眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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眼の病気 No.e109

投稿日 2017年6月1日

PM2.5(微粒子状物質)と黄砂

院長 廣辻徳彦

連休の頃から、「西の国から黄砂が流れてきた」というニュースが聞こえるようになりました。同じようにPM2.5というものも飛んできているのですが、最近はこの言葉も市民権を得ているように思います。「西の国」は、過去に多くの知識や文化を日本にもたらしてくれましたが、最近はミサイルを打ち上げてくる「その傍のある国」共々、国際的に「困ったちゃん」の傾向があります。黄砂やPM2.5は身体にも影響を与えると言われていますので、今回はそれについて考えてみます。
黄砂は、中国からモンゴル周辺などの東アジア地区にある乾燥地帯の砂漠や乾燥地帯(タクラマカン砂漠、ゴビ砂漠、黄土高原やその周辺地域など)で発生します。その地域に生じる砂塵嵐によって砂粒が舞い上がり、温度変化や風化の影響で砂粒が細粒化し、直径1mm以上の大きな砂粒は砂丘を構成し、0.05mm(50㎛)以下の最微粒子が風に乗って移動します(それらの中間の大きさの粒子は、時に「黒風暴」という大きな砂嵐の原因となることもあり、生活に大きな影響が出ることもあります)。偏西風などに乗って移動する黄砂は、粒子が大きなものから落下していきます。中国内では4-20㎛程度の粒子、海を越えて日本へ到達するのは約4㎛程度以下の微粒子だとされています。黄砂は年間2-3億tも発生するらしく、日本へは地域差はある(西日本に多い)ものの1km2当たり年間1-5tが飛んできます。日本の面積は約37.8万km2ですから、おおまかに計算すると1年間に約100万t以上の黄砂が飛んできている計算です。街中で見かける一番大きな10tダンプ10万台分です。季節では、春から初夏の時期に多いようです。黄砂の問題は農作物、建物や車の汚染、飛行機や鉄道、車の運行への影響など多岐にわたりますが、このような微粒子にはさまざまな物質が吸着することがあり、硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)、排気ガスなどの鉛の成分や、ダイオキシンや細菌、カビの成分、さらには放射性物質(セシウム)まで様々なものが吸着します。
PM2.5の「PM」とは、粒子状物質(Particulate matter)というマイクロメートル(㎛)単位の大きさの固体や液体の微粒子のことをいいます。この微粒子には、物の燃焼などで排出されるものと、硫黄酸化物、窒素酸化物、揮発性有機化合物(VOC)などのガス状大気汚染物質が、主に環境大気中での化学反応で粒子化したものとがあります。発生源としては、煤煙を発生する施設、粉塵を発生する施設、自動車、船舶、航空機の排気ガスなど人為的なもの、土壌、海洋、火山等の自然由来のものもあります。このうち、粒子径が概ね10㎛以下のものをPM10、2.5㎛以下のものをPM2.5と呼びます。PM10は、アメリカをはじめ多くの国で大気汚染の指標とされています(日本だけはPM10ではなく、「浮遊粒子状物質:SPM=おおむねPM6.5-7.0に相当」という物を指標にしています)。PM2.5はサイズが小さいだけに、長い間大気中を漂いやすい、より遠くまで浮遊する、肺胞などの身体の奥深くまで入り込むので影響を及ぼしやすいといった特徴があります。日本に飛来してくる黄砂は4μm以下ですから、黄砂の中で2.5μm以下のものはPM2.5に含まれることになります。
人体への影響は、主に呼吸によって鼻から咽頭、気管、気管支、肺へと入り込んで、その粘膜に吸着して生じます。喉から気管までは10μm程度まで、気管支より先にはそれ以下の微粒子が侵入し、PM2.5クラス以下の微粒子は肺胞レベルにまで到達するとされています。吸い込んだ空気に含まれる微粒子がすべて吸着するわけではなく、多くは吐く息と共に排出されますが、空気中での濃度が高いほど多くの微粒子が吸着します。身体も咳や鼻汁、気道の線毛運動で微粒子を排出するように働きますし、肺胞ではマクロファージという細胞が微粒子を貪食してくれます。しかし、PM2.5や黄砂の刺激や影響で、呼吸器(特にアレルギー性鼻炎や喘息などアレルギー関連の病気)や循環器の病気のリスクが高くなり、発がん性の物質も含まれることからそのリスクも懸念されています。目においても直接結膜などの粘膜に吸着するので、アレルギー性結膜炎の症状が強くなります。
私が子供の頃は日本でも大気や水質汚染がひどく、公害が問題となっていました。排ガス規制や大気汚染防止法で空気はきれいになってきています(下図左:平成13−22年度のPM2.5濃度)が、隣の国ではまだまだの様子です。予防にマスクは有用ですが、その場合は下図右(引用sciencewindow.
jst.go.jp)のようにしっかり装着してくださいね。(全体の参考と引用:環境省HP、Wikipedia)