眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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眼の病気 No.e185

投稿日 2023年10月2日

ロービジョンケアについて

院長 廣辻徳彦

「ロービジョン」という言葉を聞かれたことがあるでしょうか。私たちは生活している中で、情報の約8割を視覚から得ていると言われています。しかし、病気やケガなどで視力が低下した際に治療で回復すればいいのですが、残念なことにそれが難しいこともあります。そう言った場合、生活や仕事での情報が得られにくくなる、移動が困難になる、人とのコミュニケーションに支障が出る、といった日常、社会活動に問題が出てくる可能性があります。「ロー:low」は低い、「ビジョン:vision」は視覚、視力という意味で、ロービジョンとは成長や発達、日常・社会生活に何らかの支障をきたす程度の「低視覚」であるということを指す言葉なのです。WHO(世界保健機構)では、矯正視力が「0.05以上0.3未満」であると定義されていますが、日本では数字で定義せず、視覚障害のために日常生活に支障をきたす状態のことを「ロービジョン」と呼んでいます。
ロービジョンの方に対していろいろな方面から行われる支援のことを総称して「ロービジョンケア」と呼んでいます。医学的なことだけでなく、社会的、教育的、職業的、福祉的、心理的な支援を包括的に表現したものであり、子供のロービジョンでは発達や成長に必要な支援やリハビリ、大人で中途の視覚障害になった方に対しては社会的、心理的なリハビリをすることになります。身体障害手帳を取得される程度の視覚障害者に調査を行った結果では、不自由だと感じることは移動、情報の入手、家事、食事、仕事、住宅、などが上位にありました。これらの問題を解決するために、さまざまな補助具の利用、情報を入手する方法を確保、生活や職業についての訓練を行える場所の情報を提供、福祉制度を利用することで少しでも不自由さの改善に役に立つことができ、それがロービジョンケアとなるわけです。具体的には、残った視力で「よりよく見える工夫」をするために、視覚補助具を使用したり、照明の改善を試みたりします。文字を拡大する補助具では、「手持ち拡大鏡(=虫メガネ):図1」もその一つですし、据え置き型で利用する拡大読書機(図2)や遠くを見るための単眼鏡もあります。多くの眼疾患では眩しさが気になることが多く、それを軽減する遮光眼鏡(図3)も視覚補助具の一つです。また、最近は網膜色素変性症など「夜盲」の症状がある人に、それを補助してくれるような製品(図4)なども開発されています。一度試させていただいたのですが、暗室でもかなり明るく感じる見え方で驚きました。「視覚以外の感覚を活用」するために、音声機器や解読機器を利用します。スマートフォンには文字を音声変換したり、書籍を読み上げてくれたり、拡大読書機のような機能で使えたりするアプリもあります。「情報入手手段の確保」のためには、パソコンやスマートフォン、ラジオを活用し、点字を学習して点字図書を利用することも有益です。いろいろな生活訓練を行える施設もありますし、新たな職業訓練を行なったり、子どもの場合は特別支援学校を選択したりすることも選択肢です。私の後輩でとても活動的で尊敬している女性の医師が、「ブラインド・メイク」といって全盲の方でも自分でメイクできる方法があることを教えてくれました。メイクをすることで社会に参加できるきっかけになることもあるのだと感心させられた次第です。他にも、障害の程度によっては障害者手帳の交付や障害年金といった福祉制度を活用できますし、病気によっては関連団体や患者交流会などでさまざまな情報を得ることも可能です。

ロービジョンケアの窓口になるのか眼科医ですが、それを進めていくには視能訓練士、看護師や病院のスタッフに加え、福祉や教育関連、補助具の販売に関わる多くの職域の連携が必要となります。もちろん、病気や事故、ケガで視力がもしくは身体のどの部分が障害され、元通りに回復しないとなった時にそれを受け入れて新しいことに取り組むことは大変難しいことです。ですが、ロービジョンケアを行なって、障害はあっても残っている機能をできるだけ活用し、少しでもできることを増やしていただくことができればうれしいことかと思います。