点眼薬の種類
院長 廣辻徳彦
今月から、先発医薬品(長期収載品)の処方を希望する患者さんの自己負担額が増える制度改定が行われます。正直なところ、患者さんにも処方箋を発行する医師や調剤する薬剤師にとってもあまりメリットがない制度です。今回は、点眼薬という医薬品についてその種類や効能を考えてみます。内服薬と比べるとドラッグストアで販売されている市販薬を含めても点眼薬の種類は大変少ないものです。①緑内障治療薬、②抗菌・抗ウイルス薬、③副腎皮質ステロイド性抗炎症薬、④非ステロイド性抗炎症薬、⑤ドライアイ・角膜治療薬、⑥抗アレルギー薬、⑦白内障・眼精疲労・その他用薬に分けて書いていきます(以下、薬の名前は一般名(先発医薬品の商品名)です)。
①緑内障治療薬:緑内障を治療するための点眼です。眼圧を下げることが緑内障とって唯一証明されている治療なので、そのための効果を持つ薬です。ラタノプロスト(キサラタン)に代表されるFP受容体作動薬、チモロールマレイン酸塩(チモプトール)などのβ遮断薬、ドルゾラミド塩酸塩(トルソプト)などの炭酸脱水酵素阻害薬などたくさんの種類があり、さらに2種類の薬を混ぜたブリモニジン酒石酸塩+リパスジル塩酸塩水和物(アイファガン:α2刺激薬+グラナテック:Rhoキナーゼ阻害薬=グラアルファ)といった配合点眼薬も多く、眼圧や視野の変化を見ながらそれらを組み合わせて治療しています。
②抗菌・抗ウイルス薬:抗菌薬は細菌感染が原因の結膜炎や角膜炎、麦粒種(めばちこ)などの治療に使われます。点眼薬のほか眼軟膏として使用されます。抗菌剤で一番多く使われるのはレボフロキサシン水和物(クラビット)に代表されるニューキノロン系という種類ですが、セフェム系のセフメノキシム塩酸塩(ベストロン)、アミノグリコシド系のトブラマイシン(トブラシン)、マクロライド系のアジスロマイシン水和物(アジマイシン)などの薬があり、菌の種類によって選択します。ヘルペスウイルスにはアシクロビル(ゾビラックス)軟膏、真菌にはピマリシン(点眼、軟膏)という薬があります。
③副腎皮質ステロイド性抗炎症薬:結膜炎や虹彩炎などで生じる炎症を抑える効果があり、手術後にも使われます。免疫反応も抑える効果を併せ持っています。点眼や眼軟膏として使用され、フルオロメトロン(フルメトロン)やベタメタゾンリン酸エステルナトリウム(リンデロン)などの薬が多くの場面で使われています。
④非ステロイド性抗炎症薬:ステロイドではないタイプの抗炎症薬です。プラノプロフェン(ニフラン)、ブロムフェナクナトリウム水和物(ブロナック)、ジクロフェナクナトリウム(ジクロード)などがあり、使用される場面は結膜炎や手術後などステロイドとよく似ています。
⑤ドライアイ・角膜治療薬:角膜表面を保護する効果がある薬です。ドライアイ専用にはジクアホソルホナトリウム(ジクアス)とレパミピド(ムコスタ)があり、ドライアイも含めた角膜炎などに精製ヒアルロン酸ナトリウム(ヒアレイン)が使われます。人工涙液としてマイティアという点眼薬もあります。
⑥抗アレルギー薬:花粉症を始めとするアレルギー性結膜炎に使用します。エピナスチン塩酸塩(アレジオン)、オロパタジン塩酸塩(パタノール)、トラニラスト(リザベン、トラメラス)、ケトフェチンフマル酸塩(ザジテン)、クロモグリク酸ナトリウム(インタール:先発品は生産中止)などがあります。特に強いアレルギーである春季カタルには、シクロスポリン(パピロックミニ)やタクロムウス水和物(タリムス)を使用します。
⑦白内障・眼精疲労・その他用薬:白内障にはピレノキシン(カタリン)、グルタチオン(タチオン)が使われますが、年齢による進行が止められないのは致し方ありません。眼精疲労にはビタミンB12のシアノコバラミン(サンコバ)やネオスチグミンメタル硫酸塩・無機塩類配合剤(ミオピン)が使われます。そのほかに検査用に散瞳する薬や子供の屈折力を精査する際に使用する薬などがあります。
病院やクリニックで処方する薬の成分が、市販薬に含まれていることもありますし、昔は病院でしか処方できなかった内服のアレルギー薬であるアレグラやアレジオン、鎮痛薬のロキソニンなどは、現在薬局で購入できます。ですが、大きな副作用などのチェックはされているとはいえ、用法、用量は適切に守らないといけません。また、人によって反応が異なることもしばしばです。後発医薬品は主成分こそ同じですが、添加物や防腐剤などが異なることがあり、少ないながらも効果が異なることがあるという報告もあります。薬は正しく使えばこそ効果を引き出せるものなので、医師や薬剤師に相談することをためらわず、指示されたとおりにお使いください。