大雨の被害
院長 廣辻徳彦
前回、「梅雨に入ったものの、この地域では豪雨災害が出ていない」と書きましたが、そのすぐ後から近年にない梅雨の長雨に見舞われました。九州地方と岐阜県、つい最近は新潟県などで地域と住人に大きな被害が出てしまいました。「五月雨をあつめて早し最上川」と芭蕉は詠みましたが、江戸時代とは山の保水力も違うでしょうし、何より降雨量が桁違いなのだと思います。コロナウイルスへの警戒と長く続く雨の影響で、復旧も進んでいない様子です。豪雨といえば「台風」が思い浮かびますが、最近の豪雨は台風だけなく、「線状降水帯」という現象で引き起こされています。これは、次々と発生する発達した雨雲が列をなし、数時間にわたってほぼ同じ場所を通過、停滞することで作り出される降雨域のことを指す言葉で、この10年ほどの間、春から夏にかけて数多くの被害をもたらしています。「観測史上初」、「数十年に一度という大雨」、「1ヶ月分の降雨量が1日で降った」という形容や、「命を守る行動をしてください」など今まであまり聞いたこともない言葉も耳にするようになりました。大げさと思うこともありましたが、実際の被害を目にすると、軽く考えていてはいけないことを思い知らされます。台風のような強風、暴風はないものの、山岳地域が多い日本では、豪雨が続けば山崩れや山津波が起こりやすいのです。地震や台風、大雨という自然災害に対して、避難場所や持ち出す荷物を考えて備えておくことが必要です。
コロナウイルス感染は、第2波かどうかはともかく確実に再燃してしまいました。今回は行動の自粛がかなり少ない状態ですので、自分で意識を高めなければいけません。感染を避けるために、従来通り「三密」を避けることを心掛けましょう。用がないのに人混みや都会に出かけない、電車の中で会話している人たちからは距離を取るなどです。お出かけもしたいところですが、この時期東京旅行など論外ですし、遠くの友人と会うことも避けるべきです。研究は進んでいますが、ワクチンは当分できないでしょう。できたところで、世界中に十分な数を揃えるには時間がかかります。経済を止めるわけにもいきませんが、リモートでできることはそれを活用し、ウイルスと共存する生活を考えないといけないようです。
7月は観測記録を取り始めて、史上初めて台風の発生がなかったそうです。とは言っても8、9月が台風の本格的シーズンですし、加えて猛暑がやってきます。今回大雨被害があったところはもちろん、できれば更なる災害が起こらないこと、皆がウイルス感染や熱中症に罹患しないことを願います。
健康とは! (最近のニュースから)
先日、目を疑う記事が新聞の一面を飾りました。京都でALS患者に対して嘱託殺人があったという記事です。詳細はご存知と思いますが、難病のため「死にたい」と希望していた患者さんに、SNSで連絡を取り合った医師2名が薬物を投与して死にいたらしめた、という事件です。患者さんは、昨年末のマンスリーで安楽死を取り上げた際にも紹介したNHKの番組を見て、安楽死について考えるようになったという記事もありました。難病と対峙していた患者さんの心情は理解できないわけではありません。しかし、憶測で書いてはいけないのですが、今回報道の範囲内ではこの医師たちの行動は軽率で呆れてしまうものだったと考えます。医師という職業に就いた以上、最低限の倫理観を持って欲しかったと思います。別のニュースで、私も大好きだった「世界はほしいものにモノにあふれてる」という番組のMCをしていた若手の人気俳優さんが、自ら命を絶たれたと聞きました。その可否はともかく、自分で死を選んで実行できる人もいます。日本では、生命を維持する何らかの装置をつけてしまえば、後から本人がどれだけ外して欲しいと願っても外すと法に触れてしまいます。「病気で死にたいほど辛いのに自分ではどうにもできない」という人に、死を選んではいけないとは安直に言えないのも事実です。安楽死の是非について簡単に結論づけることはできませんが、「生きる権利」と「死ぬ権利」が選べる状況下で、「死ぬ権利」を主張しないで生き続けられる社会であってほしいと思います。
難病や末期ガンで患者さん自身が大変なのはもちろんですが、介護が必要になれば周囲の対応も必要です。人手だけではなく、金銭的なことも考えなければなりません。身内の介護のために離職を余儀なくされることもあります。しかし、離職した上で介護が長引けば、それを支える金銭的余裕もなくなってしまいます。また、どういう形であれ介護が終了した後に再就職する手段も簡単ではありません。自分や家族が病気になると、またそれが長期になればなるほど、生活基盤にも影響を与えてしまいます。日頃から健康に気をつけたいものではありますが、政府にはせっかく納めている税金を変なマスクや中抜き業者で無駄にせず、福祉や介護に重点を置いて配分していただきたいものです。