眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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眼の病気 No.e155

投稿日 2021年4月2日

眼科のレーザー治療(その2)

院長 廣辻徳彦

前回眼科のレーザー治療、①網膜に対するレーザー治療、②緑内障に対するレーザー治療、③角膜、水晶体など屈折矯正に関するレーザー治療の中で、①の網膜についての途中まで書いたのでその続きです。
黄斑部という網膜の中心部分の病気に対するレーザー治療もあります。黄斑変性症という病気には、網膜の視細胞という細胞がゆっくり傷んでしまう「萎縮型」と、脈絡膜新生血管という異常な血管ができて発症する「滲出型(図1)」があります。現在、萎縮型にはこれといった治療がありませんが、滲出型の黄斑変性症に対しては抗VEGF剤という薬剤を眼球内に注射するのが一般的です。滲出型に対して補助的な治療という位置付けでレーザー治療が行われます。一つは光線力学療法(PDT)という治療で、ベルテポルフィリンという光に反応する薬剤を点滴し、比較的弱い出力でレーザー光線を当てます。黄斑部の新生血管に取り込まれたベルテポルフィリンがレーザーに反応し、新生血管を退縮させるという仕組みです(図2:色素を取り込んだ新生血管が緑色で示されています)。もう一つは新生血管を直接レーザー凝固する方法で、新生血管が黄斑部のそのまた中心部である「中心窩」というところに存在せず、それほど大きくない場合に行われますが、レーザー凝固されたところは暗点になってしまいます。光線力学療法は中心性漿液性脈絡網膜症という病気に対する治療としても行われることがあります。
②緑内障に対するレーザー治療
緑内障については今までにも何回か書いてきましたが、隅角という部分の形によって開放隅角緑内障と閉塞隅角緑内障というタイプに分けられます。緑内障にもいくつかのレーザー治療があり、レーザー虹彩切開術という方法は閉塞隅角緑内障に対するレーザーです。いわゆる「緑内障発作」とも言われる急性閉塞隅角緑内障に対して行われます。緑内障発作とは眼の中の房水の流れが瞳孔(ひとみ)と水晶体との間と、隅角の部分でブロックされて急激に眼圧が上がる状態で、眼痛や充血、視力低下が起こります(図3:黒い丸が房水の流れにくいところ、大きい丸が瞳孔と水晶体の間、小さい丸が隅角の部分)。放置すると視力低下、最悪失明することもある病気です。レーザー治療で虹彩に穴を開けて、防水の流れを良くして眼圧を下げます(図4:矢印のところにレーザーで穴を開ける)。緑内障発作の時には角膜の透明性が眼圧上昇のために損なわれる(濁ってしまう)ので、レーザーができなければ手術で虹彩に穴を開けます。白内障手術はこの房水のブロック状態を解除できるので、手技が洗練されてきた最近では、レーザー治療ではなく白内障手術を行うこともあります。緑内障発作が起きそうな眼もある程度予想できるので、そういう場合は予防的にレーザー虹彩切開術を行います。選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)というレーザー治療は、開放隅角緑内障で点眼薬だけで十分な眼圧下降が得られない場合に行います。房水が流れていく線維柱帯というところにレーザーを照射します(図5:矢印のところにレーザーを当てる)。レーザーを行うと、線維柱帯の細胞や組織の構築が改善され、房水が通りやすくなるとされています。少しくだけた言い方をすれば、手術ほどの効果は期待できないけれど、点眼薬がこれ以上増やせないとか手術を行う前に一度行ってみるという位置付けかもしれません。一般的ではありませんが、血管新生緑内障や続発緑内障などの難治で視力もあまり期待できない場合、毛様体レーザ治療という治療があります。毛様体(図5:白矢印)という房水を産生する場所をレーザーで破壊して眼圧下降を図る方法です。レーザー以前には冷凍凝固という方法もありましたが、レーザーの方が定量的に行えるのと術後の炎症や痛みがましというメリットがあります。(以下次号)