眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

(受付)午前8:30〜 午後2:00〜 (休診)土・日・祝祭日・年末年始 ご予約・お問い合わせ0797-72-6586

眼の病気 No.e204

投稿日 2025年5月2日

近視の進行抑制(リジュセアミニ点眼)

院長 廣辻徳彦

本年4月から、新しく近視の進行抑制に効果があるとされる点眼薬が使用できるようになりました。「リジュセアミニ(本来リジュセアの後に®がつきますが省略します)」という点眼薬で、アトロピンという薬剤を0.025%に調整して、1回使い切りの容器で発売されました。これまでも海外から同じ内容の点眼薬(マイオピン0.01%と0.025%の2種)を個人輸入して使用してしている医療機関もありましたが、国産で厚労省の認可が出た薬剤で、今後マイオピンもリジュセアミニに切り替わっていくと思われます。残念なことに保険診療用の薬剤としては認められなかったために、これを使用する場合には健康保険が使えずすべて「自由診療」になってしまいます。これについての注意点も書いてみたいと思います。
 「近視」というのは、ほとんどの場合眼球が前後方向に伸びて(「眼軸長」が伸びるといいます)ピントが網膜に合わせにくくなる状態の眼です(図左)。生まれた時は身体も眼球も小さいので、成長にしたがって眼球も育ちます(大きくなる=眼軸長が伸びる)。小学生の終わり頃には眼球の大きさはほぼ大人と変わらない22mm前後になり最終的には23mm程度になります。私たちが子供の頃もそこそこ受験勉強はありましたし、本やマンガを読むことも多く、暗くなったら早く寝ていた時代に比べると近業作業が多いことで近視になる事もありました。しかしながらこの10-20年、携帯電話やスマートフォン、携帯ゲーム機の普及に加え、子供が外遊びをする時間が少なくなってきています。おそらくはそれに関連して、10-15歳くらいで正常域を超えた眼軸長の伸展が進み、学校での近視の割合が増えていると推測されます。近視になった場合すべてがそうなるということではありませんが、程度が強くなるにつれ緑内障や網膜剥離などの重大な病気になるリスクが増えるとされています。近視になることを防ぐには近業時に30cm以上距離を取る、30分近業した後は20秒以上目を休める、1日2時間以上は屋外で過ごす、などが推奨されています、リジュセアミニは近視を治したり進行を止めたりすることはできませんが、「進行を抑制できる」効果が期待できます。近視の程度が弱ければ重大な病気になるリスクを減らせる可能性があるというところにこの薬の意味があると考えられます。(図は参天製薬HPから引用)

実際の治療は1日1回点眼するのみです。自分自身が点眼をした場合としなかった場合の進行具合を比較することはできませんが定期的な受診をしてください。アトロピンには散瞳効果があります。0.025%という低濃度ですが、副作用でまぶしく感じたりかすんで見えたりすることがあるので点眼は就寝前にしてください。近視の進行具合は眼軸長の伸び具合や屈折検査で判定します。点眼を途中で中止した場合に近視の進行が進んでしまうという報告もあるので、眼軸長が伸びにくくなるという18歳ぐらいまでは使用するのが望ましいとされています。ただ、治験のデータと比較して明らかに抑制ができていない場合には、漫然と続けることはよくないとされています。
 この点眼は自由診療の扱いになります。クリニックによって異なりますが、調べてみると検査費用は税別で1回2,000-5,000円、点眼薬は1ヶ月分で4,000円程度の設定が多いようです。初診と1ヶ月後、その後3ヶ月に1回程度の受診とすれば1年間に6-7万円+税金というところでしょう。10年以上続けるとすればそれなりの負担になりそうです。保険診療を同日に行うことはできないので、例えばアレルギー性結膜炎や麦粒種の検査や点眼薬の処方は同じ日に保険診療ができません。この点眼薬を使用している間は、日を変えても近視に関する眼鏡やコンタクトレンズの検査はすべて自由診療となるところに注意が必要です。当院は基本的に保険診療メインでやってきています。選定療養という制度になる可能性もあるらしいので、導入はもう少し考えたいと思っています。