眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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眼の病気 No.e89

投稿日 2015年10月5日

老眼と付き合う(その1)

院長 廣辻徳彦

40歳を幾つか過ぎてくると、手元の文字が見えにくくなってきます。いわゆる「老眼」の始まりです。先日、同じような年齢の友人で集まって食事をした際に、老眼鏡をかけないとメニューが見えないという友人が数名いました。「老眼」という用語は正しくは「老視」なのですが、ここではわかりやすく「老眼」と書くことにします。「老眼」と「遠視」を混同し、誤解されていることがよくありますが、「遠視」は「近視」や「乱視」とともに「屈折異常」というもので、遠くにピントが合わなくなっている状態です。近くにピントを合わせる機能は「調節」といいます。眼の中にあるレンズ(水晶体)を分厚くして近くにピントを合わせる働きですが、加齢とともに水晶体が固くなってくるので、近くにピントが合わせられなくなってしまいます。老眼は、近くが見えにくい、近くから遠くに視線を移した時にピントがすぐに合わないという症状などで気づきます。(「近視」などの「屈折異常」や「老眼」については、以前に、目の病気:No.18-20でご紹介しています。)
さて、ピントを合わせる力(=調節力)は下図のように、加齢に伴って減じていきます。

調節力が10Dとか2Dとかいうのは、それぞれ眼の前10cm、50cmまでピントを合わせられる力があるということです(100cm÷Dで計算できます)。図を見てみると、例えば赤の丸印のところで、50歳では2Dの調節力があるとわかります。これは、50cmまではピントを合わせられますが、それより手前のものにはピントを合わせにくいということを意味します。読書は大体3-40cmぐらいでの仕事なので、40歳半ばで読書がしにくくなり始めるという関係がわかると思います。(図はメニコン社のHP より引用。)
注意が必要なのは、「近視」や「遠視」、「乱視」などの屈折異常がある場合です。どのような屈折異常がある場合でも、「調節力が衰えてくる年齢=老眼が始まる年齢」に差はありません。しかし、例えば「遠視」の場合は、調節力の低下とともに遠くのピントが合わなくなるようになります。手元はさらに見えにくくなるので、老眼鏡が早めに必要になります。「近視」の場合には、遠くを見るのにもともと眼鏡が必要ですが、手元にはピントが合う状態なので、遠く用の眼鏡さえ外せば老眼鏡なしでも手元が見えます。「近視」の方は、「老眼」にはなっていても、老眼鏡を使う必要がないこともあるのです。「老眼鏡を使いだすこと=老眼の始まり」という誤った認識をされていることがあるので、「遠視の人は老眼が早い」とか「近視の人は老眼になりにくい」という誤解を招くことがあるようです(もちろん調節力が衰える年齢にも、「個人差」は存在します)。「老眼鏡を早く使い出すと、それに頼るので老眼が早く進む」ということを聞くこともあります。これも大きな間違いです。ピント合わせに働く筋肉は毛様体筋というもので、これは内臓の筋肉と同じ平滑筋という種類の筋肉です。腕や足の横紋筋という筋肉とは違い、鍛えられるものではありません。老眼鏡をかけずに頑張ることには、自己満足以外の意味はありません。
では、老眼鏡はどう選べばいいのでしょう。なかなか一言では説明できませんが、今まで眼鏡をかけている、コンタクトで使用している、裸眼で生活している、左右の視力が違う(屈折状態が違う)など、それまでの状態の差で必要な矯正手段も異なってきます。また、必要の有無はともかく、「眼鏡をかけるのが嫌だ」という方もいらっしゃいます。全ての対策を書くことはできませんが、できるだけケースに分けて考えてみたいと思います。
まずは、「もともと視力の良い場合」です。ほとんど屈折異常のない方がこれに当てはまります。遠くがよく見えるので、単焦点の「老眼鏡」を作って随時使用する、または遠近両用の眼鏡を使用することになります。遠近両用にも、境目のない累進多焦点レンズ、二重(三重)焦点レンズという種類があります(下図参照)。単焦点レンズと遠近両用レンズにはそれぞれに利点、欠点があります。次回はそれぞれの特徴や、使用時の注意などについてと、もともと近視があるような方の老眼鏡の使い方について書いてみます(下図は日本眼科医会HPより引用)。

緑内障の進行具合と視野の関係図