手術室増設工事が終わりました
理事長 廣辻逸郎
白内障手術は新院長就任以来こだま病院の御好意で病院に出張して行っておりましたが今回自院で施術するよう手術室の増設工事を始めました。
手術室という特殊な工事ですから眼科手術室専門の業者に施行を依頼し、診療を休まずに、診療のない時間帯に工事をしてもらいました。大工・ガス・電気・設備等各パート専門の人達の手際と連携の良さの見事さは流石プロだと感心しました。
私が眼科教室に入局した頃とは今更比較することもありませんが、手術室の清潔さ(医学的に清潔ということは無菌的ということです)器械の精巧・鋭利さは驚異的です。東京某眼科の近視手術で多数の感染患者を発生させたという報道は信じられないことです。(消毒器の不備が原因とか)
昭和38年私が宝塚市で開業した時、外科医院は虫垂炎・ヘルニア・痔等の手術はされていました。逆に眼科医院で白内障手術は考えられませんでした。
今は逆に外科医院で手術はされませんが眼科医院で日帰り白内障手術をすることは珍しくなくなりました。
前にも申しましたが、眼科疾患の内容が変わっております。国民病と言われたトラコーマはもう見ません。従ってトラコーマによって起こってくる逆まつ毛・瞼内反症・涙目も減っておりますし、生活環境や栄養改善で急性細菌性結膜炎や黒目にいわゆるホシが入る角膜浸潤・角膜実質炎等見られませんが、高齢化によって、白内障。糖尿性や高血圧性眼底さらに網膜黄斑変性症・緑内障が増加しております。手のつけようのなかった網膜黄斑変性症も早期発見で多少は視力の改善が期待できるようになりました。白内障は手術術式と眼内レンズの進歩改善で、殆ど安全確実に視力の回復が出来て、車の運転読書が可能になって余生を楽しむ事が出来るようになった時代です。
視力が悪いために転んで怪我をしたり、骨折して歩けなくなってはつまりません。また新聞も読まず、読書も避けて生活意欲を失い、痴呆になっては何のための長命かわかりません。政治経済暗いニュースが多いこの頃ですが、心身共に健康で視力を保持したそれこそ明るい毎日を送りましょう。
健康とは! 眼は身体の窓
某休日朝50歳男性から排便中から何か右眼がチラチラするようで違和感がある、見にくいところがあるようだがどうでしょうかと電話がありました。網膜剥離などあっては大変と即刻来院してもらいました。
両眼とも視力は1.2ありますし、眼圧は右が少し高めでした。瞳孔を開いて眼底を精査しましたが、視神経も正常。網膜も全く異常ありませんでした。閃輝性暗点といって、脳血管の一時的攣縮で見え方に異常を覚えることもあるので、様子を見ましょうと一応帰宅してもらいました。翌日まだ違和感が残っているとのことで、昨日は検査で散瞳していて出来なかった視野検査をしましたところ、右同側上1/4盲と言って両眼の右側視野1/4が欠損しているのが分かりました。早々に脳外科に紹介して診てもらったところ、左後頭部に小さな梗塞が見つかりました。
眼球は脳に直桔しております。眼科の検査で今回のように脳の異常を発見することは決して稀ではありません。高血圧症や糖尿病のとき眼科で眼底検査を受けることは常識になりました。眼底出血から白血病など血液疾患を見つけることもあります。バセドー氏病など内分泌疾患や色んな全身病と眼は関係しております。
眼は心の窓といいますが、心・精神の状態だけでなく、体全身状態の窓口にもなっています。
今回は私達眼科医が単に眼球だけでなく全身も絶えず観察していることをお話ししました。