近視、老眼って?(屈折異常と調節異常) その1
院長 廣辻徳彦
4月から新学期が始まり、学校では身体検査が行われています。クリニックにも視力再検査のために生徒さんが受診されています。ほとんどが近視や乱視によるものですが、遠視の場合もあります。また、学校健診とは別に、40歳を過ぎて近くが見えにくいという症状で受診される方もいらっしゃいます。よく近視(近眼)とか老眼という言葉はよく耳にしますが、そもそもどのような状態なのでしょう。今回からそれについてのお話をしようと思っていますが、まずいくつか問題を出します。○×でチェックしてみてください(答えは一番下にあります)。
・近視の人は老眼になりにくい
・遠視とは、遠くがよく見えて近くが見えない状態だ
・老眼になると、遠くの見え方も悪くなる
・遠視と老眼は実はほとんど同じことである
・メガネをかけると近視が進む
・老眼もメガネをかけるとより早く進む
一概に○×では答えにくいこともありますが、いかがでしょう。これからこの問題の答えになることも含めてお話を進めましょう。
ときどき、「私は遠くがよく見える遠視なのでいい目です」とおっしゃる方がいらっしゃいます。それでは、「いい目」とはどのような眼なのでしょう。カメラを思い出してください。カメラで遠くと近くを写す場合、上等なカメラならレンズを回してピントを合わせます。いわゆる全自動カメラでは、オートフォーカスというピント合わせ機能が付いています。遠くと近くを写す場合、カメラではピント合わせが不可欠ということです。私たちの眼もカメラと同じで、遠くのものを見ているピントの状態では近くを見られません。カメラと違うところは、意識しないままで自動にピント合わせができるということです。
カメラにはレンズがあり、フィルムにピントを合わせて写真をとります(最近はデジタルカメラなのでフィルムがありませんが)。眼の中には角膜と水晶体という2枚のレンズがあり、フィルムに相当するのは網膜というところです。正常な眼では、自然な状態で遠くから入ってくる光のピントが、角膜と水晶体(レンズ)を通って網膜(フィルム)にちょうど合います(→図1)。この状態だと物がはっきり見え、このような眼を「正視」といいます。これがいわゆる「いい目」なのです。
それではこの「正視」の眼では、どのような仕組みで近くを見ているのでしょう。近くのものを見るときに、遠くのものを見ている時と同じレンズの状態であれば、ピントがうしろにずれてしまいます(→図2)。網膜上の像にずれが生じると、そのずれを受け取った脳からピント修正の指令が出ます。この指令によって水晶体の分厚さが変化し、近くにピントを合わせるようになるのです(→図3)。この働きを「調節」といいます。若いうちには調節をする能力(=調節力)が十分にあるのですが、40代の半ばになるとこの力が落ちてきます。その結果近くのものが見にくくなってしまします。この調節力の低下を老視(=老眼)というのです。次回からは近視や遠視について詳しく説明します。
図3では図1、2より水晶体が分厚くなりピントをずらしている。
(・・・・上記の設問の答えはすべて「×」です)