緑内障−最近の検査など その3
院長 廣辻徳彦
新年、明けましておめでとうございます。今年も様々な眼の病気について、少しばかりの解説をしていきます。昨年末には緑内障の新しい検査について、特にハンフリー視野計で視野変化の進行を計時的に解析するプログラムについて説明しました。
最近注目されているもう一つの検査は、OCT(光干渉断層計)という検査です。OCTでは緑内障について、①視神経乳頭周囲での神経線維の厚さ、②黄斑部周囲の神経節細胞を含む層の厚さ、③視神経乳頭の形状、などを測定し解析します。光の刺激は網膜内のいくつかの細胞を経て、最終的に神経節細胞という細胞から視神経を通って脳に伝わります。神経節細胞からは一本ずつ神経線維(ニューロンといいます)がでて、それが束になって視神経を作ります(神経線維の数は片眼で百万本以上です)。緑内障が進行すると、神経節細胞や神経線維の数が減ることが分かっています。細胞や神経線維の数を正確に数えることは出来ませんが、それらが含まれている層の厚さを測り、層が厚ければ数が多い、薄ければ少ないと推測できるという理屈です。
紙面の都合もあるので、ここでは①と②についての実例を示します。神経線維の分厚さは、視神経乳頭周囲で直径3.45mmの部分のところで測定します。この直径はこれまでの研究で経験的に決められたものです。
図1:視神経乳頭と乳頭周囲3.45mmのライン
円周上の視神経線維の厚さを測定
図2:神経線維厚の測定結果
・平均と比べて厚さが正常かどうかを判定
・上は平均値と重ね合わせ、下は円周上での異常部分を色分けと数字で表示
・緑が正常で黄、赤の順で異常の確率が高まる
「神経節細胞を含む層の厚さを測れば、その中の細胞の数を推測できる」、と上に書きました。図3で点線の矢印が網膜の厚さを示していますが、神経節細胞を含む層は実線の矢印で示されたところです。OCTでは、少しくぼんでいる黄斑部を除いた直径6mmの円の部分で実線の部分の厚さを測定し、正常の厚さと比べます。正常の厚さと比べてどれぐらい薄くなっているかを、確率的に色分けして表示します(図4)。この図2と図4で異常と測定された部分に一致して視野異常がある場合には、緑内障の可能性が非常に高いと考えられます。
神経節細胞の厚さを測るプログラムには、緑内障の危険性を計算して数値化するものがあります(図5)。特に注目されているのはFLV、GLV(図5の○印)という値です。FLVは細胞の部分的な損失、GLVは全体的な損失を示す値です。これらの数値が悪いと、緑内障である危険性が高いと考えられます。
視野検査と同じで、検査が正確に測定できていることが必要条件になりますが、何回か検査をして経時的に進行具合を判断することもできます。このOCTという検査は、人の眼で判別できないところまでが検査できます。しかし、どれだけ優れた検査でも、それが表す意味を理解していないととんでもない解釈になってしまいます。前回ご紹介したハンフリー視野計の新しい解析プログラムも、OCTという新しい検査器械もそれを活用するためにいろいろな研究がされています。当院でもこれらの検査を組み合わせて緑内障の経過観察、治療に役立てるように努力しています。疑問なところがあれば、何でもご質問ください。