眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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眼の病気 No.e65

投稿日 2013年10月1日

緑内障学会に参加しました

院長 廣辻徳彦

9月21日から23日にかけて、東京で緑内障学会が開催されました。学会はその分野の最新の話題を知ることができる機会なのでできるだけ参加したいのです が、そうそう診療を休んで参加することもできないというジレンマがあります。今回は土曜日から連休にかけての開催でしたので、土曜日午前の診察後に大急ぎ で出発し、初日の夕方から参加できました。緑内障については、「早期に緑内障を発見する」ことと「治療のために眼圧を下げる」という二つのことが最近の大 きなテーマになっています。具体的には、検査器械の開発と進化、新しい点眼薬、手術手技の改良などの話題が多くなっています。それぞれのことは以前からこ のマンスリーに書いていますが、検査器械ではOCT(光干渉断層計)という器械が改良されて、より早期に緑内障と診断できるかという可能性についての話 題、点眼薬では昨年から使用できるようになったα2刺激薬(アイファガン)の使用経験の話題、手術では「バルベルトイプラント」と「エクスプレス」という インプラント(手術時に眼に埋め込んで使用する器具)の話題が多く見られました。今回はこの中で、緑内障をより早期に診断できるかということについての話 題を紹介します。
本来緑内障は、「視神経乳頭の形」という形態学的な変化と、「視野の異常」という機能的な変化がそろって診断されます。しかし、「視野異常」というもの は、緑内障のごく初期の状態なのではなく、網膜の神経細胞が約6割以上障害されて初めて現れる所見であるということがわかってきています。緑内障の進行を イメージするのに有名な図を示します。一番左端が正常で、半円形を右に行くほど緑内障が重症になることを示している図です。3つに区切られた左側(水色) はいかなる検査でも検知しえない病期、中央(緑から黄色)は症状が出ないけれど特殊な検査で判定できる病期、右側(黄色から橙色)は視野に異常が現れる病 期です(Weinreb他;AJO 2004;138:458-467.)。ですから、視野に異常が出るということは、緑内障の病期でいえばむしろ中期から末期にかけてということになるわけ です。

視野異常

この視野に異常が生じる以前に「視神経乳頭の形」だけでなく、「網膜に現れる神経線維束欠損」といった形態的な異常を判定できるかと期待されたのが GDxやHRTという検査機器です。特に最近OCTという器械の精度が進化したことで、眼底写真などで肉眼的に判断していた形態的異常を、さらに早期に判 断できるようになりました。緑内障という病気の診断には「視野の異常」の所見が必要なので、形態学的に異常なだけの状態を「視野検査で異常が生じる前の緑 内障」という意味で「pre-perimetory glaucoma(プレペリメトリーグラウコーマ)」と呼んでいます。
例えば当院でも、眼底所見から緑内障を疑って視野検査をしたものの視野に異常がなかった患者さんで、OCTを導入した後に検査したところ視神経周囲の神 経線維が薄くなっており、しかも黄斑部周囲の神経節細胞網膜内層厚(GCC:ganglion cell complex)も薄くなっていた方がいました。注意深く経過観察を続け、その後に視野異常が出現したため、点眼薬を追加して経過を見ています。下の図は 左から眼底写真、視野検査、視野異常の程度を正常のデータと比べたもの(いずれも異常なし)、視神経周囲の神経線維の厚さ、黄斑周囲の網膜内層厚のOCT 所見(赤いところが異常)を示しています。視野に異常がない時期に、OCTではっきりと異常所見が出ていることがわかります。
ただ、検査器械には測定誤差というものがありますし、近視による変化やそのほかの眼底の病気の所見を緑内障の初期病変と判定してしまうこともあります。 また、「pre-perimetory glaucoma」であると考えられても、いつから治療を始めるかにはまだ統一した見解はありません(その判断をした時点で治療を始めるという考えが主流 となっていくと思われます)。いずれにしても、早期に治療を開始すれば、昔のように悪くなるばかりの病気ではないのが緑内障という病気です。疑問点があれ ばまたご質問ください。

視野検査