眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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眼の病気 No.e106

投稿日 2017年3月27日

今年も花粉症

院長 廣辻徳彦

 毎年、この時期は花粉症の話題が毎日取り上げられ、2月から天気予報でも花粉情報が放送されます。歳のせいか昨年が暑かったかどうかも忘れがちになりますが、夏が暑かった(日照時間の長かった)年にはスギの雄花が多く作られて翌年の花粉が増え、1月1日からの毎日の最高気温の積算値が一定値を超えると飛び出すと言われています。今年はお正月が暖かかったもののその後寒い日が続き、2月下旬になって飛び出したようです。毎年全国で定点観測をしている予報では昨年の3−4倍、平年よりも多い飛散になりそうだとのことです。これまでも平成23年と25年に花粉症についての記事を書いていますが、今回は治療薬について書いてみます。
 植物の花粉によって、「くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみ」などを生じる症候群を花粉症と言います。スギ、ヒノキ以外にも、ブタクサ、イネ科、ヨモギ、マツ、ハンノキ、シラカバ、ヤシャブシなど、様々な植物の花粉が原因になります。花粉が侵入し、それに含まれる抗原を取り込んだマクロファージという細胞が情報をリンパ球に伝え、リンパ球の中のB細胞が抗体(特にIgE抗体)を作り、IgE抗体が肥満細胞という細胞の表面に結合する反応が起こります。次に花粉の侵入があった際には、その抗原がIgE抗体に反応して肥満細胞がヒスタミン、ロイコトリエンなどの「ケミカルメディエーター(化学物質)」という物質を放出し、鼻水、くしゃみ、流涙などを引き起こして抗原(花粉)の排除に働きます(下図参照:シオノギ製薬HPから引用)。抗原の排除は正常な反応ですが、反応が過剰に起こりすぎるのが花粉症なのです。花粉は誰にでも同じように入ってきます。しかし、皆が花粉症になるわけではありません。遺伝要因の他、大気汚染やPM2.5や黄砂などの浮遊物質、舗装された路面で花粉が漂いやすいこと、ハウスダストなどのアレルギーといった環境要因も大きく関連していると考えられます。

今回はステロイドという薬ではなく、いわゆる「抗アレルギー薬」について簡単に説明します。
「ケミカルメディエーター」であるヒスタミンが血管や神経にある「H1受容体」というところに働くと、それぞれで「鼻づまり、鼻水、充血」や「痒み」が引き起こされます。そこで、花粉症の治療には、ヒスタミンの働きをブロックする(=抗ヒスタミン作用)薬が使われます。ヒスタミンの働きを抑えれば血管や神経への影響が減るので、抗ヒスタミン薬は速やかに症状を押さえることが期待できます。しかし、少し古い抗ヒスタミン薬(第一世代)は脳にも存在する「H1受容体」にも働くので、眠気を催す副作用を持ちます。現在主に使われている第二世代の抗ヒスタミン薬は、脳への働きが抑えられて眠気を感じにくくなっています(運転などには注意が要るものもあります)。第二世代の抗ヒスタミン薬が、一般的に「抗アレルギー薬」と分類されています。また、抗アレルギー薬には「ケミカルメディエーター」が肥満細胞から遊離されないようにする作用をもつもの(上図:❻のところを抑制)があります。「ケミカルメディエーター」が遊離されなければ、血管や神経が刺激されにくいという理屈です。この効果を期待するには1、2週間ほど前から薬を使用しておく必要があります。
 アレルギー用の点眼薬も、①抗ヒスタミン作用、②ケミカルメディエーター遊離抑制作用で分類できます。あえて商品名で書きますが、①はアレジオン、パタノール、ザジテン、リボスチン(リボスチン以外は②の作用も持ちます)、②はリザベン、ゼペリン、ペミラストン、インタール、エリックスなどです。抗ヒスタミン作用をもつ点眼薬は症状が出てからでもそれを抑える働きが期待でき、②の点眼薬は早目から点眼しておくのがよいと言えます。ただ、それぞれの点眼薬の効果は人によっても差があり、しみるという副作用を持つ点眼薬を痒いときに効果的だと感じる方もいるので、一概にどれが一番効くとはいい難いところです。点眼薬でも内服薬でも、花粉症に対して効果的に薬を使うには、花粉症の時期の少なくとも1週間前ぐらいから使用するのがよいでしょう。