眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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眼の病気 No.e51

投稿日 2012年3月1日

初めてのコンタクトレンズ その2

院長 廣辻徳彦

前回は、初めてコンタクトレンズ(以下CL)を使う際の注意などを説明しました。ハードコンタクトレンズ(以下HCL)もソフトコンタクトレンズ(以下SCL)も、メガネではできない左右差のある度数を矯正でき、広い視界を提供してくれる、有用な視力矯正器具です。しかし、眼に直接接触するため、眼表面に傷をつけるとか、感染症を生じるなど、メガネでは絶対に起こらないトラブルの原因にもなり得ます。
CLで問題になるのは、角膜の慢性的な酸素不足です。角膜には涙液を通して空気中の酸素が供給さていれます。もともと、瞼を閉じているときは、開いているときより角膜の酸素量が3分の1に減っています。CLは角膜の表面を覆うので、CLを装用するだけで角膜は酸素不足になるのです。直径の大きいSCLの方が、小さいHCLよりも酸素不足を引き起こします。通常、空気中の酸素濃度は約21%ですが、1~2年間使用する従来型SCL、非酸素透過性のHCL(今は市販されていません)、カラーCLを装用した状態では、角膜上にはエベレスト山頂程度の酸素濃度(約6~8%)、1日使い捨てSCL、2週間交換SCL、酸素透過性HCLでも富士山頂と同程度の酸素濃度(約15%)しかないという報告があります。どんなに性能の良いレンズでも角膜は常に酸素不足となっているのです。 
酸素不足に陥った角膜は傷つきやすくなり、感染症も起こしやすくなります。角膜に傷がつくと、充血や異物感を自覚します。そのような場合は、CL装用を中止する必要があります。ひどい感染症が生じた時は、治った後も角膜に混濁が残って視力が戻らないことや、最悪失明してしまうこともあります。慢性的な酸素不足が続くと、酸素を供給するために角膜の周辺部から新しく血管が生えてきます(角膜新生血管:下図)。新生血管が生えると、その部分の角膜の透明性がなくなったり、充血して異物感も生じたりします。角膜の一番内側にある角膜内皮細胞が障害されると、最終的に角膜が白く濁る(水疱性角膜症)こともあります。

洗眼

CLによる眼障害の原因には、酸素不足以外にも、感染、CLの汚れ、機械的な刺激、アレルギー、ドライアイなどがあります。また、長時間装用を続けている場合、洗浄不良などCLの使用法に問題がある場合、CLの汚れ・キズなどCL自体に問題がある場合、定期検査を怠っている場合、説明指導や処方自体が不適切な場合などでも障害が起こります。具体的には、1日使い捨てSCLや2週間交換SCLを交換せず長期間使う、CLのこすり洗いをしない、洗浄・保存液を交換しない、CL容器を洗浄しない、定期検査を受けない、充血や異物感があるのにCLを使い続ける、このような場合にCLによる障害が生じやすいことがわかっています。
角膜に細菌が感染し、最悪失明にいたる感染性角膜炎(下図)という病気の調査では、CL装用者が約4割で、CLは一番高いリスクファクターでした。特に10-20代では、約9割の方がCL装用者でした。おしゃれ用カラーCLは、酸素不足になりやすいので注意が必要です。近視矯正用として就寝時に装用する、オルソケラトロジーレンズというHCLによる角膜障害も増えてきています。

洗眼

CLは、とても便利なものですが眼にとっては異物です。最悪、失明する可能性もあります。正しく使って管理をし、調子の悪い時は装用しない、定期検査を受ける、これらを是非守ってご使用ください。