資格と視覚
院長 廣辻徳彦
年度末の3月には、新年度に備えてコンタクトレンズデビューをしたり運転免許を取ったりする機会が増えることが多いかと思います。今回はいろいろな免許などの資格などに必要な「視覚」について書いてみます。
私たちが持っている「普通免許」や「原付免許」などの運転免許証の基準は下記の通りです。
免許の種類 | 視力(矯正視力)と深視力 |
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大型免許・中型免許・準中型免許・ けん引免許・第二種免許 |
視力:左右それぞれの視力が0.5以上で、両眼の視力が0.8以上あること。(注意)左右のいずれかの視力が0.5未満の場合は、免許の取得及び更新はできない。 深視力:三棹(さんかん)法の奥行知覚器で、2.5メートルの距離で3回測定し、平均の誤差が2センチ以内であること。 |
中型(8トン限定)免許・準中型(5トン限定)免許・普通免許・大型特殊免許、大型自動二輪免許・普通二輪免許 | 左右それぞれの視力が0.3以上で、両眼の視力が0.7以上あること。片方の視力が0.3に達しない場合は、よく見える方の視力が0.7以上かつ視野が150度以上あること。 |
小型特殊免許、原付免許 | 左右それぞれの視力が0.1以上で、両眼の視力が0.5以上あること。片方の視力が0.1に達しない場合は、よく見える方の視力が0.5以上かつ視野が150度以上あること。 |
大型免許で必要な「深視力」の三棹法とは、遠近感が大丈夫かを調べる検査のことです。どの免許でも色覚の基準は「赤色・青色及び黄色の識別ができること。」で、色覚異常の人でもほとんど基準を満たしています。
船の免許では、20トン未満の船舶に必要な小型船舶操縦士には1級小型船舶免許、2級小型船舶免許、湖川小出力限定免許、特殊小型船舶免許(水上バイク)という種類があり、20トン以上の大型船舶の運航には「海技士(航海・機関・通信・電子通信)」という資格が必要となります。
1級小型船舶免許、2級小型船舶免許、湖川小出力限定免許、特殊小型船舶免許(水上バイク) | 視力:視力が両眼とも0.5以上(矯正可)であること。ただし、一眼の視力が0.5未満の場合は他眼の視野が左右150度以上、かつ視力が0.5以上であること。 色覚:夜間において船舶の灯火の色を識別できること。できない場合は、日出から日没までの間に航路標識の彩色を識別できれば時間帯限定免許が取得できる。 |
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海技士 | 視力:「航海」では両眼ともに0.5以上、「機関・通信・電子通信」では0.4以上 色覚:船舶職員の職務に支障をきたすおそれのある色覚の異常がないこと。 |
パイロットには第1種と第2種があり、第1種は定期運送用操縦士、事業用操縦士、准定期運送用操縦士、第2種は自家用操縦士に分かれています。矯正手段は、オルソケラトロジー以外であれは「可」となるようです。
第1種 | イ:各眼が裸眼で0.7以上、及び両眼で1,0以上の遠見視力を有すること。 ロ:各眼について、各レンズの屈折度が(±)8ジオプトリーを超えない範囲の常用眼鏡により0.7以上、かつ、両眼で1.0以上に矯正することができること。 |
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第2種 | イ:各眼が裸眼で0.7以上の遠見視力を有すること。 ロ:各眼について、各レンズの屈折度が(±)8ジオプトリーを超えない範囲の常用眼鏡により0.7以上に矯正することができること。 |
色覚は石原式の検査で正常であるか、異常でもpanel-D15でパスの判定であることが必要条件です。パイロットの身体検査には、他にも中距離視力や近見視力、斜視や眼振、緑内障や網膜疾患などたくさんのチェック項目があります。キャビンアテンダントについてはコンタクトレンズで(0.8)以上の視力が出れば良いそうです。
警察官や消防士、自衛官の採用時には、矯正視力が良好であれば問題ない様子です。視力より色覚が問題となることが多く、自治体によっても異なりますが程度の強い色覚異常の場合は不採用となるケースがあります。昔は医学部でも色覚異常は受験不可という大学も多くありましたが、今は全くありません。医師も看護師も人口と同じ比率で色覚異常者がいる時代、色覚による制限は緩和されていくことになるだろうとは思います。