眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療社団法人 広辻眼科

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眼の病気 No.e71

投稿日 2014年4月1日

中心性漿液性脈絡網膜症

院長 廣辻徳彦

マンスリーの1面にもあるように理事長が手術をしました。内視鏡検査で病気が見つかり、私の母校の大学病院への受診、入院と慌ただしく日々が過ぎました。腹腔鏡手術を施行していただいて、手術後8日目に退院し約1ヶ月、現在は体重が減ったもののそれなりに元気に過ごしています。実は、私の妻も内科医として働いていますが、昨年腹腔鏡の手術を受けています。全く別の部位の手術でしたが、手術後5日目に退院してちょうど1週間後から仕事を再開しました(本当はもっと長く入院して療養しなさいといわれていたのですが・・・)。身内が入院するのは久しぶりで、病気になれば治療は必要ですが、本人だけでなく回りの人間の日常生活にも影響があります。もちろん私も患者さんに治療や入院などを指示することがありますが、改めてこのようなことにも気を配らないといけないということを感じました。日頃健康に気をつけているつもりでも、いつ自分が病気になるかはわかりません。まさかのときに自分でどうするかも考えておくべきかとも思いました。また、眼科の手術にも当てはまることですが、昔は大きな切開で手術をしていたものが、腹腔鏡など小さな切開から手術ができるようになりました。手術前後の身体へ与えるストレスも比べられないぐらいに小さく、社会復帰への時間が全く違います。器械の開発と技術の進歩は、間違いなく私たちに様々な恩恵を与えてくれています。
さて、今回は「「中心性漿液性脈絡網膜症」という病気についてです。実はこの病気も私の知り合いがこの病気の治療を受けることになっていて、それに新しい治療が応用されると耳にしたので、その治療をご紹介します。
「中心性漿液性脈絡網膜症」は働き盛りの年代(20-50歳ぐらい)に生じる病気です。男女で比べると男性に多く、網膜の中心部に当たる黄斑部に狭い範囲で網膜剥離が生じて「ものが歪んで見える」、「左右の眼で大きさが違って見える」、「中心部が暗くて見えにくい」などの症状を自覚します。網膜剥離は網膜の一番外側にある網膜色素上皮に異常が生じ、バリア機能が低下することによって網膜の外側にある脈絡膜というところから水分がしみだしてきて起こります。バリア機能の低下の原因は脈絡膜の循環障害などとも言われますが、よくわかっていません。

中心性漿液性脈絡網膜症

少しわかりにくいですが、眼底写真の矢印(→)で示しているところが円形に生じている網膜剥離です。右の白黒写真は蛍光眼底検査で左側写真の小さい点(⇒)の場所から水分が漏れていて、時間がたつと右側写真(⇒)のように漏れが多くなっていることがわかります。
多くの場合、自然の経過観察や循環改善剤、ビタミン剤、消炎剤などの内服を行うだけで、2、3ヶ月で治ってしまいます。暗い感じや歪みなどがわずかに残ることもあります。積極的な治療には漏出点にレーザーを行う方法があります。レーザーで凝固されたところの組織の修復機能が旺盛になり、漏出した水分が吸収されて回復が速まるという治療です。3ヶ月以上水分が吸収しない場合、病気が繰り返す場合、早期の治療を希望される場合などに行います。ただ、漏出点がわからない場合、あまりにも中心部(中心窩)に近い場合はレーザーのために視力も低下してしまうのでこの治療はできません。最近は「加齢黄斑変性」という病気に用いられている、「PDT(光線力学的療法)」を、この病気に応用するという報告が見られます。PDTについては以前に「加齢黄斑変性 その3」という記事にいていますが、ビスダインという薬を静脈注射し、出力の弱い特殊なレーザーを黄斑部に照射します。ビスダインという薬が悪い部分の血管に取り込まれるので、その血管だけを退治できるという仕組みです。「中新世漿液性脈絡網膜症」では、漏出点がわからなくても、また中心窩にあっても行うことができます。少しでも健常なところへの影響を避けるため、出力を弱くする、薬の量を減らすなどの工夫もされています。薬の影響で日光に当たると皮膚に軽いやけどのような症状が出ること以外に、この病気に使用する場合保険がきかないので約50万円の実費がかかるということが難点ですが、今まで治療しにくかった場所の漏出点に対しても、治療の選択肢として考える価値があると思われるものです。今後の報告に期待したいと思います。