新年度の始まり
院長 廣辻徳彦
たった1ヶ月しかない平成31年度が始まります。今回から、クリニックで配布しているマンスリーを横書きで印刷します。同じ文章をホームページに載せる時に横書きにしているので、漢数字が読みにくいとご指摘をいただいたことも一因です。縦書きに馴染んでいた皆様には申し訳ありませんが、ご了承ください。
新年度の4月は桜の季節であり、新入学、新生活も始まる時期です。暖かくなる季節と新しい環境での暮らしなど、期待感でワクワクする気がします。ところで、4月からの年度始まりというのは世界的にも日本だけのようです。欧米では多くが秋の9月か10月、南米では夏から秋に当たる1月から3月に新年度が始まります。調べてみると、日本の学校も元々は明治時代に欧米の文化を取り入れ、大正の頃まで9月から始まる制度だったのですが、政府の会計年度が4月から3月までであったことと軍隊への入隊が4月だったことに揃えられ、4月の年度始まりになったようです。数年前、東京大学を中心として「秋入学」に変更するための準備を始めるというニュースがありました。欧米の大学や研究機関に年度始まりを合わせると、留学などの人的交流も行いやすいからというのが理由だったように思います。結局、今のところ入学時期は変わらず、3月半ばになると週刊誌に「東大・京大入学者数高校ランキング」などという記事が出ているのも例年通りです。さすがの東大でも、単独で年度の習慣を変えることはできなかったようです。
年度の変わる頃は、眼科ではスギとヒノキの花粉症の患者さんが増えます。今年は花粉量が多かったのか、眼症状の強い患者さんが多いように思います。ヒノキ花粉は4月に多いので、まだ油断ができません。また、新年度に合わせてコンタクトレンズを始める子供さんが多くなります。視野が広く、スポーツがしやすいなど以外に、「メガネが嫌」、「見た目がいい」という理由もあるようです。大事な目にトラブルを起こさないために、初めての時からしっかり管理する習慣をつけてもらいたいと思います。
マンスリーはこの158号が平成最後ということになります。元号が変わると言っても、表題の「平成31年」が「〇〇1年」に変わるだけで、中身は変わりません。私は皇太子殿下より2歳若いのですが、さらに次の元号のマンスリーがどうなるのか、それはさすがにわからないところです。
健康とは!
健康に大事なことはたくさんありますが、健康のために避けておくべきものもたくさんあります。このうち、特に大きな問題となるのはタバコと酒です。1回きりの話で終われないのはわかっているのですが、年度始まりというちょうどよい機会に、まずは「タバコ」について書いてみたいと思います。
昔の映画やテレビでは、主人公が「格好良く」タバコを吸っている場面がよく写ったものです。古い例えですが、ハンフリーボガードさんや丹波哲郎さん、先日亡くなられた萩原健一さんの喫煙シーンも何の疑問もなく受け入れられていました。しかし、タバコの健康被害が認識されるようになって以来、特に欧米ではタバコ会社が広告をすることにも規制がかかるようになっています。日本でも人気のある自動車レースの「F1」で、車に描かれていた「Marlboro」というロゴもタバコ会社の広告でした。広告規制が厳しくなって以降、ほとんどのタバコ会社が「F1」のスポンサーから撤退しています。アメリカでは、主要局のテレビ放送でドラマの中での喫煙シーンすら放送されない傾向で、特に子供向けのプログラムでは強く制限されています。「ワンピース」という日本のアニメで登場人物が喫煙している場面は、アメリカで放映される時にはタバコや葉巻が消されていたり、飴を舐めていたりするように修正されています。大河ドラマの「いだてん」で喫煙シーンが放映されたことに抗議の声が上がったのは、日本でもそのような風潮になっていることの現れかと思われます。タバコの箱には、警告文を表示することが義務付けられています。30年前までは「健康のため吸いすぎに注意しましょう」だったものが、「喫煙は、あなたにとって肺がんの原因の一つとなります。(以下略)」と「妊娠中の喫煙は、胎児の発育障害や早産の原因の一つとなります。(以下略)」という2種類の文章を書かなければいけなくなっています。それでも警告文としては不十分で、欧米のように「喫煙は死をもたらします」などの強い表現にするべきだと要求されています。タバコが体に悪いことはわかっていてもやめられない、すなわち「喫煙=ニコチン中毒」なのですが、次回はもう少しそのことを考えてみましょう。