眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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眼の病気 No.e167

投稿日 2022年4月4日

コンタクトレンズ(基礎的なこと)

院長 廣辻徳彦

毎年2月、3月には新学期に向けて、初めてコンタクトレンズ(以後CLと略します)を試そうという学生さんが来院されます。どなたかが家庭内でされている場合はともかく、一人もお使いでなければ意外にCLについてご存知ない場合も多いようです。メガネに比べると枠がないので視界が広く見える、度数に左右差があっても矯正可能、ソフトコンタクトレンズであれば運動でも外れにくい、気温や湿度差やマスクでもくもることがないというメリットがある反面、取り扱いには注意が必要で感染などが生じると失明の可能性があるという注意点もあります。CLについては約10年前に記事にしていて基本的なことは大きく変わっていませんが、今回はCLのごく基本的なことをおさらいしたいと思います。CLには、大きく分けてハードコンタクトレンズ(以後HCL)とソフトコンタクトレンズ(以後SCL)という種類があります。
HCLは概ね9mm前後の直径で、角膜よりも小さい形です。現在市販されている酸素透過性HCLは「含シリコンメタクリレート」や「含フッ素メタクリレート」という素材で作られています。角膜乱視などに対して矯正効果が高く視力のスッキリ感が良い、汚染されにくく消毒も比較的容易、SCLより耐久性が高く(2-5年程度)長く使えばコストが安い、異常が生じたときに気づきやすいので重症の感染が起こりにくい、というメリットがある反面、SCLに比べて最初の装用時に違和感が強く馴染みにくい、衝撃で外れやすい(激しいスポーツには不向き)、歳をとった時に眼瞼下垂を引き起こすことがあるというデメリットがあります。乱視の矯正効果やコストについてのメリットは大きいのですが、最初にはめた時の異物感や、学生さんの場合体育やクラブ活動で外れやすいという欠点があるので、最近では使われる頻度が少なくなってきています。しかし、程度の強い乱視や円錐角膜といった病気についてはHCLでの矯正が有用ですし、日常生活で簡単に外れるわけでもなく、最初の異物感を乗り越えれば装用感についてのデメリットもなくなるので、今の時代でも試す価値は十分にあるものと思います。
SCLは直径が14mm前後で装用時には直径約11mmの角膜を全て覆います。「ヒドロキシメチルメタクリレート」や「シリコンハイドロゲル」といった素材で作られていて、CL内の含水率(水分を含む割合)が50%以上であれば高含水SCL、50%以下であれば低含水SCLと分類されます。一般的には高含水の素材の方が酸素をよく通すのですが、低含水SCLでも素材によっては酸素をよく通し水分が少ない分薄く加工して作ることができるので、素材の含水率だけで良い悪いが言えるわけではありません。また、SCLは素材がマイナスイオンを含むかどうかでイオン性と非イオン性とに分けられます。イオン性のレンズはプラスイオンを帯びた汚れなどを引き寄せやすいので、少し汚れやすくなります。これらの特徴をもとに、SCLは、グループI:非イオン性低含水、グループⅡ:非イオン性高含水、グループⅢ:イオン性低含水、グループⅣ:イオン性高含水という4グループに分類されています。素材以外にSCLは使用期間で分類できます。毎日交換するディスポーザブルレンズ(いわゆるワンデータイプ)、2週間使用して交換する頻回交換タイプ(いわゆる2週間レンズ)、1ヶ月のサイクルで交換する定期交換レンズ、1年ほど使用する従来型ソフトコンタクトレンズなどです。少し雑な言い方になりますが、長く使えるレンズほど経済的である反面、汚れや変形が起きやすいためアレルギーや感染のリスクが高くなります。中には従来型レンズを2年以上使用している人もいますが、眼科医の立場からは避けて欲しい使用法です。ワンデータイプ以外は、1日の終わりに必ず洗浄と保存、消毒が必要となります。一番多く使われているのはMPS(マルチ・パーパス・ソリューション)というオールインワンタイプの液ですが、CLを必ずこすり洗いすることと、同時に保存ケースの洗浄、定期交換をすることが重要です。MPS以外にも過酸化水素やポピドンヨードを使用する消毒法がありMPSよりも消毒効果が高いのですが、必ず中和をしなければいけないという手間から今一つ普及していない様子です。SCLには、異物感が少なく装用しやすい、慣れやすい、激しいスポーツでも外れにくいというメリットがある反面、耐久性はHCLより低い、レンズの汚染と感染の確率がHCLより高い、装用感が良いため異常に気づきにくい(悪くなるまで放置してしまう)というデメリットがあります。
私たちも初めてのCLをSCLから勧める場合が多いのですが、CL(特にSCL)はいい加減に使うと大きな障害を引き起こす可能性もある道具なのです。毎日のケアを行うこと、定期検診に行くこと、何よりも異常を感じた場合には使用しないこと、を忘れずに使っていただきたいものです。