眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療社団法人 広辻眼科

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眼の病気 No.e73

投稿日 2014年6月1日

マンスリー100号

院長 廣辻徳彦

マンスリーは今月で第100号になるそうです。私が2008年から担当しているこのページはまだ100回には達していないのですが、「100」にちなんで 何か書くように理事長から指示を受けました。「100」に関連する病気では「百日咳」が有名ですが、眼科の病気には見当たりません。そこで今回は、眼科医が関わる病気の中で日常よく経験し、しかも大事なものについて再度取り上げたいと思います。「子供の近視」と「大人の白内障」です。
5~6月にかけて学校健診が行われます。学校での検査で視力低下があれば、眼科を受診するように用紙が配られます。遠視などの場合もありますが、視力低下の原因は多くは近視(近視性乱視)です。近視の原因はまだ確定されていませんが、学童期に生じる近視の進行機序はすでに結論が出ています。ほとんどの場合、「眼軸長(目の前後の長さ)が延長して近視が生じる」という機序です。人間の目は本来遠くにピントが合っていて、近くを見るときに「調節」という力を働かせてピント合わせをします。これが働きすぎて近視のようになってしまうのを「調節緊張」と言いますが、これは近視ではありません(いわゆる仮性近視)。一度眼軸長が伸びてしまうと短くすることはできません(伸びた身長が縮まないのと同じです)。「毛様体筋を訓練する」とか「超音波でほぐす」などという治療は、眼軸長に影響を与えられないので全く治療効果はありません(調節緊張には影響を与えられる可能性があります)。現在、軸性近視(眼軸長延長によって起きる近視)を「治療」できる科学的な方法はありません。
近視が進む要因については、大規模調査で次のことがわかっています。(1)遺伝の影響が強い、(2)都市部で速い、(3)近業の程度(読書距離が短い、長い、読む本の数が多い)が強いほど速い、(4)戸外活動が多いほど抑制される、(5)I.Q.や学歴が高いほど速い、というものです。従来経験的に言われていることが確認されたと言えます。近視にならないもしくは進行抑制のためには、この逆をすればよいということになります。しかし、現実問題として勉強時間が長くなる10代の時期に本を読むなとも言えません。具体的には勉強や読書時の距離を長くとる、近業の時間の合間に遠く(できれば明るい戸外)を見る時間を作る、という従来の方法がベストということになります。子供が自分だけで行うのは無理なところもあるので、具体的には「近くと遠くを交互に見る」、「部屋の端っこの時計や本棚の書物の背表紙の字を読む」などを親御さんが一緒に実行してあげるのもよい方法です。
近視の進行については、「網膜後方へのピントずれが影響している」という説が考えられています。近視の矯正には網膜中心部にピントを合わせる単焦点レンズが使われていますが、周辺部でのピントずれには対応できないので進行予防ができにくいと考えられます。累進多焦点レンズ(いわゆる遠近両用レンズ)の眼鏡をかける、アトロピンなどの薬物を使うことで進行抑制ができることは確認されています。多焦点コンタクトレンズやオルソケラトロジー(寝ている間に特殊なハードコンタクトをはめる方法)は有望視されていますが、学童期の児童へのコンタクト使用というリスクもあり、まだ確実な研究はされていません。
白内障については今までも何回も書いていますが、手術が有効なことや手術がそれほど身体に負担をかけないことなども、広く知られるようになってきています。白内障は誰にでも生じ、必ず進行して行きます。患者さんからの質問に、「手術はいつ頃すれば良いのでしょうか」というものがあります。患者さんそれぞれで時期が異なるのですが、間違いない事実がいくつかあります。1.白内障の治療法は手術だけである、2.白内障が進むほど手術が難しくなる、3.年齢を重ねるほど体力や気力が低下する、などです。これらのことから考えると、運転、読書、裁縫、写真撮影など、「見る・見える」ということについて何らかの不自由を感じるようになれば、それがその人にとっての手術時期であると言えるでしょう。手術をすることは怖いことなので逡巡するのは当然ですが、漫然とあるいは片方の目がまだ見えているからという理由で待つのはあまり良い選択肢とは言えません。もちろん、「よく見えている」と患者さんが思っている場合は急いで手術する必要はありませんが、具体的には矯正視力が(0.5)〜(0.6)程度になってしまえば「見えているつもり」なだけであると考える方が正しいように思います。「緑内障の発作が起こりそうである」とか視力に関係がなくても手術を勧めることもあるので、視力が良くて自分で困っていないのに手術を勧められる場合には、じっくり理由を聞いてみてください。あまり良い話ではありませんが、東京などでは眼科の手術施設が多く手術数を確保するために、まだ困っていない患者さんにまで手術を勧める病院もあるそうです。
近視や白内障に限らず、わかりにくいことがあれば、まずはご相談下さい。