緑内障の配合剤について
院長 廣辻徳彦
明けましておめでとうございます。平成25年もよろしくお願いいたします。
今回は緑内障という病気の治療薬について書いてみたいと思います。緑内障はこのコラムでも何度か紹介している病気です。加齢によって誰にでも生じる白内障とよく似ている名前でありながら全く違うも病気で、
① 視神経が侵される病気である。
② 進行に伴って視野がだんだん狭くなり、最終的に視力が低下する。
③ 病気の進行を食い止める方法は、「眼圧」を下降させることである。
④ 現時点では、進行してしまうと回復させる方法がない。
といった特徴があります。視野障害がかなり進行するまで症状に気づきにくいので、末期の状態近くなって初めて病院を受診されることも珍しくありません。現在は健診や他の病気で受診される際に、視神経の異常が見つかって早期に発見できることも多くなっていますが、それでもいまだに日本人の中途失明原因の第1位になっています。
緑内障の有効な治療は、「眼圧」を下降させることです。「眼圧」とは、眼の形を維持するために必要な眼の弾力と考えればわかりやすいと思います。単位は血圧と同じmmHgで、10〜21mmHgぐらいが標準です。眼圧が高いほど緑内障を発症する確率は高くなりますが、標準の眼圧範囲内であっても緑内障は発症します。統計調査では、眼圧が標準範囲内にある緑内障(正常眼圧緑内障)の患者さんの数は眼圧の高い緑内障の患者さんの約10倍であるとわかっています。「眼圧」が正常であっても緑内障になる可能性があるということですが、「眼圧」がどのような値の緑内障であっても、「眼圧」を下げることが唯一の治療になります。
眼圧を下げるための手段には、薬物治療、レーザー治療、手術治療があります。レーザーや手術は、どういう形であっても身体(緑内障では眼)に何らかのキズをつけてしまいます。ですから、治療として選択されるのはまず薬物治療ということになります。薬剤には点眼薬と内服薬とがありますが、身体への副作用を考えると点眼薬が有用です。点眼薬にも種類がありますが、現在使用されているのは、プロスタグランジン製剤(キサラタン、トラバタンズ、ルミガン、タプロス、(レスキュラ))、β遮断剤(チモプトール、ミケラン)、炭酸脱水酵素阻害剤(トルソプト、エイゾプト)、α2刺激剤(アイファガン)、α1遮断剤(デタントール)、α1遮断+β遮断剤(ハイパジール、ミロル)、副交感神経遮断剤(サンピロ)など、多種に及んでいます。それぞれに眼圧を下げる作用が異なるので、まず1剤、それで眼圧下降が十分でなければ、2剤目、3剤目と追加して使用します。しかしながら、すべての薬剤には一定の副作用が存在し、薬の種類が増えるほど副作用も増えるといっても過言ではありません。「できるだけ眼圧を下げたい、その上で使う薬剤の種類を減らしたい」、そういった考えに基づいて2種類の薬を混ぜ合わせた配合剤が作られました。単純に混ぜるだけではそれぞれの相互作用の問題もあるので、どれでもすぐに混ぜて配合剤にできる訳ではありません。十分な配慮がされて、配合できる組み合わせが選ばれています。配合剤のメリットは、
①点眼回数が減る→点眼の手間が減る、点眼忘れが少なくなる(=薬の効果が十分に引き出せる)
②点眼薬に含まれる防腐剤などによる副作用が減る。
③2種類を点眼するより1種類の方が経済的な負担が減る。
といったところです。点眼薬そのものの副作用には、変化はありません。緑内障で使用できる配合剤は、現在3種類あります。β遮断剤のチモプトールとプロスタグランジン製剤のキサラタンとの配合剤であるザラカム、チモプトールとプロスタグランジン製剤のトラバタンズとの配合剤であるデュオトラバ、チモプトールと炭酸脱水酵素阻害剤のトルソプトとの配合剤であるコソプトです。点眼回数は前の2剤が3回から1回に、コソプトは5回から2回に減少し、使いやすくなっています。現在調子よく点眼が使用できている場合まですべて配合剤に変える必要はありませんが、ご自身の点眼薬についてご質問があれば遠慮なくご相談ください。