新しい生活様式
院長 廣辻徳彦
今年の大型連休は例年と異なり静かな連休になってしまいました。個人的には4連休直前の土曜日に家族に弔事があったので何もかも吹っ飛んでしまったのですが、行楽地に人出が少ないとかお店が休んでいるとかのニュース映像は、仕方がないとはいえ寂しい光景でした。
幸いなことに4月から5月にかけて新たな感染者の数は減少し、緊急事態宣言も解除されました。PCR検査陽性の人を隔離施設に囲い込むことなく自宅待機中心で対応し(実際は強制力がないため用意されたホテルが利用されなかっただけかもしれません)、保健所の仕事が手一杯で統計も全国で統一されないなど、上手な対応だったとは思えません。欧米からは「日本で爆発的感染拡大がなく収束しているのはミステリー」と言われますが、横浜のクルーズ船への対応を批判していた欧米で、自国での拡大を制御できなかったのは皮肉でした。現時点で拡大が少ないのは、手洗いとマスクの使用という対策が習慣づいていたことが一因だと思いますが、実は中国や韓国を含む東南アジア、インドや西アジア諸国では欧米より死亡率が低い傾向にあります。日本人が素晴らしいとかの印象論的で自己満足せず、民族、生活習慣、BCGなどの予防接種、コロナウィルスの種差などの「ファクターX」を考えていくことが大事だと思われます。
いずれにしても、新型感染症はまだまだ収束していません。「コロナと共存する新しい生活」をする必要があります。手洗いの励行はもちろんですが、感染者がいないところに新しい感染は起こりません。熱発などで調子が悪い時は、仕事や学校に行かず人との接触を避ける意識を持ちましょう。「自分しかできない仕事」などは、実際にはあまりないのです。自覚症状がない時期にも感染力を持つ疾患なので、無理をして仕事をするのは「悪」なのです。テレワークでたくさんの事ができ、実際に集まらなくてもウェブ会議で用が足りることがわかった今、仕事の形態も変化していく事も予想されます。6月は学校も仕事も段階的かもしれませんが本格的に始まり、飲食などで人と接することも間違いなく従来の形に近づいていきますが、ワクチンや治療薬の開発は当分先の話になりそうです。手洗いと消毒、適切なマスクの使用とソーシャルディスタンス、これらに気をつけて悪いニュースの少ない6月を過ごしたいものです。
健康とは! (手指の消毒)
毎日逆瀬川駅まで阪急電車で通勤していますが、5月の最終週から車内が混んできました。ほとんどの人がマスクをしていますが、マスクを顎にかけたままでいたり、しきりにいじっていたり、マスクの使い方がいい加減な人もいます。混雑した集団内では「人に移さない」ためにマスクをしておくのが良いでしょう(自分が感染しないためには高性能のマスクが必要です)。ウイルスを避けるために手洗いはとても大事ですが、電車内や街中では水洗いができません。手指の消毒薬について書いてみます。
最近はどこのお店にも噴霧式の消毒薬が備えてあります。一般的にはエタノール(エチルアルコール)が使用されますが医療機関でも品薄傾向にあります。消毒に適したエタノールの濃度には基準があり、日本薬局方では76.9-81.4%、米国では68.5-71.5%、WHOのガイドラインでは60-80%とされています。特殊な菌に対しては72%以上の濃度が必要ですが、ほとんどの細菌やウィルスは65%以上あれば十分とされています。逆に85%以上の濃すぎるエタノールでは殺菌効果が弱くなってしまいます。ちなみに、コロナウィルスは50%の濃度であっても1分間接触すれば不活性化します。
品薄のエタノールの代わりに「次亜塩素酸水」を使用されているところもあります。ハイターなどアルカリ性の次亜塩素酸ナトリウムと異なり匂いも刺激も少なく、塩酸か塩化ナトリウム(食塩)を電気分解して得られる酸性の液体です。濃度の問題はありますが、ノロウィルスやインフルエンザウィルスへの有効性が確認されていて、構造が似ているコロナウイルスへの効果はあると推察されています。ただ、日光に弱く保存があまり効かない(約1ヶ月)性質なのに、市販されている中には過剰な表示のものが数多くあります。先日経産省の依頼を受けたNITEという独立行政法人がこれについての注意喚起文を発表しています。濃度や保存法などがしっかり記載されたものを使用するようにしましょう。蛇足ながら首にぶら下げるウイルス回避グッズ(二酸化塩素)も見かけます。その効果は科学的に証明されていないようですし、空気の2倍以上重い気体なので胸の付近以上には上がってj来ない気がします。