眼の健康とコンタクトレンズの専門医 医療法人社団 広辻眼科

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広辻眼科マンスリー 第m186

投稿日 2021年8月2日

猛暑の8月

院長 廣辻徳彦

8月、真夏がやってきました。20世紀の終わり頃、「39度のとろけそうな日、炎天下の夢 play ball! play game!・・・」という歌詞のCMソングがありました。テレビのCMで高校生が汗だくになるのは健康的でよいのですが、実際に気温が35度を超える猛暑日が続くと汗をかき過ぎて命に関わる事態になりかねません。私も大学1年生になって初めての夏休み、ラグビー部での練習中に軽い熱中症を経験したことがあります。40年前なので今より暑さがましだったはずですが、それでも真夏です。「ランパス」と言ってグラウンドの端から端を何往復も走る練習中、手足が痺れるような感じになり、ふわふわした気分になって立っていることができなくなりました。幸い、周りにいたのは医学部の先輩たちだったので、薄い塩水やその頃発売され始めたスポーツドリンクを飲まされ、部室の影で寝かされて事なきを得たのでした。
思い返せば日本でスポーツドリンクが定着し、運動中にも適当に水分補給をしなければいけないと言われだしたのがその頃でした。もっと以前には、「水を飲めば余計疲れる」などと言う指導者も実際にいましたし、自己流だったり自己中心的だったりした指導者も多かったはずです。当時はスパルタやカリスマという言葉で賞賛される向きもあったかもしれません。日本では指導といえば精神面が強調され、今でも科学的、理論的というところで一回り遅れているような感があります。8月なので考えが及んでしまうのですが、この傾向があったからこそ、昔の軍部は正しい戦力分析もできずに第二次世界大戦に突入し、戦局が悪くなっても撤退もせず特攻するような愚かな選択をしたのでしょう。柔道や空手の世界でパワハラ問題が起こったのはまだほんの少し前のことです。スポーツに限らず指導者の強い指導や指示をすべて「パワハラ」という言葉で関係付けてしまうのは問題がありますが、お互いが相手の人格を尊重することから指導が始まると思います。時代とともに正しいとされていた知見が変化することもあります。感情や感覚中心ではなく、そういった知見や科学に基づいた指導が広がることを望みます。
さて、コロナ感染症の拡大と連日の猛暑という悪い環境の中、東京オリンピックが開催されています。種々の意見はありますが、始まってしまえば私も毎日テレビで応援しています。参加している皆さんは万全の体調管理を心がけて、悔いのないパフォーマンスを披露してもらいたいものです。頑張れ!!

健康とは!(正常化バイアス)

コロナウイルス感染症の広がりが始まって早1年半、日本では第5波がこれまでにない勢いで増えています(月末に原稿を書いているので、最大1ヶ月の過去記事になっていることはご容赦ください)。8月からは東京、沖縄に加えて、埼玉、神奈川、千葉と大阪に緊急事態宣言が発令され、まん延防止等重点措置が兵庫、京都を含む5道府県に適応されます。昨年はそれこそ街から人が消えたような有り様でしたが、最近は街中では時短とはいうものの普通に食事ができますし、若者がグループで騒いでいます。ニュースを見ても人出が少なくなっているようには見えません。緊急事態宣言に慣れてしまったのかもしれませんし、少なくない人が「正常性バイアス」という心理状態になっているのかもしれません。「正常性バイアス」というのは心理学や医学の用語なのですが、予想もしないような状況に直面した際、それがあり得ないという思い込みを働かせて、その局面が正常範囲内だと自分自身で思い込んでしまうような心の働きを指します。急な事態に対応しなければならないところ、ストレスを回避するために平穏な状況であると認識してしまう防御反応とも言えます。しかし、本当の非常事態を認識できずに対応が遅れてしまう結果を引き起こすこともあるものなのです。東日本大震災の時の大川小学校で津波が来るとわかっていて校庭から動かなかったのは、これに捕らわれたのだとも考えられています。
緊急事態宣言が出されているのに、「自分は感染しない」、「まわりに感染者がいない」、「みんな普通に生活している」などと考えて対応しないのもこの作用かもしれません。オリンピックが開催されるぐらいだから大丈夫、と理由づけをしている人もいるのでしょう。現在、東京では感染者の8割以上が60歳未満です。かかりにくいとされていた若年者では、ワクチン未接種の割合が多く感染者が増え、接種済みの高年齢層ではワクチンの効果で感染自体が少なくなっています。出歩いて飲食している若い世代の人は、自分がとても「ヤバイ」状況下にいるにも関わらず何かの理由づけをしながら生活をしているのでしょう。今や、その子供(乳幼児)世代にも感染が拡大しています。感染してしまうこと自体は批判しませんが、自分が家庭内感染を引き起こすことをしている自覚がないのは困ります。ワクチン接種が進んでいる国でも感染は収まっていませんが、重症化する人は少なくなっています。ワクチン不足で接種は停滞気味ではありますが、感染の被害を少なくするために接種が進めば良いかと思います。