老人月間
理事長 廣辻逸郎
9月は老人月間で、この間に検診を受けたり、また老人問題を考えましょうと政府が旗振りをしました。
宝塚市でも市が主催し、宝塚市医師会会員が全員参加して小学校校舎で一般検査から眼底検査まで無料検診を行ったことがあります。市立健康センターが出来て年間利用でき、基本検診及び内科医の紹介で眼底検査も年間何時でも基本料金千円で受診出来るようになりました。
しかし日本経済の悪化を理由に、老人の優遇施策はどんどん低下して、税金も老人控除をはずし、扶養控除も撤廃。年金の減額、健康保険料の値上げと、負担率も一割が二割三割と二倍三倍になって負担増だけ残っております。更に老人の療養ベットの削減で、否応なく自宅療養を余儀なくされてきました。
国民の支持率の高い小泉政権下でどんどん行われ、自分を選んだんだから文句があるかと首相は開き直っております。次の自民党総理大臣はどんな施策を出されましょう。
孝行をしたい時には親がなく
昔こんな川柳がありました。今は
孝行をしたくないのに親がいて
の時代になったようです。
マンスリーも硬い話題ばかり続くので明るい話題をと考えておりましたが、新聞・テレビ暗い事件が続きます。
親を殺したり、逆に母親が幼児を殺害したり、また学校の研究室で女子学生が殺害されたり。うるはしい日本は一体何処へ行ってしまったのでしょうか。
敬老という言葉が死語にならずに自然と態度に現される世の中を願っております。
健康とは! 目を使っていいですか?
診察しておりますと、患者さんからテレビを見ていいですか?本を読んでいいですか?目を使うから白内障になるのですか?と質問される事があります。
言うまでもありませんが、眼は物を見るための器官です。常識の範囲内での読書・テレビ鑑賞で白内障になったり、目の病気になることはありません。
ただ長時間の近見作業、悪環境下での作業は疲れ、眼精疲労の原因になります。最近は長時間パソコンを使う仕事が増えておりますし、受験勉強で視力の低下する事はあります。
乳児の目に眼帯を1週間するだけで弱視になります。乳児でなくても、角膜に病気を起こして、角膜表面に濁りを残しますと、数年後強い近視になっていることがあります。
一眼だけの近視で、他眼の視力がいい時、生活に不自由ないからとそのまま放置しますと、近視眼がどんどん悪化します。近視が進みます。眼鏡或いはコンタクトレンズの使用で左右差をなくすと近視の進行を止める事が出来ます。
人間の体は使うこと、訓練する事で、鍛えられ逞しくなります。戦前の話ですが,水兵が魚雷の襲撃を避けるために海上の魚雷の航跡を監視する訓練を積んでいると視力が2.0以上に向上したと聞きます。頭を使いすぎたから呆けるのではなく、使わなくなったから呆けるのです。頭を使って仕事する人、ものを創る人―音楽・文芸・農作業でもーはぼけません。
白内障が進むと読書も近見作業も困難になります。現在の白内障手術は大変進歩しています。
ある程度進行したら躊躇せず手術を受けて余生を楽しみましょう。
眼底疾患の色々を供覧説明します
トキソプラスマ性脈絡網膜炎
動物の寄生虫トキソプラスマが人間に感染して起こります。両眼の黄斑部視力に一番影響するところに病気が起こります。母体から胎児に感染することがあります。
犬・猫等ペットの飼育を注意しましょう
網膜剥離
眼球打撲で起こることもありますが、外傷でなく突然起こって視力・視野障害を来たします。剥離を起こす前に目の前に虫が飛ぶ(飛蚊症)ことが多いから、飛蚊症を自覚したら必ず眼科受診しましょう。最近は手術で回復する事が多くなりました。
中心性網脈絡症
壮年期によく見られましたが、最近はこの患者さんが少なくなった感じです。予後は良好です。
以前結核との関係をいわれ又ストレス説もありました。中心に浮腫が起こり、線が曲って見えます。
網膜静脈血栓症
動脈硬化が主因です。突然出血して視力が落ちます。
しかし、出血の部位によって視力障害も色々です。
以前はレーザー治療をしましたが、最近は自然吸収を待つか、硝子体手術を行います。
網膜色素変性症
眼科で一番よく見られる特定疾患で、遺伝のものもそうでないのもあります。早いと中学生でも発病します。
暗がりで見にくい(夜盲)で氣付くこともあります。視力視野が徐々に悪くなり残念ながら的確な治療法がありません。
網膜下出血
原因不明で、高血圧・動脈硬化が考えられます。
最近問題の加令性黄斑変性症もこのような出血が初発のことがあります。検査機器、手術手技も進歩して今まで失明していたのも視力が回復する事が多く見られる様になって嬉しい事です。