眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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眼の病気 No.e143

投稿日 2020年4月1日

PCR検査(前ページの続き)とコロナウィルスの眼病変

院長 廣辻徳彦

PCR検査の話を来月に回すと時期外れになるかもしれないので、特別編としてこのページに続きを書きます。検査で陽性と診断された中で、本当に病気がある人の割合を「陽性的中率」と言います。20万人の宝塚市民に全例検査を行った場合、正しく検査で陽性が出る数が140人、病気がないのに陽性とされる数が1,998人と計算されました。陽性的中率は140÷(140+1,998)で計算され、6.5%となります。つまり検査で陽性と判断されても本当に感染しているのはたったの6.5%、すなわち100人中6−7人ということになります。
別の集団、例えば何らかの症状がある、または感染者との濃厚接触者である、などの人を対象に検査をしたとしましょう。そのような集団の中では感染している確率が上がります。中にはただの風邪やインフルエンザも含まれますが、ここでは500人の集団で、その中でコロナウィルスに感染しているのが4割(200人)と仮定してみましょう。検査で陽性と出るのは500×40%×70%=140人、感染しているのに陰性とされるのは60人となります。感染していないのに検査で陽性となるのは500×60%×1% =3人という計算です。この場合の陽性的中率は140÷(140+3)=97.9%となり、感染している可能性の高い集団での検査の信頼性は、かなり高いと言えます。陽性的中率と同じように、検査で陰性と診断された中で本当に病気がない人の割合を「陰性的中率」と言います。この小集団での陰性的中率は、真の陰性である数が500×60%で300人、非感染者で正しく陰性とされる数が500×60%×99%で297人、感染者なのに陰性と診断されるのが500×40%×30%で60人であることから、297÷(297+60)で約83%となります。検査で陰性とされても100%-83%の計算で、約17%の人が本当は感染しているのですが、もともとの検査の対象集団が何らかの症状がある人か、濃厚接触者です。「検査で陰性と出たと言っても感染しているかもしれない」と考えられるので、感染源となる行動を控える理由になると思います。
数字が多くてわかりにくかったかもしれませんが、検査の精度を考え、陽性と出た人への処遇、すなわち自宅待機とか一時的な隔離所への移動、一般病棟もしくは高度医療機関へ入院という振り分け(トリアージ)を適切に行うことが混乱を招かないための一法であると思います。日本の現在のシステムが単に役所の機能不全なのか、統計的に正しい判断をして検査数を絞っているのかわかりません。しかし、収容できる場所の確保がない今、全例ではなくても出来る限りたくさん検査を試みるという間違いをしていないことは評価できます。

さて、コロナウィルス感染症は咳や発熱のほか肺炎が生じて命にも関わる疾患ですが、味覚障害や嗅覚障害という症状が最近報告されています。阪神の藤浪選手やJリーグの酒井選手もその症状を訴えたようです。一般的に風邪やインフルエンザ、花粉症でも鼻閉症状があると嗅覚が効かなくなり味覚も障害されるのですが、これがコロナウィルス特有の機序による症状なのかは今後の研究が待たれるところです。
眼科的には、コロナウィルスで結膜炎が起こると報告されています。結膜炎は、今の時期に多い花粉症などのアレルギー性結膜炎、細菌による細菌性結膜炎、「はやり目」といわれるアデノウィルスなどによるウィルス性結膜炎に分類されます。コロナウィルスによる結膜炎が、どのぐらいの頻度で起こるかはまだわかっていません。しかし、中国で肺炎の発症する数日前に結膜炎様症状を起こしていた症例があったことから、結膜を通して感染する(=経結膜感染)可能性が示唆され、医療者には保護眼鏡(ゴーグルなど)の装用が推奨されています。コロナウィルスに限らず、眼の結膜、鼻粘膜、口腔粘膜はウィルスの侵入経路として珍しくありません。ニュース映像でも見かけますが、医療現場で働くスタッフがゴーグルや透明なシールドで眼の保護をしているのはそのせいです。
結膜炎があるからといって、コロナウィルスに感染している可能性を強く心配するのは考えものですが、最近中国や欧米に滞在したことがある人、もしくは滞在していた人と濃厚接触する機会があった人で、花粉症もないのに充血やメヤニなどの結膜炎症状を自覚された場合は、眼科を受診する前に電話で来院についてご相談いただきたく思います。私はコロナウィルス結膜炎を診察した経験はありませんが、アデノウィルス結膜炎の写真を載せておきます。目に見えないウィルス相手のことです。結膜炎にも気をつけてください。