眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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眼の病気 No.e171

投稿日 2022年8月1日

眼科ファーストエイド

院長 廣辻徳彦

過去の記事で眼科での救急について、書いたことがあります。今回は細かな病気の話ではなく、もし家庭で自分や家族の眼に何かが起こったときに、具体的に何するべきかを考えてみます。「ファーストエイド」とは、急な病気やケガをした人を助ける最初の行動のことを指す言葉で、眼科で使うには少し大げさかもしれません。眼科での救急を、症状などから①「赤い」、②「痛い」、③「見えにくい(変に見える)」、④「何らかの外傷」と分類しておきます。教科書的な分類ではなく、30年ほど前に当時の県立尼崎病院の部長だった先生に教えていただいた、若手医師の講義用の実践的な分け方です。
「赤い」場合は、充血か出血のことがほとんどです。充血は血管が血走っている状態、出血は結膜(白目のところ)にべったり血の色が見えている状態です。目をぶつけたとか突いた、何かが入ったとかの覚えがない状況で「赤い」場合は、赤くない方の眼を隠して「見えている」かどうかを確認します。いつも通り見えているなら「赤い」場合のファースエイドはおおむね必要なく、診察時間内のクリニック受診で大丈夫です。「赤くて」かつ、明らかに見えにくい場合や外傷がないのに痛い場合は、角膜炎や虹彩炎、ぶどう膜炎、緑内障の発作などの可能性も考えられます。このような場合、家庭でできる処置は少ないので、速やかな受診を考えてください。
「痛い」場合は眼そのものの炎症、ホコリや砂や洗剤や薬剤などの飛入物によるもの、何らかのケガ、などが原因となります。眼の炎症の場合は充血を伴うことが多いので、「赤い」場合に準じて考えます。家庭でできる処置は少ないので、見え方が大丈夫かに注意して受診時期を考えてください。コンタクトレンズを装用していて痛くなった場合に、外すと見えなくなるという理由で外さなかったという人もいます。しかし、細菌感染が起こっている場合は重症化することもあるので、レンズを速やかに外すのがファーストエイドとなります。飛入物による痛みの場合は、とにかく洗眼が大事です。砂や液体の薬物の何が飛入しても同じです。「健康のため」や「病気の予防のため」洗眼するというのは間違っていますが、飛入物の場合は別です。洗眼が一番大事なファーストエイドと考えてください。砂や埃など固体の飛入物は、まぶたの裏にくっついて眼球にキズをつけることがあるので、きれいな洗面器やボウルに水をためてまぶたを引っ張りながら洗眼するのがよいでしょう。液体の場合は柔らかな流水でまばたきをしながら洗眼してください。シャンプーや中性洗剤の場合はまだよいのですが、工場で酸性やアルカリ性の強い薬剤が入った場合、家庭でも漂白剤などの薬剤が入った場合は、数分以上は洗眼していただきたいです。
「見えない(変に見える)」場合は、自分で特に原因に思い当たることがなければ、ファーストエイドとしてできることがありません。眼底出血や視神経炎、網膜の虚血や網膜剥離など多くの原因がありますが、放置せず受診することを考えてください。
「何らかの外傷」は外傷の程度にピンからキリまであるので様々ですが、まずは何かににぶつかる場合です。眼球は頭蓋骨の中でくぼんだ眼窩という場所にあるので、こけて地面にぶつかった場合でも、まぶたや額、頰にケガをしても眼球は無事なことが多い傾向です。タンスの角にぶつかったり、ボールにぶつかったりする場合は眼球に直接力のダメージが及ぶので要注意です。まずはまぶたなど、外から見える場所のけがを観察します。砂などで汚れていればきれいに洗浄します。出血がある場合は眼球を抑えないようにしながら圧迫して止血を試みます。まぶたの腫れで開けにくいこともありますが、落ち着いたところでまぶたを開けて眼が見えているかを確認します。通常通りの見え方ならまずは安心です。ぶつかるとしばらくの間はぼやけることもありますが、それなりに見えていれば緊急性が少ないので落ち着いて患部を冷やすなどしてください。かすれて見えにくい、もしくはハッキリ見えるけれど物が二つ見える場合は早めの受診を考えてください。指や枝、鋭利なもので突いてしまった場合、突かれた力による眼球への影響に加え、直接キズがつく心配があります。刃物やとがったものであればキズというより眼球の穿孔が生じる可能性もあります。眼球にキズがつくと、瞬きのたびに痛みを感じ涙も出てくるので、目を開くことも容易でない場合もあります。少しは瞬きが抑えられるので、圧迫しないように眼帯して受診するのもいいでしょう。子供さんの場合は痛いときに目をこすりがちですが、そうしないように注意してあげてください。
まとめてみれば、見え方の確認、何かが入ったときには洗眼、コンタクトレンズをしていれば外す、などできることは簡単なことばかりですが、緊急時にこそ落ち着いて考えてみてください。