新しい検査機器
院長 廣辻徳彦
5月には大型連休があります。毎年、通勤途中に新幹線の新神戸駅がとても込み合っているのを横目で眺めると、毎年のようにそんな季節になったのかと思います。土曜日がお休みの会社などでは本当に「大型」連休なのでしょうが、デパートや商店などのサービス業では真逆の忙しさになってしまう時期でもあります。連休とは関係ありませんが、当院ではこの4月に新しい検査機器を導入しました。平成20年に導入したRTVue-100という検査器械の後継機であるRTVue-WR Avanti(Angiovue)というOCT(光干渉断層計)です。
平成10年6月にRTVue-100を導入したという記事を書いています。当時はまだ診療所レベルではそれほど普及していませんでしたが、最近では多くのクリニックで導入され、黄斑部周囲の疾患や緑内障の検査に役立っています。約9年使用していたRTVue-100はまだまだ使用できますが、画像の解像度や新しい機能が付加されたことで、より正確な診断の助けになると考えます。同じ会社の器械なので、これまでに蓄積したデータを引き継いて活用できるメリットもあります。今回は新しい器械でどれくらい鮮明な画像が得られるようになったかなどをご紹介します。
まずは黄斑部という網膜の中心部分の断層像です。従来のものと新しい器械の差がおわかりでしょうか。印刷
ではわかりにくくなってしまうのですが、左の従来機では白矢印の部分に線が何本あるか少し判別しにくいですね。しかし、右の図では3本の太い線とその上方に薄い1本の線があるのがわかります。網膜の上方には後部硝子体膜という薄い膜がありますが、白矢印(点線)のように撮影できています。また、新しい器械では撮影範囲も広がり、白い点線部分より外側が広く撮影できます(一番右のくぼんだところは視神経乳頭というところです)。
黄斑部に糖尿病や眼底出血などでむくみ(浮腫)が生じると、物がゆがんで見えます。どの程度の浮腫があるかなどを観察するのに、OCTは適しています。下左図の左側で○印をつけた2つの図は黄斑部の水平方向と垂直方向の断層像です。その中で矢印のところがむくんでいる場所です。断層像の上には撮影されている部分が示されていますが、その中で四角に囲まれている部分を拡大しているのが黒矢印で示している図です。地図の等高線のようにむくんで盛り上がっているところを赤く表示して、どの程度の浮腫が起こっているかを示しています。
今回の器械には、網膜の血管を映し出すという新しい機能があります。眼底内の静止している部分(組織)と、動きのある部分(血流)を判別し、「造影剤を使わないで網膜血管内の血液の様子を画像化する」というものです。網膜の浅層や深層、脈絡膜の毛細血管層それぞれの血管網を画像化できるので、黄斑変性症の診断にも役立ちます。上図中央は正常の人の黄斑部付近の血管(左眼)で、網膜中央の黄斑部、6mm×6mmの範囲の撮影です。上図右に網膜静脈分枝閉塞症という病気の場合の血管を示します。下方の血流が悪いところが暗く写っています。同じ原理で視神経乳頭周囲の血流を検査し、緑内障の検査に応用する研究も行われています。また、今回は示しませんが、角膜と虹彩の部分を撮影して閉塞隅角緑内障の診断に応用することもできる機能も付いています。技術は進化していきますが、新しい器械に使われるのではなく、使いこなしてよりより良い診療を行う努力をしたいと思います。