには意味があると思います。つばの広い帽子や日傘も大事なアイテムです。最近では女性だけでなく男性でも(ジェンダーがどうとかは見逃してください)日傘を使う人を見かけますが、おかしなことではないと思います。この場合もコンタクトレンズでは角膜(いわゆる黒目のところ)しか保護されないので眼鏡の方がいいと思います。梅雨に入るとは言え、今から紫外線が多くなるシーズンですので、気をつけたい問題です。