結膜炎について
院長 廣辻徳彦
「結膜炎」という名前は、おそらく誰もが聞いたことがある病気の名前でしょう。今回はこの有名な病気についての簡単な説明を書いてみます。結膜とは眼球の表面を覆っている薄い膜です(下図参照)。ここに何らかの原因で炎症が生じてしまう状態が「結膜炎」というもので、充血、めやに、痒みなどが生じてきます。2大原因は感染とアレルギーで、感染を生じるものにはウィルス、細菌、クラミジアなどがあり、アレルギーにはスギをはじめとする花粉やハウスダスト、ダニなどがあります。
結膜の図(日本眼科医会ホームページより)
白目の表面にある部分(眼球結膜)
まぶたの裏側のピンク色をした部分(眼瞼結膜)
表層で侵入物などから目を守る働きをしている
感染性結膜炎
ウィルス性結膜炎
結膜炎を引き起こすウィルスにはさまざまなものがありますが、特に注意が必要なのは「はやり目」と呼ばれる「流行性角結膜炎」、「咽頭結膜熱」、「出血性結膜炎」の3種類です流行性格結膜炎と咽頭結膜熱はアデノウィルス、急性出血性結膜炎はエンテロウィルスかコクサッキーウィルスで生じます。どれも特に充血が強く、めやにが多く出る(起床時目が開かなくなるぐらい)、涙、目や、まぶたの腫れなどを生じることもあります。流行性角結膜炎では耳の周囲のリンパ節がはれたり、角膜にもキズが生じてゴロゴロ感を感じたりまぶしさに敏感になることもあります。咽頭結膜熱では39度以上の高熱や咽頭痛を伴うこともあり、糞便中にウィルスが排せつされるのでプールを禁止するなども必要です。
ウィルスを直接退治する特効薬はないので、感染した場合は体が自然に抗体を作って治癒するまで多くは2週間~3週間必要となります。めやにを少なくし、炎症を少しでも抑えるために点眼薬を処方しますが、あくまで補助的なものです。接触で感染するので手洗いを徹底することはもちろん、学校、仕事を休む、家庭でもタオルを分ける、お風呂を最後にするなども必要です。点眼薬を共有しても感染することがあるので、点眼薬を人と貸し借りしてはいけませんし、症状の出ていない目に予防的に点眼してもいけません。
細菌性結膜炎
めやにが黄色くべったりしていることが特徴です。人から感染することはあまりないと言われています。特別な耐性菌が原因でない限りは抗生物質の点眼がよく効いて、数日から1週間程度で症状が落ち着いてきます。
アレルギー性結膜炎
スギ、イネ科の植物などの花粉、ハウスダスト、ダニなどさまざまなもの(抗原)に反応してかゆみ、充血、めやに(白っぽいのが特徴)などが生じるものです。鼻症状がある場合も多くあります。点眼薬には抗原と反応して痒み物質を放出する細胞の働きを抑えるものと、痒み物質の作用を抑えるものとがあります。前者は効果が出てくるのに1、2週間ほどかかることもあり、毎年決まった時期に症状が出る場合は、できれば早目から薬を使うほうが効果的です。花粉が原因の場合は、伊達メガネをするだけで目に入る花粉の量を3分の1ぐらいに減らせるという報告があります。症状の強いときにはコンタクトレンズはしないのがベターです。
最近特にアレルギー性結膜炎の方が多く、花粉などだけでなく大気汚染や黄砂などの複合した影響も考えられています。時々「花粉症だったら結膜炎とは違うのですね?」と聞かれることがありますが、人に感染しないとはいうものの、立派な結膜炎の一種です。