眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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眼の病気 No.e107

投稿日 2017年4月3日

学校健診のことなど

院長 廣辻徳彦

4月から新年度・新学期が始まります。同じ1日ではありますが、お正月と4月1日だけは何か新しい事の始まりという気分がするのは不思議なことです。たまたまではありますが、私は3月の末が誕生日で、年度が変わって歳を重ねると自然とリセットされる気分になります(四捨五入すると60歳となってしまいました)。
 新年度は児童、学生や社会人にとっても新しい生活の始まりですが、学校には学校保健安全法という法律に基づいて、学校医、学校歯科医、学校薬剤師が配置されています(会社であれば産業医)。学校に在籍している人の健康に関与する医師で、学校医は基本的に内科や小児科の医師が務めます。ただ、眼科や耳鼻科などの専門性のある科については、県や市の判断で眼科(耳鼻科)学校医が設置されることがあります。平成22年に日本眼科医会が実施したアンケート調査では、公立学校に限れば約7割の学校に眼科学校医が設置されているそうです。学校保健安全法の中では身体測定などについての定めがあり、眼科に関しては視力と眼の疾病や異常の有無を調べなければならないと決められているので、毎年視力検査など眼科健診が行われています。小学校高学年から高校生にかけては、近視が特に進行しやすい時期です。視力の異常などが学校健診で見つかれば、放置せずに受診していただきたいものです。ちなみに、現在学校で行われている視力検査の結果は、A(1.0以上)、B(0.9-0.7)、C(0.6-0.3)、D(0.3未満)で通知されますが、その普及には当院の理事長が尽力しています。
 学校健診といえば、先日、毎日放送(TBS系)の夜のニュースで、色覚異常について短い特集がありました(色覚異常は、過去にもマンスリーNo.41、85にも書いているので参考にしていただければと思います)。その放送は色覚異常を持っている記者が、自分の経験なども絡めて取材と報告をしたものでした。取材の中で、ある大学に通う学生さんが希望した進路先での身体検査で初めて自分が色覚異常であることを指摘され、進路の再考をしたという内容がありました。平成15年度から学校での色覚異常検査が実質廃止され、自分の色覚異常に気づかないままに就職に臨む場合が増えてきたからです(厳密には「希望者のみに行う」という変更でしたが、現場がややこしいことをしなくなるのは当然です)。男性の20人に一人、女性の500人に一人いるという色覚異常を、「色の識別に困難がある“個性の一つ”である」と最終的にまとめていたのは、テレビでの医療関連放送にしては珍しくうなずけるものでした。以前にも掲載した図ですが、間違いやすい色の組み合わせを左図に示します。例えば、右図のような地図で平野と山地を単に色の違いで説明されると、どちらがどちらかわからないことも起こりうるのです

色覚異常がある場合、色を扱う職業に関して全く問題がないとは言えません。とはいうものの、どの世界にも人よりそれほど優れていない個性でも、努力などでそれなりの結果を示せる場合は多くあります。現在医師の資格については色覚の条項は全くありません。程度の強い色覚異常では、「顔色が悪い」、「出血斑と色素斑がわかりにくい」、「組織標本の色がわかりにくい」などの影響もありますが、自覚があればほとんど問題にならないのが現状です(実際、男性医師の20人に一人は色覚異常なわけです)。問題があるとすれば、航空関係や運転関係など緊急時にとっさに色で判断をしなければならない一部の職業でしょう。鉄道では遠くの信号機の色を見分けなければなりませんし、船や飛行機では左舷(翼)に赤灯、右舷(翼)に緑灯の表示灯、船はマスト上(飛行機はお尻)に白灯があり、視界が悪くてもその組み合わせでどちらの方向から相手が近づく(遠ざかる)のかがわかる仕組みになっているからです。色覚異常があるのを知らずに希望の職業の就職前健診で不可になったことで、裁判にまでなった例も生じたほどです。やはり、自分の「個性」は知っている方が良いのではないかと考えます。
 もともと人には長所、短所があるものです。視力や色覚もその一つなのですから、うまく付き合っていきたいものです。健診に限らず、何か不安があったり異常を指摘されたりした場合にはご相談ください。