雨と草花
院長 廣辻徳彦
6月は梅雨の季節、最近は「数十年に一度という雨」が毎年のように降る傾向があり、先月のGW終盤の大雨でも「平年の1ヶ月分が1日で」という降水量を記録していたと思います。近いところでは伊丹の天井川の氾濫、一昨年の静岡県熱海市の土石流や数年前の広島安佐南地区の山崩れなど、降雨による災害は山や川が多い日本では他人ごとではありません。私の家は山の斜面を造成した宅地にあって、神戸市のハザードマップでは土砂災害警戒区域(急傾斜地の崩壊:がけ崩れ)というところに指定されています。家の前にある崖の下が中学校なので崖崩れの防止工事が施工されているはずですが、大雨の予報が出ている時には少し緊張が高まります。今年もこれから雨のシーズンになるので、大災害が起こらないように祈るばかりです。
この季節、道沿いや公園でいろいろな花が咲いています。桜が散った後の街中にはモクレン、そのあとは昨年のマンスリーでも紹介したツツジを見かけました。5月末から当クリニック前にはサツキが咲いています。私はゴルフや釣り、写真撮影などという趣味もないので、休日はおおむね夫婦でお出かけをしていますが、散歩がてら「今年はどこの花もとてもよく咲いている」と妻が言います。そう言われてみると、確かに先ほど書いた花々も、庭木として植えられることの多いハナミズキやその仲間のヤマボウシなども白やピンクの花をたくさんつけています。私の家でもヤマボウシを植えていますが、今年は本当に花が咲きこぼれるくらいです。地域周辺のみの現象かもしれませんが、たくさん咲いている花を見るだけで得をしたような気持ちになります。もちろん植えられている木々だけでなく、散策して少し周りを見れば石垣にも小さな花々があちこちに咲いているのが見受けられます。これを雑草が咲いていると言うと牧野富太郎博士に叱られてしまうところですが、最近は花の写真を撮って検索すればある程度の確率でその名前がわかるアプリもあるので、急がない散策のときには調べることができます。逆瀬川の河川敷も5月末現在のところたくさんの草で溢れていますが、その中でおそらくオオキンケイギクと思われる黄色い花が咲いています。繁殖力が強く外来種として駆除の対象になることも多いようですが、逆瀬川では草刈機で刈り取るだけなので毎年花が咲くのでしょう。梅雨で鬱陶しい日が続きますが、庭にも道端にも花が多く咲くようになる季節です。雨の止んでいる間にはお散歩がてら、いろいろな花を眺めてみてはいかがでしょう。
健康とは!(こどもの目の日)
節句(節供)や節気などの他にも、「何月何日は・・の日」と言われている日があります。2月22日を「ニャンニャンニャン」で「猫の日」としているのはご愛嬌ですが、同じ日は明治38年に日本政府が竹島を島根県の所管とする旨を公示した「竹島の日」でもあります。他にも、10月10日は「目の愛護デー(由来は昭和6年から始まった視力保存デー)」、8月7日は「鼻の日(昭和36年から)」などいろいろな日があります。さて、6月10日は何の日でしょうか。少し有名なところでは「時の記念日」ですが、調べてみると「路面電車の日」や「ところてんの日」など20以上の記念日になっていました。
この6月10日に今年から新しい日が加わりました。日本眼科学会・日本眼科医会など関連5団体で作られた日本眼科啓発会議が制定した「こどもの目の日」で、日本記念日協会を通して新しく登録されました。日本眼科啓発会議は、視覚の重要性とそれを支える眼科医療の先進性や社会貢献性などを広く国民に啓発するための会です。これまでも子どもたちの視機能の発達を守り、一生使えるように眼の健康を維持増進すること、日々デジタル機器に触れる子どもたちの近視発症や進行を予防すること、健全な視力を保つための知識と行動を広く啓発することにつながるような活動を実施しています。
従来、幼少時に強い遠視や乱視、左右の屈折値に差がある不同視などのせいで、視力が育たない「弱視」が起こる問題がありました。早期発見のためには3-4歳くらいで眼の屈折値を測定する必要がありますが、自治体によって検査器械が導入できていなかったため見過ごされてきた可能性がありました。眼科医会などの働きかけに対して、昨年度厚労省が予算をつけてくれたおかげで、有効な対策である「3歳児健診時の屈折検査導入」が推進されるようになり状況が改善されつつあります。また、最近は幼児期からタブレット端末やスマホを操作する機会が増え、近視発症の低年齢化が問題になっています。近視の進行は将来の網膜剥離や緑内障、新生血管黄斑症の発症リスクにもつながります。子供の視力は生後3ヶ月で0.01-2、1歳で0.2、2歳で0.5-6程度に発達し、3歳で約3分の2が1.0になり、就学時までにほぼ1.0まで見えるようになります。弱視や近視を予防して「6歳までに1.0の視力を得る」という意味で、6月10日を「こどもの目の日」としたというわけです。早期の目の健診に関心が持たれて、大事な子供の視力を守り、育むことに目を向いていただくようになればと思います。