眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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眼の病気 No.e205

投稿日 2025年6月5日

涙道の病気

院長 廣辻徳彦

涙は眼球や結膜を保護する大事な液体です。眼に潤いと栄養を与え、異物があれば洗いい流し、殺菌作用のあるリゾチームという酵素の力などで細菌の感染を防ぐ働きもしてくれます。眼球の上外方にある涙腺で分泌され、眼瞼(まぶた)の内方に位置する上下の涙点から流れて行き、上下の涙小管から涙嚢、鼻涙管を経過して鼻腔内へと排出されます。過去にも書いた項目ですが、今回は涙道の病気について再度まとめてみました。

1 先天性鼻涙管閉塞

生まれつき鼻涙管の末端に近いところに薄い膜のようなものが残り、鼻涙管が開通していない状態で生まれてくる場合に生じます。先天性鼻涙管閉塞といい、涙が鼻へと流れず涙嚢にたまってしまうので常に涙目のように見えてしまいます。涙の流れが悪くなるので涙嚢で細菌感染を起こしやすく、炎症を起こして「新生児涙嚢炎」が生じることがあります。新生児涙嚢炎が起こると、眼が潤むだけなく眼脂がたくさんでる状態になり、目頭のやや下方の涙嚢の部分が腫れることもあります。眼脂が多い場合は抗生物質の目薬を使用し、涙嚢マッサージで膿の排出を促します。小児の先天性鼻涙管閉塞は生後1年以内で90%が自然治癒するのですが、改善しない場合は生後6ヶ月以降に先端の丸い針金状の器具を鼻涙管に差し込んで、膜を突き破る「ブジー」という方法を試してみることがあります。1度試みて通過しない場合は何回も行わず、2−3歳ぐらいまで待って手術療法を行うとされています。

2 後天性涙道閉塞

生まれつきではなく、多くは加齢に伴って生じる涙道の閉塞です。閉塞している部位によって、涙点閉塞、涙小管閉塞、鼻涙管閉塞などに分けられます。いずれの場合も閉塞している状態を薬で完治することは難しく、根治するには手術しかありません。閉塞している部分が涙点であれば切開、それ以外はブジーなどで開放し、シリコンでできた涙管チューブを留置して再閉塞を予防する(ピアスの穴を維持するような方法)手術を行います。涙管チューブを抜いたあと、再閉塞を起こしてしまう場合は再手術を行うケースもあります。 開通できなかったり、手術自体は問題なくても再閉塞を繰り返したりする場合は、鼻涙管以外の場所にバイパスをつくる手術(涙嚢鼻腔吻合術)を検討します。

3 涙道感染症

涙道の通りが悪くなって涙道内で細菌が感染しまうと涙道感染症が生じます。涙小管の感染を涙小管炎、鼻涙管閉塞が原因で涙嚢に感染が起こると涙嚢炎といいます。涙小管炎では抗菌薬の点眼を続けても眼脂が治らないこともしばしばです。涙小管内に石のように菌の塊が溜まっていることがあるので、手術的に菌塊を除去し涙管チューブを挿入します。涙嚢炎には急に炎症を起こして目頭が腫れて痛みを伴う「急性涙嚢炎」と、痛みや腫れはないものの眼脂が出て、目頭を押さえると膿のようなものが逆流してくる「慢性涙嚢炎」があります。急性涙嚢炎は、抗生剤の全身投与で炎症を緩和させてから涙嚢鼻腔吻合術の計画を立てます。慢性涙嚢炎に対しては、通常の鼻涙管閉塞と同じように涙道内視鏡手術や涙嚢鼻腔吻合術を行います。

4 抗がん剤の影響

抗がん剤の内服薬である「TS-1」の副作用で、「角膜の障害」と「涙道粘膜が障害されて涙道閉塞が起こってしまう」ことが報告されています。涙液内にこの薬の成分が出てくることで副作用が生じるので、人工涙液などを点眼して涙液ないの薬の濃度を下げるようにするのですが、涙道閉塞を起こしてしまった場合は何らかの手術が必要になります。TS-1を服用されている方は自覚症状がなくても眼科受診をすることが推奨されています。

5 外傷による涙道障害

外傷によって目頭に傷ができて涙道が裂けることがあります(涙小管断裂)。眼瞼を縫合するだけでは裂けた涙小管まで整復できないので、涙小管の断端を見つけて涙管チューブを挿入した上で涙小管を縫合する涙小管再建術が必要になります。 涙道の専門医が対応できる施設で、できるだけ早く手術を行います。
 眼球自体の病気ではありませんが、涙道はたいせつな器官です。気になる場合はご相談ください。