眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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広辻眼科マンスリー 第m159

投稿日 2019年5月7日

令和元年

院長 廣辻徳彦

すでに何日かは経過しましたが、新元号の始まりです。「令和」と書かれた額を菅官房長官が誇らしげに、嬉しそうに掲げている姿を、多くの人が街頭の中継で見たりスマホで撮影したりするニュースから1ヶ月過ぎました。あの有名な万葉集の中の言葉から選ばれた元号で、万葉集巻五の「梅花謌卅二首并序(梅花の歌 三十二首、并せて序)」にある一文、「于時初春令月 氣淑風和(時に初春の令月にして、気淑(よ)く風和(やわら)らぎ)」が典拠となっています。これまで四書・五経などの漢書に由来していたものが、今回初めて国書から選定された元号になります。そもそも万葉集は7世紀後半から8世紀後半に編纂された、約4,500首からなる現存する日本最古の和歌集です。序文や和歌などはすべて万葉仮名を含む漢字で記されているので、原本を読めと言われて読める現代人はほぼいないでしょう。中国から伝来した漢字がこの序文のように漢詩として、また、ひらがなの読み方の当て字(いわゆる万葉仮名)として使われ、いわば中国と日本の文化のつなぎ目、あるいは架け橋的な書物でもあるように感じます。今後も元号が日本の古典から選ばれる可能性はありますが、その意味でも万葉集は嚆矢として適当だったと思います。
当初、「令が命令に使われる字なので、命令による平和とはけしからん」だとか、「令は中国語で零と同じ読みなので平和がゼロという意味になる」とかいう声も聞かれました。元号そのものに反対するのも理解できないことはありませんし、「西暦に統一すれば世界標準の時系列の中で考えることができて便利、元号は不要である」という理屈もわかります。けれども、今や世界中で「元号」という単位で時間を感じることのできる国は日本だけです。元号も日本の文化も大本は中国にあるのでしょうが、海で隔てられて千何百年も経つ間にそれぞれが独自の文化を育ててきたのです。4月1日の午前11時30分に、なんとも言えない気持ちで新元号の発表を待っていた国民の多くは、少しの不便さは理解していても元号には肯定的なのであろうと思います。いつの日か元号不要論が多数派になっていく時が来るかもしれません。けれども、「令和」という名前で表されるようになるこれからの時間は、間違いなくワクワク感とともに始まったと思います。令和が私たちにとって良い時代になることを願ってやみません。

健康とは!(タバコの健康被害)

タバコの健康被害についてはたくさんの研究があり、タバコの煙によって様々な病気が引き起こされていることがわかっています。健康リスクを全く気にせず喫煙している人もいれば、そういった知識はあるもののなかなかタバコをやめられない人もいます。今回は国立循環器病センターのHPから数字を引用させていただき、健康リスクについて考えます。
よくタバコが引き起こす病気は、がんや脳血管疾患(脳梗塞や脳出血、くも膜下出血など)、虚血性心疾患(心筋梗塞や狭心症など)や肺気腫などと言われていますが、どの病気も非喫煙者にも起こるもので、タバコだけが病気の原因ではありません。しかしながら、喫煙者と非喫煙者のグループ分けをして病気が起こる割合を調査すると、間違いなく喫煙者に病気の発症リスクが高いことがわかっています。非喫煙者に比べて虚血性心疾患死亡リスクは1日1箱吸う人で1.8倍、2箱の人は約2.1倍高まり、脳卒中リスクは男女差、年齢差はあるものの約1.4-1.8倍高くなります。がんの死亡率はその発生部位によっても異なりますが、喉頭がん32.5倍、肺がん4.5倍、肝臓がん3.1倍、口腔・咽頭がん3.0倍、食道がん2.2倍、膀胱がんとすい臓がん1.6倍などと、明らかに高リスクです。がんではなくても呼吸器疾患の肺気腫(肺で酸素の交換を行う肺胞が障害され呼吸が苦しくなってしまう病気)に代表される慢性閉塞性肺疾患(COPD)の多くが喫煙者であると言われています。
自分のことは仕方がないとしても、たばこの煙は周囲にも影響します。身近に喫煙者がいると、特に親が喫煙している家庭では、子供も喫煙へのハードルが低なりがちで常習化する確率も高まります。年齢が低い時期から喫煙すると病気へのリスクは当然高まります。妻が非喫煙者であったとしても、夫が喫煙者であるかどうかで肺がんのリスクが1.9倍高まります。自身の健康だけでなく家族や他人への影響があるとすれば、現在世界的に「禁煙」モードとなっていて、「どうしても吸いたいなら、オープンスペースでの喫煙は遠慮してください」という流れになっているのは当然のことと言えます。