眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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眼の病気 No.e188

投稿日 2024年1月5日

ドライアイのこと

院長 廣辻徳彦

干支にちなんだ目の病気を書きたいところですが、辰(龍、竜)は実在せず、「ドライアイ」なら「ドラゴンのアイ(目)」に語呂が近いかと思いつき、10年ぶりにドライアイのことを書くことにします。年賀状を書いたとか、紅白やニュース映像を見過ぎて目が疲れた人の中にドライアイの方がいらっしゃったかもしれません。
 ドライアイは、「様々な要因により涙液層の安定性が低下する疾患であり,眼不快感や視機能異常を生じ,眼表面の障害を伴うことがある」病気と定義されています。眼不快感はショボショボ、クシャクシャという感覚、視機能異常は見えにくさやかすみ感、眼表面の障害は角膜や結膜についたキズや充血の所見です。この定義に加えて、診断基準に「1.眼不快感・視機能異常などの自覚症状」、「2.BUT が5 秒以下」があり、「1 および 2 を有するものがドライアイ」とされています。BUTというのは「tear film Break-Up Time(涙液層破壊時間)」の略で、まばたきで眼の表面に涙の層が形成されてから、目を開けたままにして乾燥などで破壊されるまでの時間です。正常では10秒以上涙の層が保たれますが、ドライアイでは5秒以内に涙の層が破壊されるということです。定義にある様々な要因は、大別すると涙の量が少なくなってしまう「涙液減少」 、 涙の量は正常でも質に問題がある「蒸発亢進」 、涙と接触する角膜上皮の水濡れ性が低下する 「水濡れ性低下」などに分類されています。
 涙は眼球の耳上側にある涙腺で産生されます(下図1参照:千寿製薬HP)。涙はまばたきで目の表面全体に行き渡って、一部は蒸発しながら上下の眼瞼(まぶた)の内側にある涙点という穴から涙小管、涙嚢を通って鼻腔内に流れていきます。眼瞼のまつ毛の内側にあるマイボーム腺からは脂の成分が分泌され、涙の表面を覆って涙の乾燥を防いでいます。目の表面にある涙の層を涙液膜と言います。涙液膜は表層のマイボーム腺由来の「油層」と、水分と分泌型ムチンという糖タンパクを含んだ「液層」でできています(下図2参照:正常の涙液膜)。液層は角結膜上皮とそこから突出する形で分布している膜型ムチンでつながっています。ムチンは結膜にある結膜杯細胞(ゴブレット細胞)から分泌されている物質です。目の表面以外にも胃などの消化器官や呼吸器官などほぼすべての粘膜表面にも存在し、粘膜保護の役目を果たしている動物特有の物質です(納豆のネバネバはグルタミン酸とフラクタン、オクラはペクチン、メカブや昆布はフコダインやアルギン酸という成分でムチンとは別物です)。
 ドライアイを引き起こす要因のうち、涙液減少はシェーグレン症候群や年齢などによる涙腺機能低下で起こり、水分そのものが不足するものです。蒸発亢進ではマイボーム腺機能不全(MGD)などが原因となって、質の良い脂分が不足して涙が乾燥しやすくなります。MGDは加齢や眼瞼の慢性的な炎症を伴っていることが原因で起こるとされています。MGD以外にビタミンA欠乏、薬剤、コンタクトレンズ装用も蒸発高診の原因となります。水濡れ低下性は、分泌型ムチンの不足や膜型ムチンの異常が原因となり、角結膜上皮と液層の結合が弱くなるという機序が考えられています(下図3:ムチンの異常で角膜上皮と涙液膜の結合が乱れている状態の模式図)。
ドライアイの治療はその原因別に考えます。水分の補給には人工涙液やヒアルロン酸ナトリウム(ヒアレイン)の点眼、涙液貯留のために涙腺プラグの挿入を行います。MGDに対しては炎症の治療や眼瞼の清拭や温めて脂分の分泌をうながす治療(温罨法)を用います。ムチンの異常にはジクアホソルナトリウム(ジクアス)の点眼、上皮細胞や膜型ムチン保護のためにレパミピド(ムコスタ)点眼を使用します。乾燥によっておこる炎症にはステロイド点眼も用い、実際はこれらを組み合わせて治療します。ドライアイは乾燥感にとどまらず、目の不快感や見えにくさから生活の質をも下げてしまう病気です。加湿器を使用するなどの環境改善も大事なことです。