緑内障の話 その4
院長 廣辻徳彦
閉塞隅角緑内障
閉塞隅角緑内障は、何らかの原因で眼球内にある水(眼房水)の流れが悪くなり、眼圧が上昇することで生じる緑内障です。流れが悪くなるのは先月マンスリーでお示しした隅角(虹彩と角膜ではさまれた部分)という部分です。徐々に進行するタイプもありますが、房水の流れが急激に悪くなってひどい眼痛、頭痛、嘔気で発症する急性のタイプもあります。この急性発作は気持ちが高揚したり、内視鏡時に使用する前処置薬やかぜ薬、睡眠薬などを使用したりすることで引き起こされることがあります。急性発作を起こす方にはそれまで全く緑内障と言われたことのない場合も多く、発作を生じたあと早めに適切な処置をしないと視力に影響が出ることが多いので、緑内障と言えばこのタイプを思い浮かべる方も多いようです。
治療はレーザー光線か手術で房水の流れを改善するのが第一選択です。最近では水晶体を摘出する白内障手術(実際には白内障があまり強くない場合でも)を行う方法も有効といわれています。こういった方法でも眼圧がコントロールできない場合は開放隅角緑内障と同じような薬物療法、手術療法を行うことになります。
続発緑内障
続発緑内障は何か別の疾患が原因で、眼圧に異常が生じるタイプの緑内障です。原因となるのはぶどう膜炎(虹彩などの炎症によって起こる病気)、糖尿病網膜症、網膜剥離、外傷など様々です。血管新生緑内障、ポスナーシュロスマン症候群、嚢性緑内障など原因や状態によっていろいろ種類があります。いずれのタイプも、まず原因疾患の治療が第一です。それでも眼圧がコントロールできないときには薬物療法、手術療法を行うことになります。
さて、このシリーズの最初に緑内障についてよく聞かれることを書いてみました。最後に緑内障についての大まかにもう一度まとめてみましょう。
確かに緑内障は放置すると失明につながる病気です。しかし、急に見えなくなってしまうタイプは少なく、多くは10年以上の年月をかけて徐々に進行するものです。急性に生じたタイプでも、適切に治療できればほぼ元通りに戻ることが期待できます。
一度痛んだ神経は元に戻らないので治らないという印象があります。しかし、早期に発見して充分な薬物療法と、必要なら適切な時期の手術を行うことでかなりコントロールできます。緑内障にはよくないといわれる睡眠薬やかぜ薬は多いのですが、閉塞隅角緑内障でなければ影響が少ないので必ずしも飲めないことはありません。眼圧は高いとは限らず正常のタイプが多いので、早期発見と経過観察のためには眼圧検査だけでなく眼底検査、視野検査が大切です。
緑内障という病気にはさまざまなタイプがあるので、ひと言で説明することは大変難しいものです。残念ながら今のところ元通り回復できる方法はないのですが、急激に進行してしまうタイプは少ないこともおわかりいただけたと思います。生活を変えることはなく、できることは何でもしていただいてかまいません。大事なのは点眼薬などを決められたとおりに使うこと、視野検査などで状態を確認しつつ、あせらず病気と付き合っていくことが大事なのではないかと思います。
機会があればまたご質問などいただければと思います。