桜の開花
院長 廣辻徳彦
今年は3月中旬から陽気が続き、かなり早い時期から桜の開花便りが聞かれました。東京では2019年、2020年と並んで3月14日に最も早い開花となりました。例年東京では高知県などと並んで最も早い時期に開花し、神戸や大阪では東京よりも数日遅れるのが常です。京都では17日、大阪では19日、神戸では24日に開花となりました。最近はニュースでも有名になっていますが、全国に58本の開花の目安となる「標本木」があり、大阪であれば大阪城西の丸庭園内の標本木に5つ花が咲くと「大阪で開花」となります。標本木が8割咲いた時点で「満開」が宣言されます。もし桜宮で満開に近い木があったとしても、標本木が開花しないと宣言にいたりません。京都では元離宮二条城の北大手門そば、神戸では王子動物園内のパンダ館の東に標本木があります。桜の木も老齢化するので時期が来れば代替わりするのだそうで、神戸の標本木であれば神戸海洋気象台内にあったものが、2002年から王子動物園入場門そばの木に、今年の1月からパンダ館東横の木に代替わりしつつその役目を務めています。
温暖化の影響なのか、この数十年を見てみると開花時期はだんだん早くなっているようです。以前は満開の桜の下で入学式という印象がありましたが、遠くない将来、桜は卒業式の風景になっているかもしれません。産業革命以来、石炭を燃やすことにはじまって石油の消費などでCO2排出量は増加の一途を辿っています。一部には温暖化とCO2とは関係ないという説もあるのですが、一般的にはCO2の排出が温暖化を早めているので制限が必要だといわれています。太平洋の島国では海水面の上昇のために、国土の危機に陥ることが危惧されるところもあるそうです。沖縄やオーストラリアのグレートバリアリーフなどでもサンゴの白化現象が起こり、小笠原や南西諸島の暖かい海にしか生息していなかった猛毒(テトロドトキシン=フグの毒)を持つヒョウモンダコが大阪湾や日本海側で発見されるようになっています。約46億年前から存在している地球規模で考えれば、氷河期や隕石の衝突など気候変動にさらされながら今にいたっているわけなので、数十年の変化は小さなものかもしれません。地球の誕生が24時間前だとすると、私が生きてきた61年はわずか0.001秒にしかなりません。それでも祖先が愛し私たちが楽しんだ自然や環境を、子供や孫の世代にも繋いでいきたいと思うので、桜を眺めながらいろいろなことを考えてしまうのでした。
健康とは!
新しい年の1月から何かを始めるのと同じように、年度始まりの4月は中学や高校への進学、新社会人になっての就職など区切りのいいところでもあり、何かにチャレンジしようという場合も多いかと思います。当クリニックにも進級や進学、就職に合わせて、コンタクトレンズ(以下CL)を始めたいという方が多く来院されます。CLデビューをするのはこの時期と夏休みが多い印象です。現代のCLは素材や表面のコーティング技術の進化でかなり目にやさしいものになっています。30年前は一晩CLをはめたままで寝てしまい、酸素不足のために角膜にひどいダメージが生じて、目を開けることができない状態で受診される患者さんもいらっしゃいました。最近のCLは酸素透過性が良いのでそのようになってしまうことは少ないのですが、決して装用したまま寝ていいと言うわけではありません。以前にも「目の病気」のコラムで書きましたが、毎年数十人程度は感染症などCLが原因となって失明に近い状態になる人がいます。多くは不適切な使用が原因になっています。赤い時、痛い時に装用しない、日々の手入れや器具の洗浄を怠らない、カラーコンタクトを検診にも行かずに使用し続けない、など基本的なことを守っていれば避けられたのにという事例が多いようです。せっかくCLデビューをされた方は、将来もトラブルなく使っていただきたいものです。
ただ、CLに限らず最初は説明の通り使っているのに、次第に扱いがルーズになってしまうということは少なからずあります。エアコンや空気清浄機のフィルターなど、取扱説明書通りのお手入れを続けていることは少ないのではないでしょうか。1年の間に2回しか風呂の水を入れ替えていなかった旅館は論外ですが、エアコンのフィルターにも呼吸器感染症の原因となる病原体が住み着くこともあります。車の法定点検や車検は行っていても、乗車前にタイヤの点検をする人も少ないと思います。私も決められた点検を怠ったことはありませんが、運転中に車が揺れておかしいと思ったら後輪のタイヤが擦り切れてバーストしていた経験があります。普段は何気なく使用していて、ほとんどの場合何も起こらないことが多いとしても、健康に影響が出たり場合によっては命に関わったりすることもあります。CLに関しては特に声を大きくしていることが多いのですが、いろいろな道具や器具も、特に健康や身体に関するものについては、決められたことを守って使用するのが大事なことかと思います。