終わらない戦争
院長 廣辻徳彦
2月まで比較的寒い日が続いていましたが、3月になって気温も上がり桜も開花してもう満開です。日本人にとって、新年度の始まりと桜には特別な関わりがあるように感じます。天気予報で紹介されていましたが、温暖化の影響か30年くらいで誤差はあるものの開花時期が早めになっているようです。あと何十年か経てば、「入学式の桜」というイメージが「卒業式の桜」に変わっているかもしれません。
地震やコロナウイルス感染など国内でもさまざまな問題はありましたが、2月末に起こったロシア軍のウクライナ侵攻についてのニュースが毎日伝えられています。私はウクライナに行ったことはありませんが、映像で見ることができるかつてのウクライナは、ヨーロッパらしいとても綺麗な街並みのある街でした。しかし、現在の状況を検索してみると、建物はその形だけを残して焼けただれ、瓦礫が散乱している状態です。太平洋戦争の際、民間人を含めて無差別に空襲された東京などの都市に比べればまだ「まし」ではありますが、とても現代に起こっていることとは思えません。東部の街では確かに親ロシア派の組織があり、ウクライナ政府当局と何らかの諍いが存在していたのでしょう。しかし、それにかこつけてウクライナ国内に大規模侵攻し続けているプーチン大統領は、やはり常軌を逸しているとしか言えません。5月くらいまでこの戦争は終結しそうにないと言う専門家もいます。すでに400万人以上が避難し、帰る場所のあてもない状況です。この先いつかは終結するとしても、都市の復興にどのくらいの年月と費用がかかるのか想像もつきません。たくさんの命が失われた大戦後、反省の上に築かれたはずの国連も有効な手立てが打てていない状態です。1日でも早い停戦と安寧が訪れるのを待ちたいところです。
ただ、私の考えも自分が得ている情報を元に導かれていることに注意をしておかないといけません。戦時中の日本人が正確な情報を知っていたわけではなく、中国ではいまだに天安門事件が検索できず事件そのものを知らない人すら多いのです。ロシアでも情報統制はかなり厳しくされていて、大統領の支持率がまだ高いと聞きます。私はウクライナ側に立った見方をしていますが、ロシアを支持する人も少なくとも一定の割合でいるのです。パレスチナ問題でアメリカはイスラエルを支持していますが、パレスチナ側にしてみればイスラエルは一方的な侵略者です。多面的にいろいろ考える必要があることを考えさせられます。
健康とは!(還暦になりました)
私は誕生日が昭和37年3月30日なので、ついに満60歳の還暦になりました。分別や経験を兼ね備えているはずの年齢ですが、残念ながら一向にそういう境地に至っていません。明治や大正、戦前の頃、10代で国家のことを考え、海外留学を試みたり大志の実現に向かって日々を生きていたりしていた世代に比べると、戦争も知らず高度成長とともに大きな苦労もなく育ってきた私はかなり「ぬるい」のかもしれません。もちろん昔よりも情報は比較にならないほど多く、生き方も多様化しているので単純にダメな生活をしていると卑下するわけではありません。病気になることが死に繋がっていた時代に比べ、病気の治療やケアができて長生できる現代では健康に気をつけて歳をとることも大事です。情けないことに血圧と尿酸値が高く、つい2ヶ月前には大腸ポリープ切除まで受けていてさらに肥満気味の私です。人に健康を説く前に自分の身を管理する必要がありそうです。
還暦は十干十二支が一回りするからと以前書きましたが、他にも、古希(70歳:中国の杜甫の「人生七十古来稀」という詩から)、喜寿(77歳:喜が草書体で書くと「七十七」と読める字になるから)、傘寿(80歳:傘の新字「仐」が「八十」と読めるから)、米寿(88歳:「米」の字が「八十八」と読めるから)、卒寿(90歳:卒が別の字で「卆」となり、「九十」と読めるから)などは概ね知られていると思います。それ以後も白寿(99歳:百の字から一を引くと白という字になるから)、百寿(100歳、他に1世紀という意味で紀寿)、茶寿(108歳:茶の字を分解するとくさかんむりが「十十」で二十、その下が八十八で合計108になるから)、皇寿(111歳:皇の字が上から白=百引く一、王の字が一、十、一に分解できて合計111になるから、他に王寿や数字の111を漢字に見立てて川寿)、大還暦(120歳:還暦の2倍)などあるそうです。中には緑寿(65歳:数え年で66歳なので「ろく(ろく)じゅ」、定年を祝い自然のグリーンのイメージも込めている)といって、2002年に百貨店協会が提唱したものまであるようです。何れにしても健康あっての物種なので元気に歳を重ねたいものです。
さて、満何歳では誕生日の前日の午後12時に1歳年齢を加えます。小学校では満6歳に達した翌日以後の新学年に入学することになっています。4月1日生まれの人が早生まれに含まれるのは、満6歳になるのが4月1日ではなく、前日3月31日の午後12時であるという理屈からだそうです。