眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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眼の病気 No.e52

投稿日 2012年5月1日

「眼瞼けいれん」と「顔面けいれん」

院長 廣辻徳彦

「まぶたがピクピクします」、と訴えて受診される患者さんがいらっしゃいます。この「ピクピク」、多くは「眼瞼ミオキニア」という聞き慣れない名前の状態です。健康な人でも、過労や睡眠不足のときに生じます。眼の周囲の一部の筋肉が、数秒から数分間わずかに小さく「けいれん」するように動きます。その動きは鏡で見えることもあるのですが、特に治療の必要はありません。生活習慣の改善だけでよくなることもあります。
治療が必要なのは「眼瞼けいれん」や「顔面けいれん(正しくは片側顔面けいれん)」という病気です。言葉の印象から、「眼瞼けいれん」は「ピクピク」する病気だと思われていることがあります。しかし、「ピクピク」するのは「片側顔面けいれん」で、「眼瞼けいれん」という病気は、あまり「ピクピク」することがありません。同じような名前なので混同してしまいそうですが、実は違う病気です。
「片側顔面けいれん」は、顔の表情を作る筋肉が自分の意志に関係なく「ピクピク」動く病気です。はじめは眼の周囲だけなのが、だんだん片側の顔全体の筋肉の引きつりとして現れてきます。この動きは、しゃべったり、笑ったり、口を動かしたりするときや、緊張するときに出やすいことがあり、耳鳴りを伴うこともあります。顔の表情を作る表情筋を動かす顔面神経が、正常な血管や腫瘍、血管瘤に接触して異常に働いてしまうのが原因と考えられています。顔面神経麻痺という病気の治りかけに出て来ることもあります。40歳以上に多く、男女比は1:2ぐらいです。片側の筋肉が勝手に動いてしまうので、ひどい場合は顔がゆがんだり(痛くはありません)、片目が閉じてしまったりして生活へ支障が出ることもあります。根本的な治療は、顔面神経と血管などが接触しないようにする外科的手術です。リスクが大きそうな場合は、ボツリヌス菌の毒素から作られる製剤を、異常に動く筋肉の周囲に注射する治療もあります。注射の効果は3、4ヶ月ぐらいなので、繰り返す必要もあります。

洗眼

「眼瞼けいれん」はまぶたの動きが異常になる病気ですが、「ピクピク動く」という単純なものではありません。その本態は、「まばたきの制御異常」とか「まぶたの開け閉めスイッチの切り替え異常」、と表現すると少しはわかりやすいでしょうか。「まぶたを開けにくい」とか「まばたきが増える」という症状が現れるのですがそれだけでなく、「まぶしい」、「眼が乾く感じ」、「眼を閉じていたい」、「眼が乾く」、「ゴロゴロする」、などとも感じます。むしろ、「まぶしい」、「眼が乾く」とか「眼を閉じていたい」という症状が強く出ることが多く、そのために「ドライアイ」と間違われてしまうことがよくあります。 「眼瞼けいれん」の原因は、まぶたの開け閉めに関わる脳の神経回路の異常と考えられています。しかしこの異常部位はCTやMRIを撮影しても写りません。「片側顔面けいれん」と同じで、40歳以上に多く、男女比は1:2.5ぐらいと言われています。中には、安定剤や睡眠導入剤、向精神薬の連用や化学物質への暴露が関連していることがあるようです。眼が開けられないぐらい重症な患者さんは少ないのですが、「ドライアイ」と思われているような軽症の患者さんも含めると、20〜30万人程度の患者さんがいると推定されています。ドライアイ以外にも眼精疲労、自律神経失調症、更年期障害や神経症と診断されていることもあります。他にも、「指を使わないとまぶたが開かない」、「眉間にしわが寄る」という症状も出ることがあります。重症になるほど開瞼がしにくくなり、いつも眼に気持ちが行ってしまう不快な症状が頑固に続きます。中には、「眼が開きにくい」ために歩いているときに物や人にぶつかったり、運転中に危険に感じるために運転をあきらめてしまったりする場合もあります。この「眼瞼けいれん」を確実に直す治療法はありません。現在よく用いられるのは、先ほども書いたボツリヌス菌毒素の注射で、眼を閉じる力を弱めて症状を軽くします。治療効果は2〜4ヶ月ぐらい持続します。眼瞼の手術や薬物療法もありますが、補助的な位置づけです。完治することはなかなか難しいのですが、病気に対する理解を深め、気持ちを落ち着けて病気にじっくり向き合うことが大事です。(参考:日本眼科学会ホームページ