眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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眼の病気 No.e79

投稿日 2014年12月1日

うさぎの眼は赤い?

院長 廣辻徳彦

先日の連休に、制作からおよそ800年ぶりに修理されたという「鳥獣戯画」を見に京都国立博物館に行ってきました。朝9時半からの開館を9時からに早めているにもかかわらず、土日には3-4時間待ちのこともあったと聞いていましたので、公開最終日の休日早起きし、博物館には8時15分到着しました。すでに数百人(!)の行列ができていましたが、8時半に開館するという大サービスのおかげで、あまり並ばずに入場でき、お目当ての鳥獣戯画を十分に堪能(もちろん他にもたくさんの国宝、重文もありましたが)させていただきました。その後、紅葉が盛りだった東福寺に足をのばし、京都の秋を楽しみました。下図は鳥獣戯画でも有名な、うさぎと蛙の相撲です。

うさぎと蛙の相撲

紅葉はもちろん、うさぎの眼も赤いという印象があります。しかし、野ウサギなどの眼は多くが黒か茶色です。目が赤いのは白色のウサギの中でいわゆる「アルビノ」と呼ばれるメラニン色素のない種類に限られます。虹彩に色素がないために、網膜からの光の反射で目が全体に赤く見えるという仕組みです。通常の眼であれば、写真を撮るとき瞳の中だけフラッシュの反射で、赤目になってしまうのと同じ現象で、瞳だけでなく目全体が赤く見えるのです。
今回は、この虹彩について改めて書いてみます。これまでにも書いたことがありますが、虹彩というのは眼球の中で角膜と水晶体の間に位置し、中央部に空いている円形の瞳孔(どうこう:ひとみ)から眼内に光を取り入れます。瞳孔は光の量によって自動的に大きさが変わり、明るいところでは小さく、暗いところでは大きくなって光量を調節します。カメラでいうところの「しぼり」の働きをしています。虹彩をよく見ると、細かな模様が見えます。これを「虹彩紋理(こうさいもんり)」と言いますが、このパターンは個人個人で異なります。スマートフォンでも指紋認証が普及していますが、虹彩認証の方がはるかに高い精度なので、これを読み取って個人認証をするシステムも開発されています。解剖学的には、虹彩は毛様体、脈絡膜という組織と連続しています。毛様体は眼の中の栄養分となる「房水」という液を産生し、水晶体の分厚さを加減してピントを合わせる調節という機能に関係しています。脈絡膜は血管が豊富で網膜に栄養を与えたり、免疫に関連した働きをしたりします。これらの組織にはメラニン色素が豊富に含まれており、眼の中を暗室化するのに役立っています。昔のカメラはフィルムの入れ替えが必要でしたが、裏ぶたを開けた時に内部が真っ黒だったのと同じ仕組みです。虹彩、毛様体、脈絡膜を合わせて、「ぶどう膜」と呼ぶのは、これらの色、形、大きさがぶどうに似ているためと言われています。
虹彩の病気で、頻度も高く注意を要するのは虹彩炎です。虹彩は先に述べたようにぶどう膜の一部でもありますから、虹彩単独で生じたものを虹彩炎、全体に生じるとぶどう膜炎と言います。過去記事(No.22)にも書いたので、今回は簡単にしますが、ベーチェット病、サルコイドーシス、原田病というのが3大ぶどう膜炎と言われる代表的な病気で、他には膠原(こうげん)病、関節炎、腸の病気、皮膚病、脳神経疾患、耳鼻科疾患、糖尿病、血液疾患や悪性腫瘍などが原因であったり、ウイルスなどの病原体の感染が原因であったりもします。3割程度は原因がわからない場合もあります。今回はウサギの目から話を始めましたので、人にも生じる「白子症:アルビノ」など、虹彩の形状に異常が生じる場合をご紹介します。①は白子症の虹彩で、色素減少のせいで色が薄くなっています。色素が少ないせいでまぶしさに敏感で、視力低下や眼振を伴うこともあります。②は外傷による虹彩根部離断(虹彩の付け根のところでの裂傷)、③は虹彩炎のせいで虹彩と水晶体が癒着してしまった虹彩後癒着、④は先天梅毒という病気で虹彩萎縮が生じた眼に白内障手術をした後の写真です(瞳孔が正円形でないのは手術のためです)。

虹彩の形状に異常が生じる場合

今年も残すところあとわずかになりました。みなさま良いお年をお迎えください。