眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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眼の病気 No.e8

投稿日 2008年8月1日

物がゆがんで見えてきた

院長 廣辻徳彦

最近テレビ番組でも紹介されご存知の方も多いと思いますが、「物がゆがんで見える」ことで始まる病気があります。今回はそのような病気についてご紹介します。
そもそも、「物がゆがむ」というのは眼のどこに病気が潜んでいるのでしょう。眼の構造はよくカメラにたとえられますが、ほとんどの場合フィルムの働きをしている「網膜」の中の「黄斑部」という中心部にという場所に病気が起こっています。乱視が進んだのでは、と考えられる方もいらっしゃいますが、一般的に乱視ではゆがんで見えるという症状は起こりにくいものです。
さて、それではどのような病気で「物がゆがんで」しまうのでしょう。特に最近注目を浴びているのが「加齢性黄斑変性症」という病気です。欧米では中途失明原因の第1位になっている病気(日本では緑内障、糖尿病網膜症の順)で、網膜の下方にある脈絡膜というところから新生血管が生じて出血や浮腫(むくみ)を引き起こして視力を悪化させてしまうというものです。普通は両目で物を見ているのでごく初期にはすぐに気付かないことも多いと言われていますが、片目で見た時に新聞の字がゆがむとかまっすぐの線が曲がっているなどの症状で気がつきます。はじめはゆがみだけのことが多いのですが眼底出血を引き起こすことがあり、この段階になると一気に視力が低下してしまします。この病気の厄介なところは、元通りに直せるという治療法がまだないことです。レーザー光線や手術などが有効なこともあるにはあるのですが、すべてのタイプに効くわけではありません。近年ではPDT(光線力学)療法という治療が開発され、かなりの割合で進行を食い止められるようにはなっています。しかし、まだまだ完治させられるとはいえないところです。病気の発見が早いほど治療には有利なので、もしも物がゆがむような症状を感じた時には早めの受診が得策です。

物がゆがんで見えてきた

物がゆがむ病気はほかにもあり、ポリープ様脈絡膜血管症(PCV)や、強度近視で生じてくる近視性網脈絡膜委縮、黄斑上膜(上図)、糖尿病網膜症などで生じてくる黄斑浮腫、中心性脈絡網膜症など、さまざまです。ポリープ様脈絡膜血管症にはPDT療法がある程度有効とされ、黄斑上膜は手術による治療が可能です。糖尿病の黄斑浮腫には手術による治療、トリアムシノロンというステロイド剤を使った治療が有効であることがあります。
いずれにせよ網膜の黄斑部というところは、手術で取り換えがきかないところです。できるだけ早めに発見して対策をとることが大事です。上図に示すアムスラーチャート(方眼紙で代用できます)の中心部の点を片目で見て、線のどこかにゆがみを感じれば病気の可能性があります。先月号でお知らせしたOCTという器械は、これら黄斑部の病気の鑑別に非常に威力を発揮します。検査は数分で終わるものですので、症状などでご心配があればご相談ください。