眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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眼の病気 No.e90

投稿日 2015年11月4日

老眼と付き合う(その2)

院長 廣辻徳彦

前回は、40歳半ばになってくると老眼になってしまうというお話を書きました。もともと遠くがよく見えている方は、単焦点の「老眼鏡」を作って随時使用する、または遠近両用の眼鏡を使用することになります。単焦点の老眼鏡は手元を見る場合、もっともよく、しかも楽に見えるというメリットがあります。その反面、掛けたままではテレビや時計の文字が見えないというデメリットがあります。遠近両用眼鏡は、掛けたままで両方とも見えることがメリットです。しかし、遠くが見えるのはレンズの上半分、近くは下半分なので、そこで見て初めてピントが合うことを意識して使わなければなりません。また、境目のない累進多焦点レンズでは境目のところでは像がひずんでしまいますし、二重(三重)焦点レンズでは境目のところで急にピントが変わります。初めのうちは階段やエスカレーターを降りるときなどに浮き上がって見えてしまうこともあるので、掛けて慣れることが大事です。

近視の方はもともと眼鏡を掛けていることが多く、遠近両用眼鏡への移行は上記の注意点を意識すれば比較的なじみやすいと思われます。しかし、遠視の方の場合は若いころはよかった遠くの視力も老眼の進行とともに低下してきます。眼鏡をかけることへの抵抗感が強い傾向にあるのは理解できるところですが、遠視の矯正を含めて早めに眼鏡を掛け始めるのが疲れ目などを引き起こさないためにもよいと思います。
コンタクトレンズを使用している場合を考えてみます。日本では、1500万人以上の人がコンタクトレンズを使用しています。コンタクトを使用している方でも、老眼が始まれば単焦点の老眼鏡を随時使用するというのが最も簡単な方法です。とは言っても、コンタクトレンズを使用している方には、「できれば眼鏡をかけたくない」という気持ちがあるのが当然です。この場合は、遠近両用のコンタクトレンズが選択肢に挙がってきます。

緑内障の進行具合と視野の関係図

遠近両用コンタクトのデザインは、左図のように中央部から周辺部にかけて度数が変わるようになっています。ハードコンタクトでは中央部から順に「遠用」、「中間用」、「近用」となり、ソフトレンズではその逆に「近用」、「中間用」、「遠用」となっていることが多いようです(ソフトレンズではメーカーによってはハードと同じ順になっていることもあり様々です)。
遠近両用ハードレンズは、普通のハードレンズよりサイズ(直径)がやや大きめで、視線を下げて手元を見る構造になっています。遠近両用ソフトレンズは普通のものと同じように使用できます。使い慣れれば、老眼鏡をかけなくても生活できる便利なアイテムといえます。強いて遠近両用コンタクトの欠点を上げるなら、わずかに「視力の質が落ちる」ということです。細かな字や夜の街灯の光が少しだけにじんで見えます。これは、コントラストが悪くなる(特に加入度数=老眼の度が進むほど)という現象で、構造上どうしても避けられません。眼鏡をかける鬱陶しさに比べればほとんど気にならないという方がほとんどですが、夜間や雨の日の運転では注意が必要なこともあります。
もう一つ、「モノビジョン」という方法があります。片方の目は遠くに、片方の目は近くにピントが合うようなコンタクトを使用し、遠近を片方ずつで見るという方法です。できるだけ眼鏡をかけずに、しかも遠近両用コンタクトのような特殊なものを使わずにすめばうれしいという方には試してみる価値はあります。しかし、慣れるのに1~3ヶ月ぐらいはかかる、両眼で物が見ないのでバランスが悪く、見え方に慣れずに疲れやすくなってしまうという場合もあり、車の運転にも多少影響します。遠近両用のコンタクトの使い勝手が悪い、どうしても眼鏡は掛けたくないという方はトライしてみてもよいかもしれません。ちなみにこの方法は、眼鏡では左右のバランスが悪くなってしまうので不可能です。
今回は、「モノビジョンレーシック」や「アキュフォーカスリング」というような、外科的、もしくは商業的な方法はご紹介しません。繰り返しになりますが、老眼は年齢とともに必ず生じてきます。個人差やもともとの屈折誤差もありますし、多少見えにくくても気にならない方、少しのピンボケも気になる方で感じ方も変わります。困っていない方に無理強いするつもりはありませんが、見えにくさに気がついていない、もしくは我慢している場合には、もっと楽に過ごせる老眼鏡やコンタクトを用いて、老眼とうまくつき合っていくことをお勧めします。