眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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眼の病気 No.e57

投稿日 2013年2月1日

花粉症の季節

院長 廣辻徳彦

自分がそうだからという訳ではありませんが、2月になると花粉症が気になります。花粉症とは植物の花粉が目や鼻の粘膜に接触して生じるアレルギーで、目の痒みや充血、鼻づまり、鼻水、くしゃみなどを引き起こす症候群のことを言います。花粉症はスギやヒノキだけでなく、いろいろな草花の花粉(ヨモギやイネ科の雑草など)でも引き起こされます。眼に生じる花粉症は、いわゆる「アレルギー性結膜炎」と呼ばれるものです。「アレルギー性結膜炎」は花粉以外のハウスダストやダニ、ペットの毛などの抗原でも生じまがすが、全国で2000万人ぐらいいると推測されるアレルギー性結膜炎の患者さんのうち、8割以上は花粉によるものという報告もあります。マンスリーの記事では、平成23年の2月と3月に比較的詳しく書いていますので、ご家庭でインターネット環境があれば「広辻眼科ホームページ」から「目の病気」の項目を開いて記事をご覧ください。
今回は主に診断や検査に関わることについて説明します。上にも書きましたが、花粉症は「結膜炎」の一種で、花粉によって結膜に生じるアレルギーです。「結膜炎」にも細菌やウイルスの感染によって生じる「感染性結膜炎」や、何らかの薬剤(漂白剤や実験や職場での薬物など)が眼に入って生じる「薬物性結膜炎」などいろいろあります。「結膜炎」の症状は「充血、痒み、メヤニ」が主体になり、「まぶたの腫れ、まぶしさ(羞明感)、痛み」などを感じます。治療のためには、アレルギーや感染など原因の鑑別が必要になります。
鑑別に一番大事なのは、結膜炎が生じたときの状況です。これは別に医師でなくても考えることができます。漂白剤などが目に入ったのであれば原因を考える必要もありませんし、家族に充血とメヤニが強い人がいれば状況的に感染性のものである可能性が考えられます。季節によって毎年症状が出て、しかも鼻の症状もあるならば花粉症が考えられます。もちろん、状況だけでは確定診断はできないので、「充血の程度」、「結膜の状態」、「メヤニの性状」、「鼻や全身の症状」などを細隙灯という顕微鏡で観察して総合的に判断します。一見同じように見える結膜炎でも、詳しく観察すればほとんどこれだけで診断がつきます。しかしながら、診断がつきにくい場合、アレルギーだという確定診断やどのようなアレルギーを持っているのか知りたい場合は、詳しい検査を行うことになります。

アレルギー性結膜・ウィルス性流行性角結膜炎

※左図はアレルギー性結膜炎、右図はウィルス性の流行性角結膜炎。単純に充血が強いかどうかだけでなく、結膜のむくみ(浮腫)の程度、メヤニの量や性状、結膜の状態などと、痒みや他の症状を合わせて判断します。
検査では、結膜や全身にアレルギー(詳しくはⅠ型アレルギー)が生じていることを調べます。結膜には好酸球という白血球や涙の中や血液中のIgE抗体という物質が増えるので、メヤニや分泌物や結膜の細胞を直接拭いとった標本の細胞を染色し、顕微鏡で観察してその中に好酸球があれば診断がつけられます(結膜好酸球の同定)。また、涙の中のIgE抗体を調べる検査キットを使えば、アレルギー性結膜炎の診断に役立ちます(涙液中総IgE抗体測定)。抗原となる物質を点眼してアレルギーが出るかどうかを確認する方法(点眼誘発試験)もあります。全身検査では、皮膚に抗原を注射する方法と引っ掻いて抗原エキスを滴下するスクラッチテスト(皮膚テスト)や、採血して血清中の特異的IgE抗体を測定する方法(血清抗原特異的IgE抗体測定)があります。採血での検査では、スクリーニングとして何種類かの抗原の種類(スギ、ヒノキ、ブタクサ、ヨモギ、ダニ、ハウスダスト、ネコ上皮、イヌ上皮など)を選択して、自分がどのような抗原にアレルギーを持っているか知ることもできます。採血検査は、検査費用に3割負担で数千円かかってしまうところが難点です。

涙液中総IgE抗体測定キット

※左図は血液中の好酸球(中央の細胞:東海大学デジタル標本箱から引用)、中図はパッチテストをしているところ(合計8種類の抗原の検査:東京女子医大皮膚科HPから引用)、右図は涙液中総IgE抗体測定キット(アレルウォッチ)。
2月中旬からはスギ花粉が飛ぶそうです。「花粉を防ぐ」、「薬の使用は早めに」で何とか乗り切りましょう。