眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

(受付)午前8:30〜 午後2:00〜 (休診)土・日・祝祭日・年末年始 ご予約・お問い合わせ0797-72-6586

眼の病気 No.e184

投稿日 2023年9月6日

結膜の病気いろいろ

院長 廣辻徳彦

結膜炎という有名な病気があるので、「結膜」という言葉を聞いたことのない人はいないでしょう。ですが、結膜とはどこかと聞かれると答えられる人は少ないかもしれません。結膜は眼球を構成している強膜の表面(=球結膜)と、上下のまぶた(眼瞼)の裏側を覆っている(=瞼結膜)薄い膜です。球結膜と瞼結膜の間の曲がっているところ(天井と床に当たるところ)を円蓋部結膜といいます(下図:上下の赤い線のところ 参天製薬HPから引用)。今回はこれまでも書いてきた結膜炎や翼状片も含め、結膜の病気について改めてまとめてみました。
まずは結膜炎についてです。この夏休み、当院でもアデノウイルス感染による結膜炎の患者さんが目立ちました。結膜炎はウイルス感染、細菌感染、アレルギー性のものや、薬剤や外傷などが原因となることもあります。ウイルスや細菌感染では充血と眼脂が目立ちます。特にアデノウイルスによる流行性角結膜炎や咽頭結膜熱(写真参照)、エンテロウイルスやコクサッキーウイルスによる急性出血性結膜炎は感染力も強く、はやり目と呼ばれています。ウイルスそのものに効果はありませんが、治療は眼脂を抑える抗菌薬や炎症を抑えるステロイド薬を使用します。アレルギー性結膜炎は痒みとむくみを強く感じます。くしゃみや鼻症状を伴うことも多く、抗アレルギー薬やステロイド薬で治療します。結膜炎では痒みを自覚するので、擦り過ぎると結膜がむくんでゼリーのように盛り上がってしまうこともあります。他には水虫や頭皮用の治療薬を間違えて点眼する、詰め替え時にシャンプーの原液が飛入するなどでは、薬剤性の結膜炎(+角膜炎)が起こります。料理中の油跳ねでも同じですが、まず流水で時間をかけて洗眼し、その後に充血や痛み、見えにくさを感じれば眼科を受診します。他にも以前に紹介した春季カタルも結膜のアレルギー性疾患ですし、少し詳しく分けると淋病やクラミジアによる結膜炎もあります。日本で見ることはありませんが、トラコーマもクラミジアの一種で衛生環境が悪い地域ではまだ発生しています。
結膜の病気で受診の多い病気が結膜下出血です。強膜と結膜の間にある血管が何らかの原因で切れた時に起こります。皮下出血では皮膚の色のせいで青紫色に見えますが、強膜が白いため血の色がそのまま見えて、しかも眼なので「びっくり」度が高いようです。出血自体はほとんど心配がありませんが、スポーツや事故で眼球打撲した時、草木の葉や枝でついた時などには、その打撲や傷の治療が必要となります(写真:植木支柱での結膜裂傷:結膜下出血は黒矢印、キズは白矢印の右側で縦長の形、右図では緑色のところが結膜の裂傷)。結膜の傷は小さいければ点眼薬のみで大丈夫ですが、傷が大きいと縫合が必要なこともあります。高血圧や糖尿病がある人、月経中などに起こりやすいとも言われています。抗凝固薬(血液サラサラの薬)を服用中であれば、白目全体が赤くなるほどに出血が広がることもありますが、眼球自体に影響が出ることはほとんどありません。
瞼裂斑と翼状片は同じ病気ではありませんが、日光の刺激を受けやすい、まばたきで擦られやすい、瞼に覆われている部分と比べて乾きやすいなどという理由で角膜付近の3時9時に当たる場所に好発します。瞼裂斑は結膜が「ペンだこ」のように盛り上がってしまったものです。5−60歳を過ぎてくると起こる確率が上がりますし、コンタクトレンズ装用も原因となります。瞼裂斑自体に治療は不要ですが、炎症が起きると(=瞼裂斑炎)充血や異物感が生じるのでステロイドなどでの治療が必要になります。翼状片は角膜の両側、特に内側から角膜中心に向かって結膜組織が伸びる病気です。10年以上かかかって進行することが多く、大きくなったら手術が必要となります。

他にも私も経験したことはありませんが、眼類天疱瘡(がんるいてんぽうそう)という自己免疫疾患で、結膜炎症状から始まり、瞼と眼球の結膜が癒着したり、睫毛乱生(逆まつげ)や強いドライアイ、最終的には角膜混濁まで生じたりする病気などもあります。1ページだけでは書き切れないので、またどこかで書きたいと思います。