眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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眼の病気 No.e189

投稿日 2024年2月8日

ICLについて

院長 廣辻徳彦

2月はアレルギーの季節です。今年は暖冬傾向である影響か、花粉の量が例年より少し多くなる予想だということなので、花粉症がある人は早めの対策が望ましいかと思います。アレルギーについては過去数回記事にしているので、今回は全く違うICLという近視矯正手術についての話題です。
レーシック(LASIK)という近視の矯正手術についても紹介した(マンスリーNo.156)ことがありますが、ICL(Implantable Collamer Lens)という治療法はまだ一般的な認知度が低いかと思います。「(有水晶体)眼内コンタクトレンズ:(Phakic) inter ocular lens」とも言われ、眼内に樹脂製のレンズを挿入して近視を矯正する手段(手術)です。私も近視があるので、メガネをかけた時の見た目、枠のせいで視界が遮られること、マスクをすると曇ったりスポーツの時使えなかったりとメガネのデメリットは経験しています。多くの場合、コンタクトレンズを使えばそのデメリットは解消しますが、コンタクトレンズにも手入れやコストの問題、角膜への影響などがあり、万能ではありません。そこで、近年LASIKという手術後の手入れがいらない近視矯正手術が普及しています。手術ですので合併症の可能性もあり、保険外治療で高額なために問題なく手術が終了しても術後の満足度が十分でないという場合もあります。LASIKではレーザーで角膜を削るという作業があるので、一度行えば元に戻すことはできません。LASIKの発展形に、フェムトセカンドレーザーという装置を用いて小さい角膜切開幅で行うSMILEという手術もあります。利点はLASIKより多いのですが、やはり一度行えば元に戻すことはできません。
ICLの歴史はLASIKよりも古く1980年代から開発され、日本では2010年に厚労省の承認を受けています。開発以降、初期には緑内障や虹彩炎など合併症の出現などで問題もあったのですが、現在は合併症が少ない素材と形状のレンズが開発され、少しずつ広がっているようです。現在多く使われているICL(下図左)は全体が四角形で中央がレンズという形です。このレンズを、角膜に3mm程度の切開を入れて虹彩と水晶体の間にはめ込む(下図右:ICLは黄色いところ)だけで、特に縫合なども必要ない両眼で約20分程度の手術です。手術を行うには眼科専門医の資格を持ち、学会とレンズ会社の行う講習会を受講するなどした後、インストラクター(指導医)とレンズ会社の担当者の立ち会いのもと手術を行って認定を受ける必要があります。ICLの利点はLASIKと比較してみると、1.角膜を削らないので組織の損傷が少ない、2.LASIKのような経年的な術後屈折変化がない、3.角膜切開幅が小さいのでドライアイを引き起こしにくい、4.LASIKができない強度の近視や遠視、乱視にも対応できる、5.不具合が生じた時には取り出したり入れ替えたりもできる、などがあります。手入れがいらないのも利点です。利点ばかりではなく、LASIKと同じように保険外診療ですので、それなりの費用(LASIKより高額)がかかります。かなり安全な手術ですが、術後感染は0.02%(手順の多い白内障手術よりは低確率)と言われています。術後に狙った度数と誤差が出て入れ替えが必要になったのは、学会の調査で約1%でした(大きな問題なく再手術できています)。術後にハロー、グレアといって、暗いところで光の輪郭がにじんだりまぶしく見えたりすることもあります。多くの場合時間とともにほとんど気にならなくなるそうです。ただ、「気にならない」というのは、「ハロー、グレアがなくなる」ということではありません。ICLは眼内でかなり安定性があるのですが、何かの衝撃で回転したりズレたりする可能性はあります。乱視用のICLは回転すると視力に影響がでるので、再手術が必要となります。

緑内障

また、LASIKと同じで老眼の進行には対応できず、もともとの眼の近視が進行すれば、その分視力に変化が出ます。この観点から、ICLは近視があまり進まなくなる20歳以降で老眼が始まらない40歳代くらいまでがよい適応とされています。私はすでに還暦を過ぎましたし、怖がりなので若くてもこの手術はしないでしょうが、近視のデメリットは知っているので否定するつもりはありません。お考えの方は、よく調べてみてください。
ちなみに、LASIKを行う場合は施設やレーザーに数千万円以上の設備投資が必要で、メンテナンス費用は年間百万円単位でかかるらしいです。しかし、ICLは白内障手術ができる施設であって白内障手術に習熟している術者がいれば、認定を受けること以外に追加の器械もあまり必要ありません。今後行う施設は増えていくのではと思います。